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三人で天下を語る

最近、100分de名著を観ています。
今日紹介する本はそちらの番組で取り上げられた、『三酔人経論問答』。

あるところに南海先生という方がおりました。
生まれつき酒が大好き、また政治を論じることが大好きな彼。
わずか一、二本のうちは気持ちよく酔っ払っているのですが、さらに二、三本飲むと…

精神がにわかにたかぶり、思想がしきりにわきおこり、身は小部屋のなかにおりなが、眼は全世界を見通し、一瞬間に千年前にさかのほり、千年後にまたがり、世界の進路を示し、社会の方針を教え(中略)

と…… かなり精神が身体を飛び越してしまいます。
酔った時に発する奇論を楽しみに、友人などが酒を持ってきて、先生が酔った頃を見計らって彼の説を釣り出すのを楽しみにする人がいるほど。
そんな先生でしたが……

ある日、先生の元に訪れたふたりの人物がおりました。
片方は洋風の装いをした言語明晰な男。
もう片方は見れば豪傑連中の仲間とわかる男。

ふたりは先生に向かって国の趨勢について大いに論を交わします。
彼らが交わす論は、当時の日本が置かれた状況や、政治体制は今後どうなっていくのか。
この、三人で意見を交換するという作りがすばらしい。
対談形式で述べられていると、意見交換の場に自分もいるようで楽しく読めてしまいます。
桑原武夫さん・島田虔さんの訳も読みやすいです。
ぜひ読んでみてください。

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