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声劇「ロミオとジュリエット」

声劇「ロミオとジュリエット」

作:よるぺん

男:7女:2(兼ね役OK)

上演時間目安:後ほど計測予定

注意:この作品はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を声劇用にアレンジした作品です。
登場人物の設定や物語の展開に、原作と異なる点があります。

【登場人物】

[モンタギュー家]
・ロミオ:モンタギュー卿の息子。情熱的な少年。ジュリエットに一目惚れする。
・ベンヴォーリオ:ロミオの従兄弟。ロミオとは友人のように心を許し合っている。
・メルキューシオ:ロミオの友人であり、活発で陽気な性格。短気な一面も。

[キュピレット家]
・ジュリエット:キャピュレット卿の娘。純粋な少女。ロミオと禁断の恋に落ちる。
・キャピュレット卿:ジュリエットの父。モンタギュー家とは長年の因縁がある。
・ティボルト:プライドが高く気性が荒い若者。モンタギューを無条件に蔑視している。
・ロザライン:ジュリエットの従姉妹。街でも評判の美人。

[その他]
・ローレンス神父:ロミオとジュリエットの信頼する人物。二人の愛を支え、助言を与える。
・パリス:ジュリエットに求婚する貴族。

【本編】

【シーン1:ヴェローナの広場】

(モンタギュー家とキャピュレット家の一団が向かい合って立っている。)

ベンヴォーリオ:キャピュレットの者たちよ、この争いを終わらせよう。なぜ血を流さなければならない?

ティボルト:ほざくな、ベンヴォーリオ!
(剣を抜き、ベンヴォーリオに斬りかかる)

ベンヴォーリオ:くっ!(ティボルトの剣を弾き返す)
剣を納めろ、ティボルト!

ティボルト:我らの敵、憎きモンタギューの犬どもが!
我らキャピュレットは、ここヴェローナを掌握する!
血で血を洗うが、ヴェローナの掟!だっ!(再び斬りかかる)

ベンヴォーリオ:くっ!(ティボルトの剣を受ける、と同時に仲間たちと敵たちが次々と剣を抜くことに気づき)
皆の者、やめるんだ!モンタギューの誇りを忘れるな!

ティボルト:無駄だ、もう止まらん!我らも、お前ら卑しき一族も!
まずはお前を血祭りにあげるぞ、ベンヴォーリオ!

ベンヴォーリオ:……だめだ、抑えきれない!
こうなっては、もう……(戦う覚悟を決める)

ロミオ:待って、ベンヴォーリオ。

ベンヴォーリオ:ロミオ!

ロミオ:諸君、この争いをやめよう。憎しみで何が得られる?

ティボルト:ロミオ、貴様もここにいたのか。おい、覚えておけよ、モンタギューの者ども。次に会ったら、まとめてブチ殺す。
(リーダーの表情に戻って)撤退だ、皆の者!

ロミオ:……また、無理だったか。どうすれば、彼らにわかってもらえるんだろう。

ベンヴォーリオ:ロミオ、お前はいつだって平和を求める。だが、この抗争はいつになっても終わらない。

ロミオ:ベンヴォーリオ、もう終わりにしたいんだ。この争いを終わらせ、愛と平和を取り戻す方法を見つけなきゃ。

ベンヴォーリオ:ああ、同じことを思ってる。私たちモンタギューの者たちだって本当は……

ロミオ:うん、わかってるよ。見てよ、みんなの落ち込んだ顔を。

ベンヴォーリオ:……ああ!みな、ギリギリだ
(軍団にむけて)さぁ帰ろう、みな疲れている。今日は落ち着いて、休息を取ろう。

ロミオ:うん、帰ろう。

ベンヴォーリオ:ロミオ、何だその顔。せっかくのハンサムが台無しだぞ。

ロミオ:はは、君は強いな。

ベンヴォーリオ:恋人がいるからな。私が強いんじゃない。恋が私を強くするんだ。

ロミオ:恋、か。

メルキューシオ:ふたりとも、なに立ち止まってんだ?

ベンヴォーリオ:メルキューシオか。ロミオが落ち込んでいてな。
次期当主がこの有様じゃ、みなに示しがつかない。

ロミオ:その通りだね。強さを得るためには、恋の力が必要だとベンヴォーリオは言うけど……。

メルキューシオ:一理あるな。(はっと思いついて)そうだ、いいことを思いついた。

ベンヴォーリオ:聞かせてくれ、メルキューシオ。君の思いつきはいつも私たちの心を弾ませる。

メルキューシオ:恋を探しにいくのさ。

ロミオ:恋を、探す?

メルキューシオ:ふたりとも、とびきりの服を仕立てておけ。なんてったってこの辺りじゃ他に見ない、豪勢な舞踏会だろうからな。

ロミオ:舞踏会、だって?

メルキューシオ:その通りだ、ロミオ。そこにはヴェローナ中の美女が集まる。君の恋の相手はそこにいるかもしれない。

ベンヴォーリオ:いいアイディアだ、メルキューシオ。だが、そこはキャピュレット家の領地だろう?

メルキューシオ:恋はちょっとした冒険があった方が楽しいぜ?

ロミオ:でも危険すぎない?僕たちが見つかったら、きっと血が流れる。

メルキューシオ:だからこそ、面白いと言っているのさ。ほら、ロミオ。お前は恋を求めているんだろ?

ロミオ:僕が欲しいのは、強さだよ。

メルキューシオ:同じことさ。ちょっとしたリスクは仕方ない。勇敢なモンタギューの血を引く者として、これぐらいの冒険は楽しまねぇとな。

ベンヴォーリオ:ロミオ、きっと舞踏会にはキャピュレット家の一族も参加する。
彼らと話す機会を持てれば、何かしら良い結果が出るかもしれない。

ロミオ:……分かった。僕はもう危険を恐れたりしないよ。

メルキューシオ:そうこなくっちゃな!これから楽しい準備が待ってるぜ!




【シーン2:キャピュレット家の大ホール】

キャピュレット卿:諸君、愉しんでいただけておるか?
我がキュピレット家を訪れてくれたこと、感謝申し上げよう!どうか宴をお楽しみいただきたい!

ジュリエット:(驚きながら)すごいわ、どこを見渡しても笑顔を浮かべた人、人、人。
どうしてみんなこんなにも楽しそうなの?

キャピュレット:ああ、ジュリエット!(ジュリエットに近づく)
我が愛しい娘よ、今宵は特別な夜だ。我がキャピュレット家を讃えて、多くの人々が集まってくれた。心ゆくまで楽しんでくれ。

ジュリエット:(微笑みながら)父上、そうしてみます。でも、この騒がしい宴会の中で、自分の心の声をどうやって見つけられるのでしょう?

キャピュレット:そんなに悩んでいるのか?なんの心配もいらない。ただ楽しむのだ。
そうだ、お前に紹介したい者がいる。

パリス:キャピュレット卿!ご気分はいかがですか?

キャピュレット:ああ、パリスよ!さあ、こちらへ。これが我が娘、ジュリエットだ。

ジュリエット:父上、これはいったいどういうことですか?

パリス:ジュリエット嬢、私の名はパリス。
お父上からお話を伺っておりましたが、予想をはるかに上回る美しさに、心奪われました。

ジュリエット:(少し驚いて)ええと、申し訳ありません。わたくし、なにも知らなくて。

キャピュレット:パリスは立派な若者だ。私は彼こそがお前の未来の夫にふさわしいと思うのだ。どうだろう、ジュリエットよ!

ジュリエット:それは……、わたくし、は……

パリス:もちろん、私もあなたとの結婚を望んでいます。ただし、急いで婚礼を挙げるつもりはありません。まずは、一緒に踊りませんか?

ジュリエット:すみません、少し、気分が……。失礼いたします(逃げるように去る)

(間)

ベンヴォーリオ:なんということだ。まさかキャピュレット家の宴に忍び込むとは。

メルキューシオ:はは!奴ら、俺たちがいることなんて、夢にも思わないだろうさ。
このスリルもいい。もし見つかっちまえば、どんな目に遭うかわかったもんじゃない。

ロミオ:こら、あまり脅かすのはやめてよ!

ベンヴォーリオ:これだけ人が多ければ、見つかる可能性は低いだろう。
ところで、メルキューシオ、さっきからなんだ?誰かを探しているのか?

メルキューシオ:ご明察。この宴にはとびきりの美女が参加すると聞いてな。
その名もロザライン。

ベンヴォーリオ:ロザライン?(考え込む)

メルキューシオ:ロミオ、君は気づいてないだろうがな、君は何かに夢中になると、他には目もくれないんだ。
もし彼女に恋をしたら、悩んでる暇なんてなくなるだろうぜ。

ベンヴォーリオ:メルキューシオ!お前はまた馬鹿なことを!
ロザラインはキャピュレット家の一族だ!

メルキューシオ:何!?気付かなかった。俺としたことが。

ベンヴォーリオ:おや?……ロミオの姿がない。まさか、はぐれたのか?

メルキューシオ:まずいな。もう、噂の美女にも用はないことだし、さっさとここを離れよう。ロミオ、どこへ行った?

(間)

ロミオN:華やかなドレスとスーツで着飾った人々が舞い、音楽が響き渡るなか、僕はひとりきりになってしまった。

ロミオ:(ひとりごとで)なんと輝かしいこの舞踏会。天井から降り注ぐ光が、きらびやかな宝石たちを照らす……。

貴族の男性(ティボルト役が兼任):ジュリエット様、こちらにいらしたのですか。

よろしければ私と一曲踊ってくださいませんか?

ジュリエット:(断りきれず)ええ。

ロミオN:美しい女性が舞台の中心に登場し、その姿が僕の視線を惹きつけた。
彼女は誰だろう?まるで月明かりのように輝いて……。

ロミオN:僕はその女性に近づき、ステップを踏む彼女を見つめる。

ロミオN:彼女の笑顔は夜明けの太陽のように……僕を見つめるその瞳はもっとも深い海のように輝いている。

ジュリエット:あの人は誰?わたくしを見つめているのは……(ロミオと目が合う)

(間。ロミオとジュリエットは互いを見つめ続ける。周りの音が消えて、二人だけの世界が広がる)

ロミオ:(囁くように)美しい人、あなたの名前を教えてくださいませんか?

ジュリエット:(照れ笑いしながら)わたくしの名前はジュリエット。あなたは?

ロミオ:私の名はロミオ。


ジュリエット:あなたは、なぜわたくしのことを見つめていたのですか?

ロミオ:(情熱的に)ジュリエット、私がここにいるのは、世界で最も美しい星を探し出すため。あなたこそがその星だと、私は確信しているのです。

ジュリエット:まぁ……!

ロミオ:このロミオと一曲踊っていただけませんか?

ジュリエット:喜んで!
(踊りながら)……ロミオ?まさか、モンタギュー家のロミオ?

ロミオ:そうです、私はモンタギュー家のロミオ。
でも、あなたに出会ってしまったからには、その名前も意味をなくした。今の私にはただ一つ、あなたという輝きだけがあればいい。

ジュリエット:わたくしも……!こんなに心惹かれる人に出会ったことはありません。

ロミオ:この舞踏会で、あなたは最も美しい花。その香りに私は魅了されました。

ジュリエット:わたくしはキャピュレット家の娘。あなた……モンタギュー家の者には、禁断の果実かもしれません。

ロミオ:いいえ、ジュリエット、これは運命です。あなたとの出会いが、私の人生をすっかり塗り替えてしまうでしょう。

ジュリエット:ロミオ、わたくしも同じ運命を感じています。こんな出会いは、人生で一度きりの奇跡に違いありません!

ロミオ:ジュリエット……!

ジュリエット:(ロミオの顔の近くで)でもロミオ、もしわたくしたちの秘密が一族に知られたら、どんな悲劇が起こるでしょう?
でも、この瞬間を忘れることはできないわ。

ロミオ:ジュリエット、僕たちはこの気持ちを何があっても守り抜こう。どんな困難が訪れようとも、ふたりの愛は揺るがない。

ジュリエット:ロミオ……!ええ、わたくしも信じるわ、この愛の永遠を。




【シーン3:修道院の庭】

ロミオ:(心の中で)ああ、ジュリエット。この暗闇の中に、君の姿が現れるのが待ち遠しい。

ジュリエット:ロミオ!

ロミオ:ジュリエット!(駆け寄る)

ジュリエット:ここは静かね。夜の修道院なんて、初めて。

ロミオ:見つかりはしなかったかい?闇夜を一人で歩かせたこと、許してほしい。

ジュリエット:平気よ!自分でも驚くほど足取りが軽かったの。

ロミオ:はは!きっとこの恋が、君の背に軽やかな翼を授けたんだ!

ジュリエット:恋の翼。そうね、きっと恋がわたくしに力と勇気を与えてくれるの。

ロミオ:ジュリエット、君は輝く星。どうか僕のそばで輝いて欲しい。
……受け入れてくれるね?

ジュリエット:もちろんよ、ロミオ。わたくしだって、あなたという星に出会える時を待ち望んでいたのだから。

ロミオ:愛の炎は、力強く僕たちを導くだろう。許されない恋かもしれない。それでも僕たちはこの誓いを貫こう。

ジュリエット:ロミオ、わたくしも同じ気持ちよ。私たちの愛は困難に満ちているかもしれない。それでもわたくしはあなたと一緒にいたいの。

ロミオ:もっと君と語り合っていたいけれど、まずは約束を果たそう。
夜だとはいえ、ここは修道院。誰かが迷い込むかもしれないから。

ジュリエット:(ロミオに寄り添って)そうね、ロミオ。私たちの愛の証として、ここで結婚の誓いを立てましょう。永遠の愛を約束しましょう。

ロミオ:僕はこの瞬間、心のすべてを君に捧げる。君との結婚こそが、僕の一生の幸せなんだ。さあ、左手を(ジュリエットに指輪をはめる)

ジュリエット:ロミオ、あなたも手を。(指輪をはめる)
この指輪がふたりの愛と、永遠に続く絆の結晶。どんな困難が訪れようと、絶対に離れないと誓うわ。

ロミオ:ジュリエット、君との結婚を誇りに思う。この秘密の誓いは僕たちだけのもの。さあ、誓いのキスを。(口づけを交わす)

ジュリエット:私たちの愛は本物よ。だからこそ、秘密を守り抜きましょう。

ロミオ:君との秘密の結婚式!なんて幸せなんだろう!
僕たちの愛はいっそう強くなり、困難に立ち向かう勇気だって湧いてくる。

ジュリエット:ああ、ロミオ!(もう一度ゆっくりとキス)




【シーン4:ヴェローナの広場】

ティボルト:モンタギューの愚か者たち!我がキャピュレットの領地に不遜な足を踏み入れるとはな!無様な死体にする前に、申し開きだけは聞いてやろうか!

メルキューシオ:キャピュレット家の気まぐれには呆れ返るぜ。
ここは誰もが自由に行き来できる広場だろうが。

ティボルト:横柄な犬め!我が家の名誉を踏みにじったな!(斬りかかる)

メルキューシオ:(剣を交えて)お前たちキャピュレット家こそ、野蛮な獣だ。モンタギュー家の者には勝てん!(反撃)

ティボルト:貴様、行動だけでなく、言葉でも我らを侮辱するのか!

ロミオ:ティボルト、メルキューシオ!どうか剣を下ろしてくれ!

ティボルト:(ロミオを見据え)モンタギューの息子よ、邪魔をするな!生意気なお前の友を教育している最中だっ!(再び攻撃)

メルキューシオ:大丈夫だ、ロミオ!こんな男に遅れは取らん!(剣を構える)

ティボルト:図に乗るな!(メルキューシオを斬りかかる)

(しばらくの間、ふたりの撃ち合う様子を吐息で表現)

ティボルト:そこだ!

メルキューシオ:くっ……!(攻撃をもろに受ける)ああ、これ、は……(膝をつく)

ロミオ:メルキューシオ!(駆け寄る)

ティボルト:(取り巻きに)悪いが拭くものを貸してくれ!下衆なモンタギューの血で、手が汚れてしまった。

ロミオ:(メルキューシオを抱き寄せ)メルキューシオ、ごめん。君を守ることができなかった。……あの男には僕が復讐を果たす!

ロミオ:(怒りに駆られて立ち上がる)ティボルト!お前がメルキューシオの命を奪ったこと、けっして許さない!

ティボルト:モンタギューの犬め、お前ごときが我らキャピュレット家に手を出すのか?

ロミオ:友を護るためなら、命を捧げる覚悟だ!(剣を振り抜き、ティボルトに致命傷を与える)

ティボルト:ロミオ……!この……!(倒れる)
……ははっ、そうだ。いくら大言壮語を並べても、結局、貴様もこの闘争から逃れられぬ。
いつか、我らキャピュレットの者がお前の命を奪うだろう。(息絶える)

ロミオ:ティボルト……許してくれ。君のことが憎くて殺したんじゃないんだ。
メルキューシオ、君は大切な友だった、掲げた理想を怒りで塗りつぶしてしまうくらいに……本当に、ごめん(剣を地に突き立て、悲しみに暮れる)




【シーン5:ローレンス神父の教会】

ローレンス:(悲しみに満ちた声で)ロミオ、お前がヴェローナで犯した罪の重さは計り知れない。追放刑は避けられまい。

ロミオ:ローレンス神父、僕は愚かでした。でも、友を殺されて、何もしないなんて無理だった。

ローレンス:お前が愛と狂気の狭間で踊り続けたことは理解している。だが、この追放刑はお前が罪を償うための道でもあるのだ。

ロミオ:僕はこの地を去ります。ですが、この心は永遠に、愛しいジュリエットと共にあります。

ローレンス:ロミオ、お前の心の痛みを少しでも理解できていれば良いのだが。
この追放はお前にとって試練だが、耐え抜きなさい。時間がすべてを癒してくれるだろうから。

ロミオ:あなたの教えに従います、ローレンス神父。遠くへ去り、新たな道を歩む覚悟はできています。

ローレンス:ロミオよ、お前の新たな旅に神の光が差すことを祈っている。

ロミオ:ありがとうございます。あなたの深い思いやりを、僕は一生、忘れないでしょう(立ち去る)

(間。ロミオが旅立ってから数日が経過)

ジュリエット:神父様、わたくしはもう迷い果ててしまいました。ロミオは追放され、わたくしたちの愛は断ち切られてしまった。

ローレンス:ジュリエット、お前の苦しみは痛いほど伝わってくる。
だが、顔を上げるのだ。全てが終わったわけではない。お前を助ける方法を思いついたのだ。

ジュリエット:本当ですか、神父様?
どうか教えてください。わたくしはロミオとの愛を断ち切ることなど、望んではいません。

ローレンス:ジュリエットよ。お前たちの愛を救うためには、大いなる勇気と覚悟が求められる。

ジュリエット:勇気も、覚悟も、わたくしはすでに持っています。どうか、道を示してください。

ローレンス:時間がない。今すぐにでも行動を始めなければ。お前とロミオとを再び結びつけるために。

ジュリエット:神父様、あなたの導きに従います。どんな困難が待ち受けていても、わたくしはロミオとの愛を守り抜きます。




【シーン6:ジュリエットの寝室】

ジュリエットN:神父様の計画によれば、わたくしは死を装わなければならない。そのための薬は、この手にある。

ローレンス(回想):この薬は生き物を限りなく死に近い状態へと追いやる。しかし、それは本当の死ではない。2日間の眠りのあとに仮初めの死は解かれる。
そのころにはお前の葬儀も終わり、体は霊廟へと安置されるだろう。
目が覚めたら、追放されたロミオの元へ向かいなさい。
困難はあるかもしれない。けれど、そこには愛と、ふたりの幸せな生活が待っているだろう。
しかしジュリエット、これは危険な賭けだ。仮初めとはいえ、お前の体は一度死ぬのだから。

ジュリエットN:恐ろしくない、といったら嘘になるわ。でも。

ジュリエットN:ロミオ、ふたりの愛は永遠とあのとき誓いあったわね。
偽物の死から目覚めたら、すぐにあなたの元へ駆けていくわ。(薬を飲み、ベッドに横たわる)

(間)

ローレンス:ジュリエット?……ジュリエット?うまく行った。深い眠りに落ちている。まるで本当に死んだかのようだ。

ローレンス:ジュリエット、お前の勇気と信念に敬意を表す。この計画が成功し、お前とロミオが再び結ばれることを祈る。

ローレンスN:ロミオよ、まだ希望はある。偽りの死がお前たちの運命を変え、救われることを願っている。

ローレンスN:さあ、ロミオにこの計画を伝えよう!
伝言は誰に頼もうか?とびきり誠実で、思いやり深く、何より口の固い者でなくては!
(部屋を去る)

(間)

ロザライン:(扉をノックする)ジュリエット?今日は天気が良いわ、お庭を散歩いたしましょう?……ジュリエット?

ロザライン:(そっと扉を開けて)どうしたの、いつもならすぐに返事をしてくれるのに。
(ベッドを見て)ふふ、あなたったら子供のころに戻ったみたい。そんなにあどけない顔をして、お昼寝だなんて。

ロザライン:それにしても、ふふ、なんてお転婆な寝相かしら。きちんとお布団をかけないと駄目だわ。

ロザライン:(はっとして)ジュリエット、あなた!ああ、なんてこと、息をしていない……!誰か!すぐに来て!
助けておじさま、あなたの可愛いジュリエットが大変なのです!早くお越しになって!




【シーン7:ジュリエットの葬儀】

キュピレット:この度は、我が娘ジュリエットの葬儀にご参列いただき、深く感謝する。

ロザライン:(泣きながら)ジュリエット、どうして?
こんな狭い棺に閉じ込められて、身じろぎひとつしない。もう一度、笑顔が見たいわ。声が聞きたいわ。

パリス:ジュリエット、君の美しさは変わらぬままだ。だが、なぜこんな不運が君を襲うのか。

パリス:ああ、ジュリエット。君が私の花嫁になってくれることが、私の何よりの望みだった。それはもう永遠に敵わないのだね。

パリス:ジュリエット、君への愛は私の心に永遠に刻まれる。どうか安らかな眠りを。君の記憶は私と共に生き続けるだろう。

キュピレット:パリス……。すまない、君にかける言葉が見つからない。

パリス:わかっております。今は共に悲しみの海に沈みましょう。
あなたの息子にはなれませんでしたが、共に涙を流すことだけはお許しください。

ローレンスN:他に方法がなかったとはいえ、罪なき人々を欺くのは心が痛む。
ジュリエット、あの子はこんなにもみなに愛されていた。
キュピレット家の者たちよ、許しておくれ。ジュリエットとは二度と会えないが、彼女は真実の愛と共に生きていくことができるのだ。

ロザライン:神父様、どうかされましたか?窓の外をじっと見て。

ローレンス:これはすまない。突然のことで、私も動揺しているようだ。

ロザライン:そうですわね。ここにいる誰もが深い悲しみに打ちひしがれております。
……神父様、あの純真な少女が何をしたというのでしょう?(泣く)

ローレンスN:伝言を頼んだ者から便りが来ない。ロミオの居場所はまだ見つからないのか。
ーーおお、神よ。どうか若い二人に導きを。




【シーン8:霊廟(れいびょう)】

ロミオN:なんて冷たく、重苦しい部屋だろう。キュピレットの一族は代々この霊廟に葬られている。今は……愛しいジュリエットも。

ロミオN:キュピレットの娘が死んだ、という噂は遠く離れた街にも届いた。
本当のことなのか確認しようにも、僕には方法がない。
ヴェローナと僕とのつながりはすっかり絶たれてしまったのだから。

ロミオN:だから僕はやってきた。追放の罰を受け入れるつもりだったけれど、ジュリエットの死だなんて聴いたら、足を止めることなんてできなかった。

ロミオN:ごめんなさい、神父様。ほんの少しだけ、罰から逃れることを許してください。
この霊廟にジュリエットがいないことだけ確かめられたなら、僕はすぐにまた追放者に戻ります。

ロミオ:(ジュリエットの棺を見つけ)そんな……!ジュリエット、どうして君がここにいる!

(間)

ロミオ:ジュリエット、僕の愛しいジュリエット。僕は君と結ばれる運命を信じていた。
でも運命は僕たちを引き裂くだけだった。

ロミオ:ジュリエット、君が死んでしまったなんて僕は信じたくなかった。
それでも、なぜだろう。なにか恐ろしい予感がして、怪しい薬売りからこの毒薬を買ってしまったんだ。

ロミオ:この毒薬が僕の命を奪う。
君との愛を永遠にするため、僕はこの道を選ぶよ(毒薬の入った小瓶に口をつける)

ロミオ:(吐血して)ごほっ……(まだ毒薬の残った瓶を置く)

ロミオ:(弱々しく)ジュリエット……君の元へ行くよ。体が死を迎えても、僕たちの愛は不滅だ(ジュリエットのそばに横たわり、絶命)

(間)

ジュリエット:(目を開ける)ロミオ……?ロミオ!どうして……なぜあなたがここに?

ジュリエット:この瓶は……わたくしの飲んだ偽の毒薬?どうしてあなたまで死んだふりをしているの?

ジュリエット:いいえ、この薬……よく似ているけれど、液の色が違うわ。……まさか!

ジュリエット:(絶望的な声で)いいえ……いいえ!どうしてこんなことが?
わたくしたちは共に生きるはずだった……(泣きながらロミオの遺体の上に崩れ落ちる)

(間)

ジュリエット:(起き上がって)ロミオ、あなたの後を追うわ。

ジュリエット:(ロミオが飲み残した小瓶を手にして)わたくしはこの愛を守り抜く覚悟です(毒を飲み干す)

ジュリエット:(弱々しく)ロミオ……すぐに追いつくわ。わたくしたちの愛は永遠に続くの……(倒れ込み、息絶える)

(間)

キャピュレット卿N:なんという悲劇!我が娘を死に追いやったのは誰だ!
いいや、わかっている。それは私自身だ。我がキャピュレット家と、モンタギュー家の因縁こそがあの罪なき娘を殺したのだ。

ベンヴォーリオN:私たちは話し合った。二度とこのような悲劇を繰り返さないために。
ロミオ、お前の意志は私たちが受け継ぎ、守っていく。

ロザラインN:長年続いた憎しみ合いの連鎖を、その過程で流れた血を消すことはできなくても、わたしたちは変わっていけるはずよ。
キュピレットとモンタギューが手を取り合うこと、それがあなた達へのせめてもの供養になりますように。
ジュリエット、どうか安らかに眠って。愛するロミオと共に。

ローレンス神父N :悲しみと絶望に包まれ、戸惑う者たちよ。今はそれでいい。ふたりの愛の悲劇は各々の胸に深く刻まれたことだろう。

ローレンス神父N :私たちは変わっていく。時代は巡っていく。
それでもお前たちの心にロミオとジュリエットの存在が残り続ける限り、平和は続いていく。願わくば、お前たちの体が朽ち果て、この悲劇が忘れ去られた後も、ずっと。

ロミオ:愛しているよ、ジュリエット。

ジュリエット:ええ、ロミオ。わたくしも愛しているわ。


(了)

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