AFKアリーナ「暗闇の侵入」から、ミニゲームと超次元彼女等のミニゲーム広告の意味を考えたい
現代には大量の広告が流れているが、本編には一切該当するゲームモードが無いのに広告にだけ登場するゲームというのがある。
ピンを抜くゲーム、数を比べて勝敗を決めるゲーム、棒人間が走るアレ……それこそ現代において「広告でしばしば見かける割に実際に遊べないゲーム」というモノには枚挙に暇が無い。
しかし、『超次元彼女』はこのよく見かける広告を実際にゲーム中に実装するという施策を行ってきた。
その上、例のピン抜きゲームで有名なEVONYもゲーム中で実際にピン抜きゲームを行える。広告でいかにも本編で遊べなさそうなゲーム画面が出たとしても、「詐欺広告は死ね!」と言った方が原作をまともにプレイしていないニワカである事を露呈してしまうような事態が増えてきたのだ。
かれこれ2020年12月から広告をまとめ、感想を書く趣味を持つ自分ですらこの広告ゲームを実際のゲームに実装するブームの意図は分かりかねる所があったのだが、とうとう自分が2年間プレイしている『AFKアリーナ』でも「本来のゲームと異なるミニゲーム」が実際に遊べるようになってしまった。
そこで、その感想と本来のゲームと異なるミニゲームを実装する事によるメリット、そして広告にまで手を出す利点と欠点まで書いていければと思う。
・そもそもAFKアリーナとは?
リリースから2年経った今となっては「そもそもAFKアリーナって何だよ」と思う方もいそうなので、軽く本作の紹介を挟んでおきたい。本作は2020年6月30日に日本版がリリースされた放置RPGであり、放置スマホゲームの先駆けと言って良いタイトルである。
今となっては放置育成要素というのはスマホゲームにおいてかなりポピュラーな物になりつつあるが、周回不要でキャラを育成出来る手軽さと、2日でリセットされる異界の迷宮やギルドで協力して遊ぶチーム遠征、ストーリー込みのステージを遊べる奇境探検、PvPであるアリーナモードなどをやり込む事も出来るじっくり遊べるボリューム感の両立を成し遂げたタイトルだ。
細かい事を書くとキリが無いので紹介はこれくらいにしておくが、とりあえず2年間稼動したそこそこの長期運営タイトルである事を覚えておけば良いでしょう。
2年前は現在で言うキングダムガードくらいには広告を打っていたポジションだったし、やたら無課金でも強くなれる、実際には存在しないキャラ同士をスワイプで合体させて強くなる広告というのを推していたのも特徴。
キャラ同士の合体要素自体は広告と描写が違うだけであるけど、課金に関しては普通に必要な印象がある。というか、AFKアリーナに関しては一定まで強くなる分には課金すればするだけ強くなった実感を得られる仕組みが出来ていたのがかつての大ヒットの原因だと感じています。
もっと詳しく知りたいなら実際にやってください。
・ミニゲーム「暗闇の侵入」とは?
AFKアリーナに実装された新モード「暗闇の侵入」とは、キャラのレベルを上げて大量にやってくる敵を倒していくモードである。要するにVampire Survivorであり、最近ではMEGALOVANIAをやたら擦るスーパーウィザードだの、ダダサバイバーというゲームだのがしばしば広告に起用しているゲームジャンルがAFKアリーナ内で遊べるようになった。
スーパーウィザードもダダサバイバーも実際に遊べるゲームを広告にしている辺りでピン抜きゲームなどとは少し性格が異なるが、何にせよ2年間放置RPGだと思っていたゲームにいつも通りログインしてイベント欄を確認したら突然Vampire Survivorが始まった時の衝撃は非常に大きい。
実際に遊んでみると縦持ちスマホゲーム特有の操作の窮屈さ、難しさはあるが、やっていると時間が溶けていくタイプの面白さはしっかりと再現されている。
さすがにミニゲームとしての実装なので原作ほど画面を覆いつくすほどの特大物量や超範囲攻撃は無いが、ミニゲームとして遊べるクオリティとしては破格の出来だ。このためにダウンロードしろとまでは行かないけども、暇つぶしとしてはアリな内容。
・ミニゲーム効果①~ゲーム本編に対する飽きを緩和した~
さて、ここからは暗闇の侵入の実装によって感じた効果を紹介していこう。
まず第一に感じたのは、ゲーム本編に対する飽きがいくらか緩和され、ログインするモチベーションが得られたという事。
放置ゲームは最終的に育成を進める→適切な編成を探す→ステージをクリアするの繰り返しになる。対人戦をメインにするとしたらキャラを引いて、課金して最大まで育成してテンプレ編成を作るなりテンプレへの対策編成を作るなりして、最上位アリーナを目指していくような遊び方になる。スコアアタックを目当てにするにしても、育成、ベスト編成の発見、ボス挑戦の繰り返しだ。
何にせよ共通するのは「育成→編成→答え合わせ」というゲームサイクルに飽きてしまうと面白味が一気に無くなってしまうという事。放置ゲームは課金すればするだけ育成パートに費やす時間が短くなり、それぞれの懐事情で可能な育成が終わると出来る遊びが編成と答え合わせ、そして放置だけになる瞬間が必ずやってくる。そうなると遊びたいと感じる魅力は驚くほど減衰するのだ。
待つ楽しみを課金で先取りした結果ゲームの寿命が縮まってしまうのは放置ゲームの宿命であり、新たに育成するキャラが追加される、あるいは別の新しいイベントが始まるまで何もする事が無いとなるとそのスキに他のゲームに流れてしまうリスクが出てくる。
そんな時に暗闇の侵入は、「メインモードのやる気は無いけど、暗闇の侵入はちょっと遊ぼうかな」というモチベーションを自分に提供してくれたのは間違いない。そしてその直後、現在行われているチーム遠征イベントをプレイしてしまっている。
する事が無いという状況を回避するために、Vampire Survivor的な終わりの無いゲームはうってつけだ。
・ミニゲーム効果②~1人でずっと遊びやすい~
AFKアリーナはリアルタイムシミュレーションゲームである「運命のゲーム」や、すごろく状のマップを自分で作りながら他のプレイヤーのマップを襲撃する「ランページゴールド」、カードゲームで言うドラフトを1対1で行える「エンドレスゲーム」など、色々なミニゲームを期間限定で実装していた。放置ゲーム特有の飽きを感じさせないようにする努力はずっと行っていたと言える。
ただ対人戦である以上バランスや仕様の問題も多かった。運命のゲームはラグか何かで上手く操作が効かないという問題があったし、ランページゴールドはサイコロでの移動故の運ゲー感の強さと、最適編成は妨害だらけになってつまらないという問題があった。自分が最後まで面白いと思って出来たのはエンドレスゲームくらいだった記憶があるが、これもカードゲームが苦手な人や、考えるゲームが嫌いな人は面倒くさいという感想を抱く可能性がある。
今回登場した暗闇の侵入は完全1人用ゲームで毎回異なる体験が生まれるゲーム。下手に対人戦要素を入れないで、対戦特有の勝敗で生まれるストレスや、ラグやら運ゲーで負けた時のモヤモヤ感を減らしたのは優秀だと言える。
もちろん運が悪いと暗闇の侵入も生き残りは難しいけども、アクションゲームの場合はプレイヤーの経験値次第でいくらか運要素を補えるのも良い。
ちなみにAFKアリーナには迷いの森という3マッチパズルのミニゲームも実装されていた。
後述する超次元彼女やEVONYなどは1人用パズルゲームを実装していたが、パズルゲームの場合は1度クリアした後は問題が変わらないので問題を追加し続けないといずれは限界が来る。
迷いの森実装当初は本編と大きく異なるゲームを実装するブームが来ていなかったし、それを実装した上で広告する流れも無かった。少し遊ぶ分には悪くないゲームなのだが、ずっと遊んで暇を潰せる+メインの目ぼしいアップデートまで待てるかと言えば難しいと自分は思う。
この辺は個人的感想なので、パズル好きの人なら全部理論値出すまで遊んでいる可能性もあるが。
・ミニゲームを実装した上で広告するメリット
さて、いよいよnoteの本題である超次元彼女や、EVONYの話題に移っていこう。
本筋のゲームと異なるミニゲームを実装するメリットに関しては先述の通りだが、それに加えて広告も打つという行為には以下のようなメリットが考えられる。
・ミニゲーム広告効果①~話題作りに最適~
まず最初に考えられるメリットは、Youtuberや一般人まで巻き込んだ話題作りをするのにミニゲーム実装は最適だという事である。
「変な広告を実際にダウンロードして遊んでみた!」というのはそれを専門にするYoutuberがいるほどのジャンルだし、普通のゲーム実況者も手を出しやすい卑近なネタである。
上手くハマれば投資した広告額に対して大きすぎるほどの広告効果を得られるだろうし、わざわざYoutuberに案件を頼まなくても勝手にゲーム内容を紹介してくれる。その内容が素直な賞賛になる可能性は低いが、とにかく安く効率的に話題を取り、かつ最低限広告でウソはついていないという体裁を取りたいならミニゲーム実装は素晴らしい一手だ。
また、目を引く謎の女性実況者や「も~、また騙された!」なんて言うキャッチーな広告を作れるとミニゲーム広告の効果はさらに上がる。
おそらくゲーム広告を作るなら誰だってゲーム内容を紹介して話題を獲得したり、小粋なギャグやユニークなキャンペーンを挟みつつゲームを告知したりするような広告をしたいだろう。しかしそんな事が出来るのは任天堂だのスクエニだのの人気企業の新作や、有名作品のナンバリングくらいだ。どこの馬の骨とも知らぬゲームが真面目に広告をしようが、一部の物好き以外は中々話題にしてくれない。
そこで意地でも広告で話題を獲得するというのであれば、炎上気味であってもとにかく多数の人にタイトルを告知出来る偽ゲーム実装+偽実況広告という手口は検討されて当たり前の代物だ。
・ミニゲーム広告効果②~長期的に広告のネタが切れない~
これはEVONYが上手く取り入れているテクニックなのだが、実装したのがパズルゲームである場合は様々な問題に対して失敗する広告を半永久的に放映し続けられるという点がある。
長期的に広告をし続けるというのは一過性の話題が多い現代だと特に重要なポイントだと自分は考えている。どんなに素晴らしい広告を一発出したとして来月には他の広告、他の娯楽に話題を取られているのが現代の定め。そこで大事なのはまず広告による視聴者層へのイメージ定着と、悪名でも何でも視聴者に覚え続けてもらう事である。
しかしずっと正直に広告をしていてはいずれネタ切れになる。ソシャゲならキャラ紹介で延命出来るが、キャラ紹介広告はそのゲームのファンでないならどうでも良い内容である。そんな時に様々な人間に訴求出来る(煙たがられる)広告とはミニゲームを失敗する映像なのだ。
一時期魔剣伝説がやっていた実際には出来ないゲーム内容を紹介する誇大ゲーム広告も、長期的にネタが切れづらいミニゲーム広告の一種だと言えるだろう。これは一応ジャンルが一緒だからグレーゾーンであるが故に詐欺であるという誹りをギリギリかわせるというメリットがある。
しかしそれを上回るデメリットとして本編のゲームが広告よりもショボいからやめてしまう、ガッカリゲー扱いされるリスクが生まれるのは見逃せない。厳密には詐欺広告では無いけど視聴者からしたら詐欺だと言われてもしょうがない広告は、長期的に見ると悪い結果を生む可能性と背中合わせだ。そもそもクレームが多くなれば厳密には詐欺で無いという逃げ道も意味が無くなってしまうので、魔剣伝説式はハイリスクローリターンに見える。
おそらくそのイメージを払拭するために魔剣伝説は2021年8月くらいから誇大ゲーム広告を止めて、事実である「400連ガチャ」や「アバタープレゼント」をメインに広告を始めたのだろう。しかしその結末としては、2022年からあまり広告を見かけなくなるくらいには運営が苦しくなっているのが現状ではないか。
そう考えるとエボニーはよくもコンスタントにミニゲーム広告を打っている物である。それだけコンスタントに広告をしているおかげで知名度に関しては文句が無い。
エバーテイルやザ・グランドマフィアほどの派手さは無いけども、ネットをしていれば一回は遭遇して、名前をふわっと覚えているくらいの影響力はあるんじゃないですか。
広告戦略にもよるが、もし長期的に新規顧客を呼び込みたいのであれば一年間くらい打ち続けられるような広告のネタを用意しておくべきでしょう。softbankで言う白戸家シリーズや荒野行動で言うゆうとシリーズのようなイメージキャラクターを立てるか、話題になりそうなミニゲームを実装するかはお任せしますが。
これが周年期に一気に新規層を呼び込みたい場合や、新商品を短期集中で売り出したい場合はまた話が変わってくる。とはいえ、今時の長期運営を目指すスマホゲームの場合は長期的に顧客を呼び込めるような広告のアイデアもセットで考えておくのはアリじゃないでしょうか。
・AFKアリーナがミニゲームを実装しても広告しなかった理由
ここまで書いてみると一見「アレ? ミニゲームを実装したら広告まで擦り得やんけ!」と思うかも人もいるかもしれないが、実際に見るとAFKアリーナはミニゲームを実装したが広告にはしていない。
あえて広告しないメリットというのも考えてみるべきだろう。
・広告しなかった理由①~受ける悪評と話題性のバランス~
現代において広告というのはゴキブリ並みの扱いを受けているし、どんなに広告に工夫を凝らしても「広告をした」という一点だけで商品の購入・使用を嫌われるリスクがある。
もちろんリリースしたてであれば知名度を上げる為に広告をする必要があるが、AFKアリーナのように一定以上知名度があり、プレイ済みの人も多いであろう場合は本当に広告をすべきか慎重に考える必要があるだろう。
それに暗闇の侵入自体確かに面白いと言えば面白いのだが、下手に広告をするとパクリゲームだと言う非難をする人々が絶対に出てくる。ハードやアプリ容量の限界的にVampire Survivorを上回るのも難しいだろうし、スマホで遊べるVampire Survivor系のゲームではより過激な内容で話題を獲得したスーパーウィザードというライバルがいる。
そう考えると「話題性でスーパーウィザードを上回る確証が無く、Vampire Survivorのパクリと言われてプレイを避けられるリスクの方が大きいため広告は見送ろう」という判断をした可能性はあるだろう。
その「広告しない」という徹底ぶりは、日本版公式ツイッターでも話題を出していない点からも伺える。
・広告しなかった理由②~注力していない地域のイメージを必要以上に下げない~
ぶっちゃけAFKアリーナで一番ありそうなのは日本で新しいユーザーを呼ぶ優先度を下げている可能性である。
広告は作るのも放映するのもタダでは無い。上記の通り強力なライバルが多数いるジャンルで無理に広告費に金を使うのは合理的でないという判断もまたあり得る。それに、調べてみるとAFKアリーナ自体は海外でしっかりと魔剣伝説スタイルの広告を放映しているようだ。
日本で必要以上に広告で悪印象を覚えさせてしまうよりは、より売り上げを狙える地域で広告を打つ。やや売り上げが落ちている日本では悪印象を与えないような立ち回りとして広告をしないという決定をした可能性がある。
・まとめ
おそらくこれからも世界には実際に遊べないゲームのプレイ映像が増えていくのだろうし、今後もこれは本物なのか、偽物なのかと思いながら広告を見る事になるだろう。
しかしその中でも、ミニゲームを実装した上で偽物っぽい広告を打つという紛らわしい手口は今後広告への締め付けが激しくなるにつれて常套化していく可能性が高い。その先駆けとして広告をしている超次元彼女やEVONY、またミニゲームは出来るけど広告を打たなかったAFKアリーナの例を見て、今後どんな広告を打つかはよく考えて欲しいなと思います。
個人的にはHero Warsくらいはっちゃけた広告を出してくれると見る側としてはこれほど面白いもん無いなと思うんですけどね。
・2024年追記~ゲーム内ミニゲームを試遊用に使う例~
東京ゲームショウ2024のホワイトアウト・サバイバルは、ゲーム内のミニゲームをゲームの試遊に使うという使用例を開拓してきた。
ホワイトアウト・サバイバルはジャンル的に少し試遊しただけではその面白さが十全に伝わらないゲームなのだが、まだゲームを遊んだ事のない人に対してゲームに触れてもらう手段としてミニゲームを採用していた。
このミニゲームもゲーム中で本当に遊べるので、広報活動でウソをついている事にはならない。