広告振り返り:~10月総括編~
・10月の広告のあらすじ
・大企業のネットミーム広告が増加
10月の広告はネットミーム使用が多かった。日清はDaisuke+水素の音、マクドナルドはドナルドMADをアレンジしたもの、HPはSEIKIN自身で自身のうわさをネタにするような広告に仕上げており、各々個性を感じる内容でした。
ネットミームを使うとオタクから不興を買う! みたいな話はどこへやら、結局ネットミームを使った方が話題になるし、ネットミームの話題性にタダ乗りするような広告は増え続けるばかりです。そりゃ初見の広告に面白さを感じる人ってのもなかなかいないでしょうしね。
しばらくweb広告においてはネットミームを擦る流れが続きそう。
・違法広告が増加
こいついつも違法広告が増えてんなって話になるけども、実際多いもんは多いんだから仕方が無い。スターフェイトはパルワールドよりもっとひどい形でポケモンをパクったし、Elona2が音楽を無断利用するし、topheroesはスーパーサイヤ人の悟空みたいなスキンで偽広告をやっている。
著作権的にダメだろうという広告のみならず、アトムクリニックのように男性器を強調するとか、メンズクリアみたいに露骨な下ネタを入れてみるとか、もう広告の倫理はメチャクチャや。もう検閲も何も間に合っていないと見える。
・ルーキー級の注目タイトル
・Elona 2
Elona2はそらまふうらさかのRPGを無断利用したのではないか、という所が話題になったが、それ以外にも懐かしの茶番広告がいっぱい放映されていたのが見どころ。
そもそもElonaの制作者から無断で続編を作っちゃったという時点で厄介なタイトルだというのに音楽の無断利用までやっているのではそりゃあメディアは取り上げたがるだろうが、実はアレ以外の広告の方が内容は面白いんすよね。無断利用広告は単に話題を取りたかっただけ感が強いし。
ところでRPGに関してはキャットファンタジーでも使われていたんだけども、そういう変な界隈での人気が高まっているのだろうか? もしそうなら災難ですね、というお話になるが……
・ドタバタ王子君
ドタバタ王子君は大人気お笑い芸人のクロちゃんと大人気作曲者のナユタン星人でコンビを組ませるというよく分からなすぎる組み合わせを実現しただけで一定の評価をすべきだと思います。
地味に無料10000連ガチャの大台に乗せたタイトルでもあるんだけど、正直この変なテーマソングが一番面白い。昨年の『社畜の逆襲は今だ』一本で話題を取ったこんにちワン! ヒーローみたいだ……
・レゾナンス:無限号列車
レゾナンス:無限号列車は電車をテーマにしたゲームという事で、車内放送で有名な声優で固めていたのが印象的。堺正幸とかクリステル・チアリという名前だけ聞いてもピンと来ないかもしれませんが、実際に広告を見た時のインパクトはすごいんだから。とりあえず1:00から見てください。
それ以外にも東京ゲームショウに出展していた成果を分かりやすく出したというのは高得点。Appstore無料ランキング1位を達成したのは東京ゲームショウで事前登録を営業するべくアクリルキーホルダーやらアクリルスタンドやらを配っていたんだけども、その地道な営業も実を結んでいたんじゃないかなあと思います。
やっぱり1位のゲームであるという箔がついていると、それだけでダウンロードしようかな、やってみようかなというモチベーションを抱く人もいるでしょうからね。初動戦略としてリアルイベントを活用していく手法と、面白い切り口の広告で注目を集める手法を一緒にやっているタイトルです。
・ミドル級の注目タイトル
・ホワイトアウト・サバイバル
ホワイトアウトサバイバルは話題になったハリウッドザコシショウ起用型広告もそうだが、それ以外にも北村一輝を採用した広告も楽しい出来に仕上がっていたのが特徴。とっても楽しい広告でした。
有名芸能人コラボというジャンルは過去にも色々なタイトルが取り組んできたと思うけど、その中でもちゃんと面白い広告をやれるのはわずかなんですよね。特にザコシショウは海外の広告特有の直訳感を見事に面白さに落とし込んでいるのがお笑い芸人としての矜持を感じさせる出来です。
キャスティングも内容もお上手でした。
・異世界のんびりライフ
異世界のんびりライフは料理シーンの3Dアニメという珍しい挑戦を広告で見せていたのが特徴。そもそもアニメで料理シーンを描いている例自体あんまり見かけない気もするけども、その中で3Dアニメだとさらに候補は狭まってくるでしょう。
しかも料理自体もそれなりに美味しそうな見た目に仕上がっていて、フライパン的な物を使いつつもコンロは魔法陣にしてあったりするのも中々細かい。こういう事をやってみよう! というアイデアを出して、その上で作品に仕上げているのは大したもんだと思います。
異世界のんびりライフは生成AIアニメの方も出来が非常によく、そちらでも完成度の高さを見せつけていた。
この辺りはさすがおねがい社長で有名を馳せたIYAGAMES産の広告と言ったところか。
・ライト級の注目タイトル
・TAKE and GIVE NEEDS WEDDING
最近の広告はおしゃれな広告が無くて~という方には是非見て欲しい一作。映像的にここまで格好よく、かつウェディングの明るい雰囲気を表現した広告ってのは中々無いと思います。
広告は映像技術自慢になってはいけないと思うが、だからと言って良い表現を無くしてただ有名人を目立たせれば良いってもんでも無いでしょう。その点この広告は映像も良いし、キャッチコピーの「ただしいよりも、たのしいを。」というメッセージもよく噛み合っていると思います。
・HP Envy x360 14
SEIKINという人物が上手にAIを活用して広告を作っていく様を広告にしているのが面白い。「AIがすげえすげえとは言うけど実際何が出来るの?」という方はこれを見れば解決と言えるでしょう。
上の動画はフル版42分で、下の動画は広告用に短縮された2分程度の物。これをセットで見ると広告においてどこを短縮して、あるいはどこを強調して案件で伝えたかったのかと言うメッセージ性を感じられると思います。是非セットで見て頂きたい広告の一つ。
何ならこの広告の摑みはSEIKINがサイコパスだ! みたいなネットミームを上手に使っているんだから、ネットミーム広告とも言えます。インターネットとの関わり方が上手すぎる。
・日清/カップヌードル
水素の音とDaisukeを組み合わせるというネットミームを直接混ぜ込んだような広告を仕掛けてきたのがカップヌードル。もうX民に音MADを見せてえだけだろ!
踊り手のDai.さん的にはネットでネタにされるのを嫌っている節があるため若干不穏な雰囲気になった所もあったが、結果としてはとんでもないインプレッションを稼いでいきました。ネットミームはネットミームのまま、素材の味を大事にする所をやり切ったのはえらいと思います。
・マクドナルド
2024年10月23日は奇しくも2種のネットミーム広告が登場していた。もう一つのネットミームとの向き合い方を提案したのがマクドナルドで、こちらはドナルドMADのネタを再解釈して「いまだけダブチ食べ美」という新キャラクターを登場させるという新しいやり方を行ってきた。
元ネタを忠実に広告にした日清と、新しい作品を作ろうとしたマクドナルドどちらが優れているというよりは、どちらもやり方としては正しくて、どちらも上手く広告に落とし込んだと評価するのが正しいのではないか。
・ゼンレスゾーンゼロ
ゼンレスゾーンゼロはモエチャッカファイアという音楽を広告でも活用し始めたのだが、キノコ伝説が開拓したテーマソング商法をゼンレスゾーンゼロも取り入れて、しかもこちらはよりクオリティの高いキャラソンとして広告にしてきたのは本当にすごいと思う。
ゲーム内の映像だけでクオリティが頭一つ抜けてるとか評価していたのに、広告面でも上回ってきたら変な広告界隈の人らはどうすんねんって話になってきません? ドタバタ王子君の方でも歌ネタ広告が来たけどあっちはあっちで予算が相当かかってそうだし、もう音楽を広告したいのかゲームを広告したいのかよく分からなくなってくる。
つーかゼンゼロは毎月毎月新しく話題になる広告ばっかり出してどうなってんの???
・マスター級の注目タイトル
・Hero wars
ヒーローウォーズはアニメ系広告で攻め始めるという新路線を見せ始めた。これだけ新しい広告をガンガン出している辺り、やっぱりヒーローウォーズは儲かっているんだなあという感が強いです。
無論普段の茶番広告もしっかりとやっており、それらも新しく面白いネタをガンガン出してくるんだからその物量戦術はいつも通り。どうやったらこんなに毎月毎月新しいオモシロ広告を量産出来るんだい? アイデアだけならAIで何とかなるだろうが、あのゲーム風映像までAIで自動化しているとは思えないんだよなあ……
・Temu
Temuは話題になるネタ画像みたいな広告を出すのが上手いんすよね。この服もAI生成か何かで作られたネタだろうと思っていたら、東京のキャバクラでこの服を着た人が逮捕されていたのもちょっと面白かった。
別にこれが無くともTemuの広告は評判が悪く、Temuを消すためだけに広告ブロックの方法が拡散される有様。今年の迷惑広告枠はTemuがダントツかもしれません。
・2024年10月のMVP
2024年10月のMVPは「マクドナルド」です。
今だけダブチ食べ美はこれまでの半端にネットミームをパクってつまらない出来になるパターンでも、あるいは完璧にネットミームの型をなぞっただけの広告とも違う、新しいアレンジ型ネットミーム広告の可能性を切り拓いてくれた。
ネットミームは定型のネタをなぞらないと面白くならないという風潮があったのだが、それを良い意味で裏切り、新しい形を提案したのはさすが大企業といった所だ。以前の『マクドは大変なものを作っていきました』は完全に既存のネタに乗っかった形になるけども、今回は日清なども出来ていない新しいネタを作るという領域に踏み入ったのだから称賛すべきである。
今後の広告にも期待出来る内容でした。