【高校入試紙面講義】2018年ラ・サール高 大問3
私立・国立入試の仕上げとして、私立の時事問題を取り上げたいと思います。そんな中でも今回のラ・サール高校は数年に一度、入試年の前年(今回では2018年入試なので2017年)のできごとをもとに出題します。この時事問題は11月まであるので、ギリギリまでできごとを見ておかないといけません。
時事問題の特徴は➀時事そのものを出題する形式、②時事に関連したできごとを問う形式ですが、ラ・サールの形式は後者になります。
来週からは、再び公立入試の解説を行います。公立入試解説は再び有料記事となります。ご了承ください。
なお、今回に限り、後半部分は点差がついてしまう話に直結するため、有料記事とさせていただきます(解説パートまでは無料公開です)。
■問題の概略
2017年の1月から11月までの時事を15個ほど取り上げますが、全て正誤問題ですが、問題難度は非常に高いです。時事問題は関連したできごとをしっかりと押さえる必要があります。問題によっては正誤文が長くなりますが、正確に正誤判定をしていただきたく思います。なお、ラ・サールは歴史分野も世界史が出題されやすいです。そのため、確実に点数が取れるところはしっかりと取っていただきたいと思います。
なお、今回後半は2020年で起こった時事をもとに関連知識を公開したいと思います。点差を付けたい方、最後の追い込みをしたい方は是非、最後の記事を購読していただけると幸いです。
■解説
それでは解説を行います。紙面の都合上、全ての問題を扱えません。その辺はご了承ください。
問1 アメリカ合衆国における大統領と連邦議会の関係に関連する記述として誤っているものを、次のア~エから1つ選び、記号で答えよ。
ア 大統領は、実現したい政策に必要な法律案や予算案を連邦議会へ提出する。
イ 大統領は、連邦議会が可決した法律案に対して、拒否権を行使できる。
ウ 大統領は、連邦議会の上院の同意を得て、外国と条約を締結する。
エ 大統領は、連邦議会の上院の同意を得て、連邦議会議員以外から各省の長官を任命する。
この問題は、トランプ氏が大統領に就任した(この記事を書いているときはバイデン氏が大統領になっています)ことを記事にした問題です。大統領制の仕組み図が入っている場合、そこまで難問ではありません。大統領には強い権限があることは、前回の東京都の紙面講義で解説した通りです。よって、イは正文です。しかし、アについては、大統領は議員ではありません。なぜなら、大統領には強い権限を持つためです。そのうえ、行政権と立法権は独立しています。そのため、大統領が法律案や予算案を連邦議会に提出することはできません。よって、これが誤文で正解はアとなります。ウとエは正文です。
問2 公務員に関連する記述として誤っているものを、次のア~エから1つ選び、記号で答えよ。
ア 公務員は、日本国憲法を尊重し擁護する義務を負っている。
イ 「全て公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と日本国憲法に明記されている。
ウ 公務員の労働基準権が制限される代償措置として、国家公務員に関しては人事委員会が、地方公務員に関しては人事院が、それぞれ設置されている。
エ 公務員が行った職務上の違法行為によって権利や利益を侵害させた人は、国または地方公共団体に対し、損害賠償を請求できる。
今回は国家公務員法違反に関しての時事を基にした問題です。アとイが正文であることは疑いの余地はありません。特にイは憲法15条の内容そのものです。ウは保留です。この内容はほとんどの公立中学ではスルーの内容です。エは正文です。国家賠償請求権というものがあり(憲法17条に記載あり)、請求権の一つです。よって、保留にしたウが誤文となり、正解となります。これは人事委員会と人事院の説明が逆です。このように正誤問題の作られ方の王道の一つが語句と説明を逆にするという方式もあります。私立の難関校などは教科書内容から超越したもの(高校内容)の出題もしてくるところがあります。しかし、今回は冷静に消去法を使えば正解にたどりつくことができます。
問4 EUに関連する記述として誤っているものを、次のア~エから1つ選び、記号で答えよ。
ア EUでは、イギリスなど一部の加盟国が自国の通貨を廃止して共通通貨であるユーロを導入している。
イ ユーロ参加国であるギリシャが財政赤字の額を偽っていたことが発覚した後、ドルに対するユーロの為替相場が下落した。
ウ EUの加盟国は、東ヨーロッパを中心に増加して現在28か国となったが、加盟国間の経済格差は増大した。
エ EUでは、多くの加盟国において、難民の受け入れに対する国民の不満が高まっている。
イギリスがEUを離脱を通知したことに関する問題です。イギリスは2020年にEUから正式に離脱し、現在は27か国で運営されています。そのことに関しての正誤問題です。
アは明らかな誤文です。EU加盟国の大半は共通通貨のユーロを使っていますが、イギリス・デンマーク・スウェーデンなどは自国の通貨をそのまま使っています。入試問題では、ユーロ未使用国が出題されますので、現在だとデンマーク(クローネ)やスウェーデン(クローナ)を押さえてください。いやらしい問題を出すなら、国名ではなく通貨で出すところ(写真で来るケースもあり)があるので、私立に関しては気を付けてください。
残りの選択肢は全て正文ですが、ウは2020年末の話では27か国に変えてきますので、注意してください。エについてはこれがイギリスがEU離脱を決断した理由になります(記述問題で出る可能性もある)ので、これはそのまま周辺知識として加えておいてください。よって、正解はアとなります。
問9 核兵器に関連する記述として誤っているものを、次のア~エから1つ選び、記号で答えよ。
ア 核兵器を保有する国が増えるのを防ぐために締結された核兵器拡散防止条約(NPT)は、締結当時すでに核兵器の開発に成功していたアメリカ・イギリス・フランス・中国・ソ連(現ロシア)以外の国が核兵器を保有することを禁止している。しかし、締結後も、インド・パキスタンなどが新たに核兵器の保有国となった。
イ 核兵器禁止条約は、核兵器の開発や仕様などを初めて法的に禁止した条約で、日本などが賛成して採択されたが、アメリカ・イギリス・フランス・中国・ロシアの核保有国を含む国々は採決に参加しなかった。
ウ 2017年9月に北朝鮮が6回目の核実験を実施したので、国際連合安全保障理事会は、北朝鮮への石油輸出を制限するなどの制裁決議を全会一致で採択した。
エ 2017年のノーベル平和賞は、核兵器禁止条約の採択に貢献した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が受賞することになり、授賞式で被爆者がスピーチを行った。
今回は核兵器禁止条約の採択に関する話です。実は2021年1月に発行されました(2020年に批准国が50を超えたことで発行になる)。よって、超最新の時事となります。もしかしたら、今年の入試問題でも関連させて出題する可能性はあります(詳細は後半で)。
この正誤問題はウが一見今までの関連知識で誤文と思います(今までは北朝鮮の経済制裁などにロシアと中国は慎重姿勢だった)が、これは正文です。これを先入観だけで解かないようにしないといけません。そうなると、もう一つ先入観がありそうな選択肢がイです。この条約のもう一つの矛盾は、この条約に日本は反対の立場(批准していない)であることです。日本といえば、世界唯一の原子爆弾の被害を受けた唯一の国なのです。本来なら日本はこの条約に批准するべき国なのに、一貫して批准をしていません。それが2020年のニュースで日本は核兵器禁止条約に批准するべき、という声が出ていました。このことを関連させても、今年の入試では警戒すべき内容だと思います。よって、正解はイとなります。
問13 衆議院議員総選挙に関連する記述として誤っているものを、次のア~エから1つ選び、記号で答えよ。
ア 第47回に比べて、第48回では、衆議院小選挙区選出議員の定数は295人から289人へ、衆議院比例代表選出議員の定数は180人から176人へと減少した。
イ 第48回では、期日前投票を利用した人は過去最多となったが、小選挙区選挙の投票率は55%を下回り、現行の小選挙区比例代表並立制導入後では最低となった。
ウ 第48回では、自由民主党と公明党の与党が獲得した議席は、追加公認を含めて、憲法改正の国会発議に必要な3分の2を超えた。
エ 第47回では、小選挙区間の一票の価値の格差が最大で2倍を超えていたが、その後小選挙区の区割りが改定されて、第48回では、1票の価値の格差が最大で2倍を下回った。
2017年10月に第48回衆議院議員総選挙が行われたことに関する選挙制度の問題です。これもしっかりと変化やニュースを見ていないと解けない問題になっています。
これはズバリ誤文はイです。アは明らかな正文、エは1票の格差を是正するために区割りの見直しを行ったことからも正文と判定できます。ウも憲法改正発議に必要な3分の2に達したことで日本国憲法改正の機運が高まったとされました。しかし、実際は憲法改正どころか安倍晋三前首相の森友・加計疑獄事件や桜を見る会をめぐる公職選挙法違反や政治資金規正法違反などの問題にさらされ、2020年では新型コロナウィルスの大流行により、長期政権の終焉になり、憲法改正については頓挫してしまいました。
イですが、小選挙区比例代表並立制が導入されて最低の投票率になったのは、2015年の第47回の衆議院議員総選挙のときです。詳しいデータはかきのHPでご覧ください。よって、正解はイとなります。
■2021年入試で出題される時事問題と関連単元
お待たせいたしました。ここからは2021年の私立・公立入試で取り上げられるであろう時事問題とそれに関連する単元について公表したいと思います。
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