【紙面講義】幕末の金銀交換比率
本日もよろしくお願いいたします。
昨日まで東京で色々と会合をしており、昨日深夜に帰宅しました。少しだけ疲れていますが、昨日のTwitterフォロワー様のツイートを見て、気になったところがあったので、今日はこの話をしていきたいと思います。久々の紙面講義です。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
■昨日のツイートより
昨日、帰郷する前のツイートで上記の話が出てきました。その時はちょうど僕が羽田空港にいたため、この内容の裏をとるのが翌日以降になる、という旨を返信しました。
そして、裏をとってみますと、中学社会で以下の図を見つけました(リプとともに掲載)。
上記の図は「中学社会 歴史分野」(日本文教出版)の教科書から引用させていただきました。これを見ると、確かに金銀交換比率が1:5や1:15とありますが、実際の交換枚数は1:4になっていました。
これは、我々がよく知っている1:5や1:15については秤量貨幣の貨幣比率です。ところが、枚数でいくなら計数貨幣になります。
で、この計数貨幣についてですが、中学社会ではほとんど取り扱うことはありません。唯一簡単に取り扱ったのが山川出版社の教科書でした。
実際の用語チェックで確認しましたが、計数貨幣も秤量貨幣も語句としての掲載はありませんでした。
教科書で上記の説明を図でまとめていたのが、東京書籍、山川出版社、日本文教出版の3社でした。他の教科書には図などの記載はありませんでした。
■指導の際の注意点
では、この単元を指導するのに気を付けないといけない点はないのか?ですが、中学生で学ぶときは日本と外国の金銀交換比率が異なる、ということは最低限抑えるといいです(教出・帝国・育鵬社・自由社は具体的数値が教科書に出ていない)。東京書籍・山川・日文を使っている場合は、金銀比率がありますが、実際に交換された数と比率が異なる理由(背景知識)を一言添えておくといいでしょう。ただ、そこまでがっつり教えなくてもいいと思います。
日本史での指導だと万延小判が軽量になった話、金銀の含有量などが共通テストの正誤問題、論述問題などで問われてきます。ただ、金銀比価は1:5、1:15を使っていますが、教科書では言及しているものがほとんどありません(触れていたのは実教出版の日本史B、東京書籍の新選日本史Bの2教科書、僕が現在持っている教科書のなかで、という話)。なので、金銀比価の違いだけ押さえればいいですが、関連知識・背景知識で知っておいてもいいと思います。
ただ、歴史総合の教科書でこのことに触れていたものはほとんどありませんでした(僕が現在持っている教科書では1つもありませんでした)。
つまり、中学社会ではそこまで躍起になって指導しなくてもいいと思います。ただし、背景知識としては必要な個所もあります。「日本と外国の金銀比価が異なる」ということがわかれば十分です。そこから質を落とした貨幣を鋳造した、とつながればいいでしょう。なお、アドバンス中学歴史資料(帝国書院)でも僕のツイートの説明でまとめていました。
日本史の場合は正誤判定、論述問題で必要な場合もあります。その場合は簡単に指導してもいいです。なお、帝国の図説日本史通覧の図表、山川の日本史図録などでも上記の僕のツイートのような説明でされていました。
■高校日本史内容でも中には中学社会でも指導する
新学習指導要領での授業も2年目になります(歴史の新教科書では現中2生から)。教科書も年月が変わると内容も変わってきます。ということは、新規の史料がでてくると気を付けないといけません。
つまり、指導者は教科書の内容・記載にも気を付けないといけません。塾講師などはワークなどだけで指導できるとは思わない方がいいです。しっかりと自分の地域及び都道府県の教科書は最低でも確認してください。余力があれば、検定教科書全てを見るのが本来はいいですが……
近年の教科書は高校内容でも一部中学生でも必要なこともあります。そして、その内容が歴史総合・地理総合・公共の新科目につながります。
よく、中学生の講師や学校の先生でも、高校内容の知識を持っておいた方が指導において有利になる、といわれていますが、それはこのことからも言えるのでは、と思います。僕もここ近年では高校内容の単元を意識して指導に生かしています。それが、先の高校の歴史総合・地理総合・公共の授業にもつながります。
いくら思考型の授業といっても、前提となる知識がないと思考することもできません。そして、今までの授業を丸暗記だけで済ませている場合、後々大変なことになると思います。そのために、公立高校入試では近年、思考型の問題が増えています(資料読解・正誤問題・短文記述や論述問題)。
指導される場合、まずは公立高校入試の問題をしっかりと解析して解いてください(解くだけではダメです!)。これは10年以上塾講師などをおこなっている先生には特に声を大にして言いたいです。そのときから問題の傾向が大きく変わっています。そして、2023年入試から一部の都道府県では入試傾向が変わる可能性もあります。それを踏まえた上で指導してください。