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読書【頭のいい説明「すぐできる」コツ】感想

『頭のいい説明「すぐできる」コツ』完読。

能力はあっても説明が下手だと評価が下がる。

現代は「説明能力」がそのまま「仕事の能力」として評価されることが多い。

能力が高いから説明が上手いのか。
説明が上手いと能力が高くなるのか。

本書では【説明】を「伝わる」ことを目標とせずに「結果を出す」ことを目標としています。

説明によって相手の行動を促して成果につなげる。

まずは結論から先に言いなさい。
細かな情報は後回しにすること。

一方的に喋らず相手が理解しているかを確認しながら話しなさい。

人間は感情の動物。
正論だけでは動かないことを知りなさい。

人間は信頼していない者の意見は聞き入れない。
なので日頃の人間関係を円滑にしなさい。

などのテクニック論からコミュニケーション法まで様々な角度から【説明】を解説しています。


社長や上司など時間が作れないくらい忙しい人がエレベーターに乗っている、わずかな時間で自分の提案を伝える。

これをビジネスの世界ではエレベーターピッチというそうです。

1分にも満たない時間で提案を要約する。

エレベーターピッチの利点は提案だけを伝えて返答は聞かない。
というか聞けない点。

そうすれば後日、再び話ができる口実が作れる。

もう一つの利点は話した後で気不味くなると予想できる時。

エレベーターが開くまでしか時間がないので言い終わったら直ぐにその場から離れられる。
言いにくい事を言った後で居た堪れない気持ちを我慢することもない。


エレベーターピッチは相手に何かしらの印象を与えるには最良の方法だ。

俺が住んでいるアパートの7階から1階までは46秒かかる。
扉が閉まってから開くまでなら49秒だ。

俺は今日、この49秒に全てをかける。

彼女を初めて見たのは桜の蕾がポツポツと付始めたころだった。

ちょうど俺の部屋の真下に誰かが引っ越してきたのは知っていた。

その日、俺はベランダで煙草を吸っていた。
すると下の階からパンパンと布団を叩く音が聞こえてきた。

何気に身を乗り出して視線を下ろすと細くて白くて綺麗な腕が見えた。
その腕が布団を叩いていたのだ。
細くて白くて綺麗な腕の持ち主は布団を叩きながら、わりと大きな声で流行歌を歌っていた。


7階からエレベーターに乗ってきた彼女を初めて見たのは桜の蕾が芽吹いた頃だった。

彼女が昇降函に入った瞬間、無機質な匂いは鮮やかな薄桃色に染まった。
その薄桃色の匂いは、俺の肺を、俺の心臓を、俺の脳味噌を甘酸っぱい気持ちで満たした。

四六時中、何をしていても目蓋に映るのは、あの子の笑顔。
四六時中、何をしていても耳に残るのは、あの子の歌声。


話しかけてみよう。
そう決意したのは桜の花が満開になった頃だった。

エレベーターピッチは相手に何かしらの印象を与えるには最良の方法だ。
俺が住んでいるアパートの7階から1階までは46秒かかる。
扉が閉まってから開くまでなら49秒だ。

俺は今日、この49秒に全てをかける

俺はいつもの時間に、いつものようにエレベーターに乗った。
いつものように扉が閉まり、いつものように静かにゆっくりとエレベーターは降りてゆく。

いつもと違うのは胸の高鳴りだけだ。

そして7階。
エレベーターは止まり、扉が開いた。
狙い通り、彼女が乗ってきた。

俺は早まる心拍数を抑えつつ話しかけた。

「あの」

が、先に声をかけて来たのは彼女だった。

「あの、もうヤメてもらえませんか?私の後をつけるのは。それからドローンを使ってベランダから覗くのもヤメて下さい。この前、私の部屋を覗くドローンと同じドローンを持っていたのを公園で見ました!マジキモいんだけど。それから1階エレベーターホールでの待ち伏せもヤメて下さい。このカス野郎が!!」

言い終わると、ちょうどエレベーターの扉が開き彼女は颯爽と出て行った。

見事な。
それは実に見事なエレベーターピッチだった。

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