小説を書いて幸せになれますか? ④誰がために小説を書くのか
お世話になっております。素人以上小説家未満の管野光人です。
さて前回は潜在意識から発せられる「心の声」に注目しました。無意識モードを発揮して潜在意識を駆使する方法です。
短期集中連載の最終回は、潜在意識を効率よく駆使する方法を追求したいと思います。
突然ですが、あなたは「小説を書く」のが趣味だと胸を張れますか?
過日、自分はそう訊かれて、答えに窮しました。小説が趣味なんて口が裂けても言えなかったのです。恥ずかしかった。自分は小説を書くコトでしか虚栄心を表せなかったのに、それが誇れなかったなんて。
自己啓発で学んだコトに、エゴや虚栄心は潜在意識が発する「心の声」を届かなくする欲望だとありました。それならば無心。無心で小説を書くコトで、人に誇れる自分になれるはずです。
でもそんな考えは、元エリート銀行員の企業小説や、元エリート生命保険管理職のミステリー小説の前では、とても敵わないと思ってしまう。ギリギリと歯を噛む。こんな人間ドラマは描けないと、己の非力さと才能の無さで途方に暮れてしまうのです。
それでも歯を食いしばりながら、どれほど無心で書いても成功しない。それこそ千慮の一矢でした。
小説の執筆は残酷です。
自分の心を誰にも明かさないのに、己の生き様を執筆でさらけだしてしまう。自分の器の小ささに辟易してしまうのです。
茫然自失になりながら周りを見ると、自分が所属する「愉怪屋」のメンバーの言葉が心に刺さりました。
「誰かにワクワクドキドキをあげたい。悲劇でも喜劇でも、心が動くって大事なことだと思うから」
「地元の活性化になるボランティアや企画をしたい。文化的な発展は大事だから」
それを聞いて、自分は恥ずかしくなりました。
それはちょうど、若き棋士を描いた羽海野チカ著『3月のライオン 15巻』(小学館)の主人公・桐山零の独白に似ています。
自分の小さな荷物を「これはすごく重い」って信じ切って「自分はこんなにがんばっている」と呪文をお守りみたいにくり返して…。「自分以外の重さ」をも背負ってがんばって来た人の姿を見つけ、「でかいと信じてたのに超小さいじゃん」と気付いて恥ずかしくなり
そんな想いで反省しきりでした。
また、アメリカのバイクメーカー・ハーレーダビッドソンの創業者の生き様を描いた海外ドラマ「Harley and the Davidsons(ハーレー&ダビッドソン)」にこんな逸話があります。
まだ会社を興してない青年ダビッドソンが熱弁する。「自分の名を残したい」
ところが、戦争を経て主張を変化させる。「俺たちが消えたあとも、誇れる何かを残してやろう」
こうして名機ナックルヘッドを完成させ、アメリカのスピリッツを体現するバイクメーカーになった。
人のために礎になる。
そんなスピリットにふさわしい、ある面白い話があります。
過日、検証番組を観ていたら、信じられない出来事の紹介がありました。
事故で車から抜け出せない人を見つけ、ある男性が素手で車の金属製ドアをひん曲げて救出したそうです。いわゆる「火事場の馬鹿力」ですね。
この馬鹿力は、通常の筋力を超越した力を発揮したのでしょう。これは無意識モードから潜在意識のリミッターが外れたと解釈できますね。
番組では馬鹿力を再現しようとしましたが、それでも金属製ドアを曲げる数値は検出できませんでした。
当たり前です。誰かを救うためでなければ火事場の馬鹿力が発揮できないからです。
自己啓発でいわれる瞑想は、エゴを消して本当の自分と向き合うのが目的の「私利私欲」です。
それと比較して、火事場の馬鹿力とは他の人を救うのが「無私無欲」ならば、もっと潜在意識を駆使できるかもしれません。
自己啓発執筆術でたとえるならば、ホラーの帝王・スティーヴン・キングの裏話にこんなエピソードがあります。
ある物語に満足しなかったキングは原稿をゴミ箱に捨てたが、彼の妻タビーがそれを拾い上げ「これ、すごくいいとおもうわ」と励ましたそうです。これがキングの最初の長編小説「キャリー」の誕生秘話です。それ以来キングは、妻を楽しませるために小説を書いていると自叙伝で回顧していました。
誰かのために献身する心はまぶしい。きっと世界はそんな「愛」の光でできているのでしょうね。
自己啓発執筆術も同じで、誰かの人生を照らす灯になればと想いながら、自分にしか書けない小説を執筆すればいいと思います。
最後に自己啓発執筆術のまとめです。
成功のための自己啓発と、小説の執筆は同じである。
自己啓発執筆術で大事なのは「アファメーション」と「ビジュアライゼーション」。
隠された鍵は潜在意識であり、無意識モードから潜在意識が発揮される。
誰かのために執筆する心があれば、潜在意識をより良く駆使できる。
はじめて小説を書く方へ。
プロの小説家を目指す方へ。
あなたが小説を書いて、誰かが幸せになればいいですよね?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?