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台風につき、焼きそばパン
俺は高校生の頃、毎日焼きそばパンを食べていた。
朝、駅前のパン屋で、焼きそばパンを一つ買って、それを頬張りながら登校し、昼休みになると、売店まで走って行き(急いで行かなければ、売り切れる恐れがあった)焼きそばパンと牛乳を買って、屋上に上がり、分かりもしないトルストイなんかを読みながら、一人で食べた。帰りも駅前で、焼きそばパンを買っていた。
三年間、他のパンに浮気をすることは、一切なかった。そんな発想すらなかった。
パン屋の店員も売店のおばちゃんも、そのことについては最後まで俺に何も言う事はなかったが、今から思えば、内心かなりおかしく思っていたのではないだろうか。
自分でもあきれたのは、台風で学校が休みになると、無性に焼きそばパンが食べたくなったことだ。もともと休みである日曜日にはなんとも思わないのに、臨時休校だと食べたくなるのだ。おそらく、突然休みになると、こちらの心の準備が間に合わなかったのだろう。
そんな大好きな焼きそばパンだったのだが、高校を卒業するとともに、ぱったりと食べなくなった。一生分を、三年間で食べてしまったのかもしれない。
まるで嘘のように食べなくなった焼きそばパンなのだが、決まって食べたくなる時がある。
パブロフの犬。そう、まさしく今日のような、台風の日だ。一生分までは、まだもう少しだけ足りないということか。
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