短編小説「終点の一つ前」
私はいつもと変わらず、疲れた体のまま駅で電車を待っていた。
残業続きの日々に、心も体も限界を感じていた。
すると突然、私はめまいを起こして倒れ込んだ。
しばらくすると、回復したのか、楽に立てるようになっていた。
目の前には私が乗るはずの電車がもう到着している。
急いで駆け込み、座席に腰掛けた。
ふぅ、楽だ。
だが、心地よい揺れと疲労からか、すぐに眠りに落ちてしまった。
電車が停車を始め、体が倒れそうになり目を覚ますと、知らない駅に到着していた。
アナウンスによると終点の一つ前の駅らしい。
改めて駅の名を聞いてもわからなかった。
だが私は急いで電車を降りた。
ホームに降り立つと、辺りは既に暗くなっていた。
来たことも、見たことも聞いたこともない駅で、私は少し途方に暮れていた。
『君はどうしてここへ来たんだい?』
駅のホームに、ぽつりと設置されているベンチから、老人が話しかけてきた。
「眠ってたら、乗り過ごしちゃったみたいで…」
ホームに一人だと思っていた私は驚き、戸惑いながらも老人の質問に答えた。
「ところで、あなたは何をしているんですか?」
『私は次の電車を待ってるんだよ。乗るべき電車が全然来なくてね』
老人は穏やかに答えた。
『君も一緒に待つかい?』
「いえ、私は急いで帰らないといけないので、反対のホームに行きますから…」
老人は私の言葉を聞くと、温かく微笑んだ。
『心配はいらないようだね。君みたいなエネルギッシュな子なら大丈夫だ。安心しなさい、電車はすぐ来るよ』
その言葉通り、すぐに電車は到着した。
私は電車に乗り込むと、座席に腰掛けた。
すると、再び強い睡魔に襲われた。
私は目を覚ますと、病院のベッドで白い天井を見上げていた。