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短編小説「あやまった言葉」

朝日が差し込む小さな台所。

私は窓際に立ち、コーヒーを啜りながら外を見つめていた。

昨夜の喧嘩が頭をよぎる。
久しぶりに夫と言い合いになってしまった。

前までは、あんなにも分かり合えていたはずなのに。
最近の夫との会話は、いつの間にか心のない冷えきったものになっていたかもしれない。

怒りという感情はダメだ。
昨晩も全く心にないことを勢いのまま、言葉にしてしまった。

ふと、棚の上の古い写真入れに目が留まった。
そこには、私たち夫婦の新婚旅行の写真が飾ってある。

私と夫、二人ともなんて眩しい笑顔だろうか。

私は自然と、ため息のような深呼吸をしてしまった。
まだ諦めるには早い。

私は携帯を手に取り、メッセージを打った。

「今日、早く帰れそう? 一緒に食事でもどうかな?」

送信ボタンを押す指が少し震えた。
返事を待っていたが、待っていられなくなり、家事を再開した。

やがて、テーブルで携帯が振動した。
たったの数分だが、その時間は永遠のように感じられた。

『いいね。楽しみにしてるよ』

飲み終えたコーヒーカップを洗いながら、訳もなく夫からのメッセージをしばらく眺めていた。

何を話そうかな。
でも、もう一言目は決まっている。

「ごめんなさい」

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