短編小説「ここはどこ?」
体の節々が痛む。
目を覚ますと、視界は真っ暗で何も見えない。
俺は何をしていたんだっけ。それまでのことを全く思い出せない。
音もなければ臭いもない。頼れるのは触覚だけだ。
手を伸ばして辺りを探るも、手の届く範囲には何もないことがわかった。
床は冷たく硬い。
コンクリートでできているのだろう。
地面を這いながら少しずつ周囲の感覚を確かめてゆく。
すると、手が床ではない何かに触れた。
(やわらかい?)
床との感触の違いに困惑していた、その時――
突然視界が明るくなった。
しかし、目が暗闇に慣れていたせいかぼやけてはっきりしない。
『っだよここー!』『何!?』『うわあああ』
周囲からたくさんの人の叫び声や吃驚の声が聞こえる。
(俺以外にも人がいたのか)
片手で目をこすって視界を鮮明にすると、そこは大きな部屋だった。
部屋というより、何かの会場という方が適切な広さである。
この見慣れない空間に周りの人は困惑を隠しきれないでいる。
少しずつ意識を取り戻す者や、いまだ横になったまま目を覚まさない者もいる。
『ちょっと! やめてください!!!』
ん? 下から声が――
ビチーーーーーーーン!!!!!!!
ものすごい衝撃と共に俺は再び意識を失った。