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短編小説「夜の改談」

暇すぎる。
夜勤のコンビニバイトは何もすることがない。

品出しは前番の人がすでに終わらせてあるし、客も来ない。

俺はポケットからスマホを取り出し、SNSをチェックした。
すると、タイムラインのあるページに目が止まった。

【実際にあった心霊体験談】

怖いのは苦手だ。
でも、見たい。
人間はなぜ、わかっていても怖いものに惹かれてしまうだろうか。

俺は何件もの心霊体験談の記事を読んだ。

どれもリアルで、とても自分なんかが安易に読んでいいものではなかった。
今、ものすごく後悔している。

時刻は深夜1時。
まだ勤務は4時間もあるというのに、ずっと一人だ。

こんな時間に読んでしまった。
これから、丑三つ時だっていうのに。


スマホをポケットにしまったその時、店の奥で物音がした。

心臓が大きく鼓動している。
耳を澄ますが、心音以外は何も聞こえない。

「た、ただの偶然だよ…」

そう言い聞かせながら、床に落ちたパンを棚に戻した。


俺は再び、レジカウンターに戻ってスマホを触った。
SNSを確認するが、集中できない。

スマホの画面の外、視界の端に揺れる白い何かがどうも気になって仕方ない。
度々、焦点をその白に当てるが、風になびくただの紙だ。


気が付くと、スマホの画面には2:00が表示されていた。

俺は頬を手の平で叩き、気合を入れなおした。
その時――

~~♪♪~~

入店音が鳴った。

「いらっしゃいませー」

と、口は動いたものの、明らかにおかしかった。
自動ドアが開いていない。

背中に汗が滴る。

入ってきた…?
考えたくなかった。でも、こんなのおかしい。

頭の中で、読んだ怖い話が次々とフラッシュバックする。

突然、体が震えた。
空調の設定温度は変えていないはずなのに、さっきからすごく寒くなっている気がする。

その時、再び店内で商品が棚から落ちた。

もうだめだ…。こんなところにいられない…。
俺はカウンターを飛び越え、真っ暗な外に飛び出した。

無理無理無理無理…
あと3時間なんて無理…

俺はその日の勤務を投げ出して帰宅した。


翌日、店長にこっぴどく叱られた。

罰として、自動ドア点検の業者対応をさせられた。
ちなみにセンサーが壊れていたらしい。

俺はもう、勤務中にスマホは触らない。
そう誓った。

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