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阿弥陀に抱かれて地獄を見せていただく
私が小学生の時、誕生日に祖父がスケッチブックをプレゼントしてくれた。
新しいスケッチブックではない。
祖父が若い頃に勉強したくても出来なかったことを今勉強している。
歴史、星座、宗教、盆栽、宇宙など分野はさまざまである。
そして、何より沢山絵が書いてあった。
大抵は、祖父が教科書にしていた本の挿絵を祖父自身が模して描いているのである。
美術にも興味があったようである。
父に聞くと、レオナルド藤田が好きだったようである。
ハイカラ爺さん。
祖父は金物屋であったので、当然絵は素人なのだが、美術が好きなのがよくわかる絵で、力強く、色の感覚が鋭
かった。
よく覚えているのは、星座のところに出てくるポセイドン。
一生懸命にデッサンというものをやっている。
大きく力強い。
まさしく海の神ポセイドンであると思った。
馬が群れをなしている絵もあった、これは祖父の教科書の絵よりはるかに生きていた。
生命力があり、馬の群れが荒れくるいながら突き進んでいるようだった。
盆栽のノートには黒松が描かれていた。
祖父は黒松を描くのに青を使っていた。
非常に鋭い観察だと思った。
どのノートだったか忘れたが、最後のページに父と酒が飲みたかったなど、病床のことが描かれていた。
なぜ生き急いだのだとも書かれていた。
亡くなる間際に書かれたもののようである。
そして一番最後に書かれていたのが、
「阿弥陀に抱かれて地獄を見せていただく」だった。
中学生の時に亡くなったので、祖父にあった回数は多くはない。
多くはないが祖父のことがよくわかった気がした。
そして私は画家になった。
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