人の『痛み』を理解する②~生きづらさをもたらすスキーマについて~

思考であさましく計算して人生を設計するのではなく、自身の純粋な身体感覚に基づいて生きていきたいと思っています。

その方が予測不可能で面白いし、豊かだからです。

そんな風に生きることを願う上で、一番の障壁になると感じているのが、『痛み』と表現するもの。

この言葉自体は、『メンタルモデル』という本から引用させてもらっているのですが、今回は『スキーマ療法』という手法の言語を使って、この『痛み』を解説したいと思います。

全7回を予定していて本日は第2回。

  • 第1回『スキーマについて』

  • 第2回 『生きづらさをもたらすスキーマについて』←今回

  • 第3回 『18種類の早期不適応スキーマ』

  • 第4回 『不適応スキーマへの対処反応』

  • 第5回 『不適応スキーマへの対応方法』

  • 第6回 『まとめ 痛みの先にある豊かさについて』

参考図書は以下です。

詳しく知りたい方はこちらの本をぜひ参照ください。
また、この記事は本の内容を参考にした『私見』に過ぎないことをご留意ください。

前回のまとめ

前回は、人間の認知の仕組みと『スキーマ』について見ていきました。

スキーマは、我々が生まれ、育ち、生きている間に学習し、その人にとって「当然のこと」として構造化された認知のことを言います。

脳の情報処理の速度を飛躍的にアップさせるスキーマが無ければ我々は生きていけません。

ですが、このスキーマが『不適切に』形成されてしまっていることがあり、この不適切なスキーマが、我々に生きづらさをもたらしています。

スキーマによる生きづらさ

例えば、『努力をしていない自分には価値がない』というスキーマを持っているとします。

そんな人が、同僚が仕事中にだらだらと過ごしている(ように見える)のを目撃しました。

『努力をしていない自分には価値がない』というスキーマを持っている人にとって、怠慢な行為は禁則事項。

「あんな無駄な時間を過ごしやがって」という自動思考が走り、

  • 同僚を静かに軽蔑する

  • イラっとして食って掛かる

上記のような反応をしてしまう可能性があります。

このような自動反応は、同僚との不和に必ずつながります。芳しい反応とは言えません。

また、同じ人が、『楽しいことだけやって、人から好かれて、良い人に囲まれて生きている素敵な人』に出会ったとしましょう。

その人の目には、「努力もせずにちゃらんぽらんしている怠惰な人」と映ってしまっているので、その素敵な人とつながることは絶対できないでしょう。

こんな風に、不適切なスキーマがあると、無意識に劣等感や優越感、自己卑下、他者蔑視を抱えて生きることになります。

その結果、自分の人生を自分で勝手に生きづらくしてしまうのです。

そんな不適切なスキーマの中でも、人の認知を強くゆがませるのが『早期不適応スキーマ』です。
早期不適応スキーマは、幼少期に『中核的感情欲求』が満たされなかったことで形成されます。

まずは、中核的感情欲求について見ていきます。

中核的感情欲求

中核的感情欲求とは、スキーマ療法を考案したヤング博士の考えた、人間にとって最も普遍的でコアな感情欲求のことです。

現在は、以下の5つの欲求があると定義しています。

  1. 他者とのアタッチメント

  2. 自律性有能性自己同一性の感覚

  3. 正当な要求と感情を表現する自由

  4. 自発性と遊びの感覚

  5. 現実的な制約と自己制御

なお、この欲求は明確なエビデンスに基づくものではなく、臨床的な観察から導き出された暫定的なリストだそうです。

早期不適応スキーマ

早期不適応スキーマは、幼少期に『中核的感情欲求』を満たされなかったことで形成されるスキーマです。
形成された時点では『適応的』だったかもしれませんが、その後の人生において、『不適切なスキーマ』としてその人を生きづらくする原因になります。

なぜ、わざわざ生きづらくなるようなスキーマを自ら形成してしまうのか。
その理由を次で見ていきます。

早期不適応スキーマが形成される過程


人間の脳には、「矛盾した状況に遭遇したら、その状況を合理的に説明づける認知を作り出す」性質があります。

例えば、何かしら悲しいことや訴えたいことがあって、泣きわめいている子どもに対し、「ご近所の迷惑になるから泣かないで!!!」と怒り続けたとします。

するとこの子どもは、「自分の感情や思いを自由に表現したい」という中核的感情欲求が満たされません。

欲しくて欲しくてたまらない欲求が満たされなかったとき、子どもはどうするかというと、欲求が満たされないことを正当化する物語を作り出します。

「感情を自由に表現してしまったから、お母さんは激しく怒ったんだ」とか
「自分の主張をしてしまったから、お母さんは愛してくれなかったんだ」とか

これらが事実とは限りません。というか大抵の場合事実ではありません。
でも、強烈な感情と共に記憶に刻まれたこの出来事は、強固な認知に変わります。

「感情を自由に表現したら、人から拒絶される」
「自分の主張をすると愛されない」

といった具合に。

冷静に考えたらそんなの間違っているって分かるはずなのに。

得たいものを得られなかった状況に『適応する』ために、歪んだ認知を強固に作り上げてしまうんです。

これが早期不適応スキーマが形成される仕組みです。

負け惜しみではなく、木の上のブドウは酸っぱい!!!と本気で思い込んでしまうんですね。

そして、それが大人になってからも当人の人生を縛ることになってしまうんです。

ここまでのまとめ

今回は、人を生きづらくするスキーマの形成過程を見てきました。

次回は、ヤング博士がまとめた、18種類の早期不適応スキーマについて具体的に見ていきます。

自分がどれに当てはまるのかを発見するだけでも、一つ気付きや癒しが得られるかもしれません。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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