理系大学の1年生でやること
私が1年生で履修した授業を基に、大学の理系学部1年生が何をやっているのか説明したいと思います。
1.線形代数学
理系が大学で学ぶ数学と言えば、まずこれ。聞いたことがない人にとっては一体何をするのかよく分かりません。
線形代数学ではまず、「行列」という新しい表現を学びます。こういうやつですね。
大きなかっこでくくられたものを行列と言います。上の式は縦3つ、横3つの数字が並んでいる3×3行列の足し算をしています。下の式は行列の掛け算をしています。
行列という新しい道具を手に入れて、数学を発展させようというのが線形代数学です。
これ、最初は何の役に立つのかよく分からないのですが、実は2年生以降で大活躍します。いろんなものを行列を用いて計算していくのです。
ちなみに、行列は線形代数学の前半で習って、後半ではベクトルについて扱います。高校数学でもベクトルをやりますが、もっと深堀するというか、一般化する感じです。高校数学のベクトルは2次元平面と3次元空間を扱い、図形的なものでしたが、線形代数でやるベクトルとは、n次元とか言い出して図示するものではありません。その辺りのノートの写真がこちら。
次元を定義しています。基底というのも新しい単語ですが、Vの中の任意のベクトルを表すために必要なベクトルで、それらが1次独立であるものを基底と言います。分からなくても全く問題ありません。
と、言うのが線形代数学です。難しそうですが、講義をまじめに受ければ単位は難なく取れるはずです。
2.基礎解析学
大学1年生で習う数学と言えば、線形代数学ともう一つ、基礎解析学です。
こちらは何をするか分かりやすいです。微積分です。基礎解析学と言わずに微積分学ということもあります(教科書の名前が工学系のための微積分学でした)。
基礎解析学では、微積分をより正確に定義するために、「連続とは何か」「収束とは何か」というところから始まります。一番有名なのは「ε-δ論法」とか「ε-N論法」でしょうか。これらは連続や収束が何であるかを定義するときに用います。
「テイラー展開」や「マクローリン展開」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。関数を近似するときに使います。このテイラー展開が並行して学習する力学で大変役に立つのです。
さらに、積分が始まると、高校では1変数(被積分関数がxだけの関数)の積分しかしなかったのが、2変数や3変数以上の積分をすることができるようになります。こんなやつです。
球の体積を求めています。インテグラルが3つあります。
というのがざっくりとした基礎解析学です。
3.力学
ようやく物理の話ができます。高校でも物理で力学を習いますが、大学の力学はもっと数学的になります。
運動方程式というものが存在します。
ma=F
ですね。mは物体の質量、aは物体の加速度、Fは物体にかかる力です。物体が何らかの位置xに存在するとして、単位時間当たりのxの変化が物体の速度vになります。つまり、式では
v=Δx/Δt=dx/dt as Δt→0
速度は位置の時間微分なのです。また、加速度も同じ議論で
a=dv/dt
となります。すなわち、加速度は位置の時間による2階微分なのです。とすると、運動方程式は
md^2x/dt^2=F
となります。見にくい! こういう微分が含まれた式を「微分方程式」といい、大学の力学ではこれを扱っていくことになります。微分方程式の解というのは関数になっています。どんな形をしていたらその微分方程式は解けるのか。どうやったら解けるのか。など、扱っていきます。
基礎解析学のところでテイラー展開を力学で使うといったのは、ややこしい形をした関数をテイラー展開することにより単純な多項式の形にして、近似的に物体の運動を予測することがあるからです。
力学の後半では、大きさを持った物体(剛体)の運動をあつかったり、波について扱ったりといろいろします。
力学を学ぶことで、テイラー展開や微分方程式など、物理をやっていくうえで必要な武器の使い方を知ることができます。
4.化学基礎論
高校までの化学とは全く違います。化学といっても広いのですが、恐らく前期でやるような化学はもっぱら量子化学でしょう。
「原子や分子の中に電子がどのように配置されるのか」
は化学基礎論の大きなテーマであると思います。
また、光が波の性質を持ちながらも光子という粒子としての性質も持つという光量子仮説。逆に、粒子として認識されていた電子が、波としての性質も持つ(物質波)など、ほとんど量子論の授業になります。
シュレディンガー方程式というものを聞いたことがあるかもしれませんが、この方程式も登場しました。
授業によりますが、1800年代後半からの量子論を追っていく流れで様々な現象を学習していきます。
5.英語
英語は文系でも理系でもやりますね。私は苦手でした。
授業内容としては、何か英語の問題を解くということは少なく、英語でコミュニケーションをとったり、英語で文章を書いたりする授業が多いです(履修登録で自分のやりたい授業をとれます)。
6.第二外国語
これも文理関係なくですね。これも大変苦手でした。
私はフランス語をとりました。大学によってとれる言語は様々ですが、大阪大学理系の場合、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中国語の4択です。
フランス語は英語と単語がかぶっていたりすることが多いと聞いていたのですが、発音が全く違います。ラテン語からきている言語です。男性名詞やら女性名詞やら冠詞やらがややこしいです。
ドイツ語は英語と同じゲルマン語族なので、分構造は似ているかもしれません(全く知りませんが)。
ロシア語は話せたらかっこいいですよね。新しく文字を覚える必要があります。ズドラーストヴィーチェ!
中国語は漢字を覚える必要があります。私にはできません。
楽なのはドイツ語かフランス語らしいですが、正直よくわかりません。どちらもアルファベットをつかうので、そこは覚える量が少なくて済むのかもしれません。
7.体育
昨年はオンラインでの開講でしたが、何も運動することはありませんでした。
8.基盤教養
一般教養となっている大学もあります。私の場合は4単位(授業2つ分)とればいいということでしたが、科学系のものを2つとマクロ経済系のものを1つの6単位取りました。
おわり
というのが1年生でした。個人的には、専門に向けた準備的な意味合いが圧倒的に強いと思います。サボると面倒ですよ!
気が向いたら力学とか基礎解析とか線形代数とかの講義みたいなのを書いてみたいですね。
お疲れさまでした!