澤村晃河©僕の技術部リーマン物語

小説「僕の技術部リーマン物語」を連載しています。 技術部で働くサラリーマンの世界を通し…

澤村晃河©僕の技術部リーマン物語

小説「僕の技術部リーマン物語」を連載しています。 技術部で働くサラリーマンの世界を通して、役立つ情報や学びを発信し、楽しんで読んでもらえるコンテンツを目指していきます!インスタ:https://www.instagram.com/sawamura_kouga_331

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#1 入社初日 〜期待と衝撃〜

通勤ラッシュを文字通り肌で感じ、降り立つそこは、まさに都会のビジネス街、高いビル群を見上げ、これからここで働くのかと期待と不安が入り混じる。 足早に行き交うサラリーマンの中には、着慣れないスーツを身に纏い、緊張した面持ちで、いかにも新社会人といった若者が僕以外にもちらほら混じっている。 まだ見ぬ同期がこの中にいるかもと思うと少しワクワクする。 いよいよ今日が社会人生活、その第一歩! 僕の記念すべき入社初日だ!! 採用面接の時と同様に来客口からオフィスへ入ろうとすると就

    • #19 盲目の剣豪 〜射出成形不良の確認〜

      「あー、ごめんごめん!ちゃんと説明するね!」 新入社員である僕の指導係で技術部の先輩である冨樫さんは軽く謝りを入れたうえで、先程まで繰り広げられていた意味不明で摩訶不思議な業務の説明を始める。 冨樫さんはどこから説明していけば良いかを少し悩んだあと、その判断を一旦、僕に投げてきた。 「えーっと…どの辺が分からなかっとかあるかな?」 「全部です!!」 「そうだよね!じゃぁ!……」 軽く微笑んだ後、腹をくくった様子で冨樫さんは説明を始める。 まず、これらの部品は樹脂

      • #18 異様な新世界 〜トライ部品確認〜

        技術部に配属して数日が経った頃、大きな段ボール箱が僕の席の近くに突然現れた。 その段ボール箱の側面には、見たことのない漢字の並びが印刷されていることから、おそらく以前、言っていた中国の業者から送られたものだと想像する。 (こ、これは……か、海外からだ……) 英語が話せないにも関わらず、よりによって海外と関わる一部の仕事についてしまったという危機的状況に置かれていることを再認識し、漠然とした不安に苛まれ、その段ボール箱が近くにあるだけで微かに緊張する。 早速、直属の上司

        • #17 最初の電話対応(後編) 〜無残な初体験〜

          電話に出たくないという気持ちからか、せめてもの抵抗として、ゆっくりと電話に手を伸ばす。 自分の手が受話器に近づくにつれて、心拍数があがっていくのがわかる。 (あー……もうダメだ……) 抵抗虚しく手が電話に到達してしまった。 その瞬間、不意に静寂が訪れた。 (え?) 緊張のあまり音が聞こえなくなったか。 いや、違う。 電話の呼び出し音が止まったのだ。 (と、止まった………) ただ電話が鳴りやんだだけにすぎないが、頭の中では、爆弾処理班が危機迫る状況の中、残り

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        #1 入社初日 〜期待と衝撃〜

          #16 最初の電話対応(前編) 〜不可能なミッション〜

          「プルルル!……プルルル!」 無機質な電話の呼び出し音が静かなオフィスの空気を震わせる。 なんの変哲もない機械的な電話の呼び出し音に僕は嫌悪せずにはいられなかった。 (また…鳴った……鳴りやがった……) 電話の音に反応して心臓が強く脈を打つのを感じる。 しかし、それは決して突然に音がした事による反射的な驚きによるものでは無い。 電話が鳴ったことに対する明確な恐怖と不安である。 「……プルルル!」 「ガチャ!」 3コール目で颯爽と隣に座っていた先輩の冨樫さんが

          #16 最初の電話対応(前編) 〜不可能なミッション〜

          #15 混乱と失望 〜業務内容説明〜

          完全に想定外の展開に頭が混乱し始め、心拍数がまたたく間に上がっていく。 (え?え?……え?どゆこと?) 頭の中で改めて、冨樫さんの言葉を再生する。 (「うちの会社は、工場はないし、構造設計をする業務はありません!」) 確かに冨樫はそう言った。 しかし、そんな訳がない。 なぜなら、会社説明会でこの会社は「メーカー」であり、「ものづくり」に関わる仕事である事を全面に押し出していた。 (メーカーだよね?ものづくりって言ってなかったか?いや!絶対言ってた!!にも関わらず

          #15 混乱と失望 〜業務内容説明〜

          祝1周年🎊 小説「僕の技術部リーマン物語」を連載し始めて1年になりました! 多くの方にご覧になっていただき、そして、応援していただき本当に感謝しております🙏 創作活動を始めて良かったと思える1年でした🌄 引き続き、続編の創作に邁進して参りますのでよろしくお願いいたします🙇

          祝1周年🎊 小説「僕の技術部リーマン物語」を連載し始めて1年になりました! 多くの方にご覧になっていただき、そして、応援していただき本当に感謝しております🙏 創作活動を始めて良かったと思える1年でした🌄 引き続き、続編の創作に邁進して参りますのでよろしくお願いいたします🙇

          #14 技術部配属初日 〜不安な先行き〜

          総務部人事課の田代さんに連れられ、技術部のあるオフィスフロアへと足を踏み入れる。 その広いフロアには、長手のデスクが整然と並べられ、始業時刻の前だというのに既に多くの人が各自のパソコンに向って何やら作業を始めている。 キーボードを叩く音が空間に鳴り響く。 その空間の静けさとキーボードの喧騒が無機質な圧力となって、僕の身体に伝わる。 反射的に気圧されないように努める。 しかしそれが逆に、不安で萎縮しそうな自分の証明になっていると気づき、余計に緊張を助長していく。 田

          #14 技術部配属初日 〜不安な先行き〜

          #13 新入社員研修修了 〜幻滅と喝采、最後の通告〜

          総勢40人前後の聴衆が注目する巨大なスクリーンが切り替わり、会場が大きくざわめく。 「へー」といった驚きの反応 「え…?」といった明らかな不信感 「うわー」といった明確な嫌悪 様々な声が飛び交う。 ざわめきの中には笑い声も所々で聞こえる。 しかし、その笑い声も楽しそうな笑い声と困ったような笑い声が入り乱れる。 様々な反応が重なり、まとまった騒がしさとなって僕の身体に強くのしかかる。 その喧騒に圧され、意地で通してきた平然にわずかなほころびができ、一気に動揺が流

          #13 新入社員研修修了 〜幻滅と喝采、最後の通告〜

          #12 自己紹介プレゼン 〜陰謀 VS 意地〜

          (…………………やられた………) 僕の新入社員研修で最後の課題となる「自己紹介プレゼンテーション」 誰に発表するのか尋ねた際に、プレゼン資料作成に付き添ってくれた人事の鈴木さんは大したことはないという表情でこう説明していた。 「田代さんとか僕とか…まー、うちうちでの発表だから……」 その言葉と言い方から僕は3〜4人程度の聴衆の前でプレゼンすることを想像した。 しかし、考えてみれば、鈴木さんは嘘は言っていないのだ。 聴衆の人数も「うちうち」という言葉の指す範囲も明言

          #12 自己紹介プレゼン 〜陰謀 VS 意地〜

          #11 最後の課題 〜秘めた過去と隠された陰謀〜

          果てしなく長い道のりに思えたグループ会社全体での合同新入社員研修がようやく終わりを迎えた。 合同研修の2日目からはクラス単位で本格的な研修が始まったが、当然、初日以上の試練が立ちはだかることはなく、暫しの平穏が鉛のように硬直した僕の心を徐々に和らげていった。 子会社の僕は当然のように研修室の1番後ろの席だった。 それもあってか、大勢での研修は安心してよく眠れた。 というより、積極的に寝てやった。 自社でのマンツーマン研修で地獄のような睡魔との戦いを経験した当て付けだ

          #11 最後の課題 〜秘めた過去と隠された陰謀〜

          #10 洗礼 〜新入社員挨拶〜

          グループ会社全体の合同新入社員研修初日。 午後は外部の講師によるビジネス研修。 人事部の研修担当が舞台の隅に立ち、おもむろに講師の紹介を始める。 本が何冊出版され、累計発行部数がいくらで、こんなキャリアを積んで、現在はこんな肩書だと、いつの間に声高になって紹介に熱が入る。 どうやらそれなりに著名な人のようだ。 たいそうな紹介から満を持するようにその講師の人が舞台に上がってきた。 遠目から見る限り、髪は白髪混じりだが、短く整えられ、清潔感がある。 歳は50歳前後だ

          #10 洗礼 〜新入社員挨拶〜

          #9 合同新入社員研修 〜ムカつく女〜

          目の前に現れた全面ガラス張りの巨大なビルは日の光に照らされ輝きを放ち、圧倒的な存在感で僕の前に立ちはだかる。 子会社である自分の会社が入っているビルもそれなりに立派なものだが、別格だ。 さらに会社の敷地内に入ってもなお、指定された研修会場まではしばらく歩いかされるほどに広大な土地を所有している。 (こ、これが親会社の実力か……) 親会社の建屋と敷地面積で圧倒的な差を見せつけられた気がした。 今日から2週間、グループ会社全体での合同新入社員研修がいよいよ始まる。 研

          #9 合同新入社員研修 〜ムカつく女〜

          #8 技術部研修 〜救世主との再会〜

          1日ぶりに総務部のフロアにある自社研修用の会議室に戻り、無事生還できた事に思わずホッとする。 昨日の営業研修は散々な目にあった… 振り返るだけで嫌気がさす。 今日は気を取り直して、1日、技術部研修。 入社してから相次ぐ試練の日々に、今日だけは何事もなく終わってほしいと心から願うばかりだった。 そしてなにより、技術職で採用されている僕にとって、今後、実際に関わるであろう内容の研修に学ぶ意欲は今までの研修よりも断然に高まっていた。 研修のカリキュラムとしては、朝からみっ

          #8 技術部研修 〜救世主との再会〜

          #7 営業研修 〜修羅場〜

          入社4日目。この日は1日、営業研修。 朝から営業部のフロアに向かい、営業部長の田崎さんを訪ねると初対面で早速いじられる。 「お!来たな!たった1人新入社員!」 最速で僕の境遇を処理されたが、嫌な気はしなかった。 そして、営業部のフロアにある会議室で待っていると田崎さんと一緒に20代後半くらいの若い社員が入って来た。 「こいつが営業部の若手で高末!」 田崎さんは若い社員の肩に手を乗せながら話を始める。 「高末です!よろしく!」 「よろしく!ってお前も偉くなったな

          #6 自社研修(後編) 〜激闘〜

          10分間の休憩をギリギリまで喫煙所で過ごし、可能な限り煙を摂取してから急いでアジトである会議室に戻った。 見計らったかのように、会議室のノックが優しく鳴り、次の研修の講師を担当する執行役員の矢口さんが会議室に入って来た。 「よろしくお願いしますね。」 矢口さんの雰囲気通りの優しい声色がこれから始まる睡魔との激闘を一瞬忘れさせた。 「よろしくお願いします!この前の歓迎会はありがとうございました。」 「いえいえ!おじさん達で盛り上がっちゃって悪かったね!」 (それはた

          #6 自社研修(後編) 〜激闘〜