私も宇宙人
お昼も近くなったので、ランチをしようと通りにあるハンバーガーショップに入った。
一昔前のアメリカチックな内装で英語を話している外国人で賑わっていた。
今年5歳になる半分人間、半分宇宙人の息子も一緒だったので、
「2人です。子ども用の椅子はありますか?」
と決まり文句を一発決めて、定員さんから指定された席に座る。
2人席に向かい合う形で座り、メニューを見ながら何を食べようかと考え始めた。
チーズバーガー、いや、アボカドが入ったやつがいいな。うわー、バンズダブルか?
舞い上がるのも束の間、ほぼ宇宙人の息子がぐずりはじめた。
「うどんがたべたーーーーい。」
小さくおしゃれなスペースに響き渡る場違いな日本語。
やっぱり、コイツは宇宙人かもしれない。
「ほら、ハンバーガーが食べたいって言ったんじゃん。何食べようかな~。食べられるのあるかな~ポテト食べようね。好きだもんね。」
宇宙人の奇声を押さえながらメニューを探した。
あいにくこの店には子ども用の椅子はあるのに子ども用のメニューはなかった。
ふと隣に座る親子に目をやると、お父さんの膝に座った女の子の宇宙人が大人用の大きなハンバーガーにかぶりついていた。
やっぱりあれだとうちの宇宙人には大きいかな。でも、宇宙人と分けるのは自分の分が減るからイヤだな。
「おなかいっぱーい。」
隣の女の子の宇宙人の声だった。
「まだ半分も食べてないじゃないか。あ、チーズを残したらダメだよ。」
「だって、チーズ嫌いなんだもん!!」
「好き嫌いすると大人になれないんだぞ。」
じゃあなんでチーズの入ってるバーガー頼んだんだよ、いい大人が。子どもの好き嫌いぐらい把握しとけよ。っとツッコミを入れながらも、微笑ましい親子の会話にほっこりした。
「じゃあパパもアボカド食べないと。」
「…いや、パパはいいよ。」
「でも、私にはチーズ食べないと大人になれないっていうのに、パパはアボカド残してる!ずるい。」
いや、なんでお前もアボカドが入ったバーガー頼んでるんだよ。
入ってないやつ頼めよ。
「そうなんだ。そう、パパはアボカドが食べれない。そう、パパは大人になれないんだ。
誰がパパを大人だと錯覚していた?パパは大人じゃない。子どもなんだ。いや、宇宙人なんだ。
そうやって、成人したから大人。結婚して子どもがいるから大人。嫌いなものをうまく交わすのが大人。子どもに好き嫌いをいしないように説教するのが大人って決めつけられないんだよ。よくわからないよね。人間かどうかもどの尺度で決めるか、基準はないんだ。現に、パパは自分を人間だと思っているけど、ママはパパを子どもだと思っているし、パパを宇宙人の類いだと思っている。
子どもは宇宙人みたいだと子育してから思ったけど、俺らも宇宙人だったんだから、たまには意味の分からないことしたいだろ。好きとか嫌いとか関係なく、アボカドの入ったバーガー食べてみたいんだよ。」
「そっか。それで、パパはアボカド食べるの?」
「食べるわけないだろ。ヌルヌルとしていて味もないこんなやつ。」
「んじゃ、私もチーズ食べない。」
半分以上残った二つのダブルチーズバーガーとアボカドフレッシュバーガーをそのままに足早に店を出て行った。
「帰ろうか。」
私はそういいながら立ち上がった。
「ママも、うどん食べたくなっちゃった。」