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涼飇

本州最北端は風の町だ。
短い夏には偏東風(ヤマセ)が吹き付け、長い冬には偏西風が吹き荒れる。

今年も息子達を連れて義両親の住むこの町にやってきた。
ヤマセが続いて八月だというのに居間にはストーブが鎮座している。

漁師のお義父さんが海から戻ってくるので、皆で港へお迎えに行くことにした。

エンジン音が近づいていよいよ船体が見えるというとき
「俺も明日、じいちゃんと漁に出てみようかな。」
と上の息子がぼそりと言った。
「ほんだら色々用意せねばの。」
お義母さんの嗄れ声がヤマセに乗って潤って響いた。

彼は海の向こうに何を見るか。
涼飇は知っているだろうか。

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