ヨアキムという部下(カーンの逆襲)
スタートレックをご存じだろうか。
1966年頃にアメリカではやっていたTVドラマである。
物語は、23世紀、カーク船長をはじめとするエンタープライズ号の乗組員が5年間の宇宙探査において様々な惑星、エイリアンなどと出会う物語である。
カーク船長が登場する作品はTVドラマとⅠ~Ⅵまでの映画がある。
「カーンの逆襲」とはⅡにあたる映画の話であり、カーンとはカーク船長の宿敵なのである。
背景をざっと話すと、カーンという独裁者がいて、むかしカーク船長に懲らしめられて、とある惑星に追放されてしまう(ここまではTVシリーズ)。
何年後かにたまたまその惑星の近くを通りかかったカーク船長の仲間の船を乗っ取ってカーク船長に戦いを挑むというのが「カーンの逆襲」の物語である。
これ以降は「カーンの逆襲」ネタバレ注意!
カーンは何人かの部下とともに辺境の惑星に暮らしていて、彼らとともに船を奪った。船を奪ったことでカーク船長への復讐が果たせると考えたカーンはそのことで頭がいっぱいになった。
「今度こそあいつを葬ってやる」
そこへ部下のヨアキムという男がカーンに意見をするのである。
「船を奪って、ここから出られただけでもいいじゃないですか。我々は自由を手にした。それだけでカーク船長への復讐になったと思いませんか?閣下」
するとカーンは
「なにをいっているんだ!俺は復讐を果たすと言ったら果たすんだ!」
これにはヨアキムも逆らえず、ただ従うしかなかった。
奪った船で偽の救難信号を送信し、カーク船長をおびき寄せ、しばらく互角に戦う。戦っている最中もヨアキムはびくびくしながらカーンの命令通りに動いている。
だが、カーンたちは破れてしまう。
たくさんの仲間が死に、ヨアキムが息を引き取ろうとして最後に一言
「閣下の勝利を祈っています」
最後一人になったカーンはカーク船長たちを道ずれにして自爆しようとするのだけどあっけなく失敗。カーク船長の大勝利に終わる。
この映画を観て、僕は本当に重要な人物はカーンでもカーク船長でもなくヨアキムなんじゃないかと思う。ヨアキムのいうことにもっと耳を傾けていればカーンの仲間たちはどこかもっと環境の良い惑星で平和に、幸せに暮らせたんじゃないだろうか?カーク船長に出会わなくてもよかったんじゃないだろうか?
まあ、そんなこと言っていたら物語自体成立しないのだけれど。
話を日常生活に向けてみると、僕たちは、ひょっとしたらすぐ近くにいるヨアキムのような部下や友人の存在を今この瞬間も無視して己の道に暴走していないだろうか。または、かつてそのような存在を見捨ててしまったかもしれない。
改めて、決断をする前に立ち止まることの重要さ、仲間の意見に耳を傾けることの大切さを感じる、そんな深い映画でした。