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元彼からの影響で好きなものは、ブラックコーヒーとビールです。

「これ絶対、元恋人の影響でしょ」って思うもの、いろいろあるよね。わかりやすいのだと、音楽、映画、本、ファッションとかね。わたしが影響されたものは、題の通り。ブラックコーヒーとビール。


その彼はさ、年齢のわりに渋い人だった。毎日文庫本2冊を持ち歩いて、暇さえあればすぐ活字を欲するような人で。革製品をきれいに手入れして育てるのが好きで。たまに料理をするときは、わざわざエプロンなんかして味も盛り付けも凝りに凝っていた。休日はラジオを流しながら観葉植物のお世話をしていて、そんな姿が素敵だった。わたしが絶対しない、お洒落な過ごし方がデフォルトな野郎だった。


そんな彼がわたしに教えてくれたのは、ブラックコーヒーとビールだった。THE苦味。


わたしはむかしっからお子様舌で、わかりやすいおいしさを求めるんだけど、彼は苦味やコク、酸味を好んでいた。特に、薬味とか漬物を愛していた。マジで理解不能。わたしは恋人の好きなものを好きになる努力なんかまったくしない人間だから、彼のすすめる嗜好品なんて断固拒否していた。やだもん。おいしくないもん。

だから、コーヒーやビールを勧めてくる彼に「よくこんなもん飲めるね」と突き返していたんだけど。 



ある日、理由は忘れたけれど喧嘩しちゃったから仲直りのために、仕事帰りの彼とマックで落ち合うことになった。長めに時間をつぶさないといけないから、ガッと飲み干してしまわないように、全然飲めないアイスコーヒーを頼んだ。彼がくるまで2~3時間粘ってたはず。最初はまずくて手がのびなかったけれど、ちゃんと減らさなきゃという謎の使命感でちびちび飲んでいた。


『おまたせ。めずらしいね。コーヒー飲んでるの?』


顔を上げると愛しい彼。

「・・・コーヒーって、そこまでまずくないね。」



ひゃ〜〜〜〜!!わたし健気~~~~~!!


そんな流れでを飲める宣言しちゃったもんだから、彼は嬉しそうにたくさんカフェに誘ってくれるようになった。ビールも大体同じ。



『ビール、一緒に飲めるようになりたいんだよなぁ〜。そしたらもっと楽しめそう。」

なんて彼がいうから、「えぇ⤴︎⤴︎??」って嫌なフリしてニヤニヤしながら少しずつ飲めるようにした。わたし、可愛いね。やっぱりさ、人間は好きな人の好きなものを、好きになっていくんだろうね



それから、彼とは別れてしまったけれど、今でも飲み物はブラックコーヒー、お酒はビールの一択になっている。最初は完全に彼のための選択肢だったけれど、その後この2つは、大人になったわたしを癒してくれたり、逃げ場になってくれた。だから、教えてくれた彼には本当に感謝している。別れるときはいろいろあったけど、今もいろいろ思うことはあるけど。でもほんとにありがとうね。


そういえば考えたことなかったけど、元彼にはわたしから受けた影響ってなにかあるんだろうか。知る由もないけどさ。



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