【現代ファンタジー小説】祓毘師 耶都希の復讐(42)大量、殺人?
「ふん。……じゃぁ折角だから教えてあげる。
殺《や》ったのは私。依頼されたから処理しただけよ。私たちは悪い奴らをこの世から一掃しているの。それが使命なのよねぇ。
……だから今日は忠告。二度と邪魔しないで欲しいの。解ったぁ? 」
「あっあの男《ひと》はまだ加害者になっていないはずです! 」
(分かってないわね〜)「……何言ってるだかぁ……もう3人死んでいるじゃない。警察に捕まってないだけよ。このままだと被害者がもぉ〜っと増える、かもしれないじゃない。だぁかぁらぁ、依頼人のつよ〜い希望によって、処理した、ってことよ。分かるぅ? 」
「ま、まだ彼が、犯人だと決まっ」
「あのねっ」
遮るように口を挟む。
「あの男は人殺しなの! 間接的であってもね。……海外へ逃亡する可能性だってあるんだからぁ。だから依頼がきたの。
この力を信じてくれる、被害者の無念を晴らすのが、私の使命。悪人を一人でも減らすのが、私の仕事。
私はねぇ、ぜ〜ぇっ対悪人を許さないわけ。なのに、そんな悪人を甦らせるあなた方が、許せないのよねぇ」
「確かに世の中、悪い人もいます。でも人の命を勝手に奪うのは、おかしいです! 」
「はっ! あまちゃんね」
薄笑いと同時に、自然に相づちを打ってしまった。
「悪人は所詮悪人よ。犯罪者は放っておけば、いつかまた犯罪を犯すの。その度に、被害者は増えるのよ。そのくらい分かるわよね。
その抑止のために、私たちは動いているの。犯罪者を減らすことがなぜ悪いの!? どこがおかしいのよ!?
じゃぁ、あなたが甦らせたあの男が、また罪を犯したら、どう責任取るのよ! 」
「せき、にん? ……ちっ、違う。
そうならないために、警察や国はあるべき……力のある者が処理しちゃいけない」
(何様のつもり)「あなた、ほんとに分かってないわね。この力があるから被害者家族は、苦悩や心の闇から解放されるの。
法で裁かれない犯人、裁かれても納得できない被害者、まだ犯人も捕まっていない被害者の遺族、日本だけでもどれだけいるか分かってるの?
警察や司法で対処できない矛盾した法治国家、犯人の人権を尊重しろと騒ぐ無関係な学者や国民。……もう、うんざり。
私たちはその外で被害者家族のために闘ってる。新たな被害者を出さないために活動しているの。
これは今始まったことじゃない。代々伝わる湊家の宿命、祓毘師の使命なの。だから邪魔しないで! 」
強い口調が、女子高生を黙らせた。
「詭弁《きべん》」
彼女ではなかった。不愉快だった女の予想もしないコトバ。
腹の虫が騒ぎ始める。
「なっ? 」(詭弁、だと?)
「あなたの言っていることは、詭弁です。
言わんとしていることは理解できますが、純粋な場合のみ。あなたがた組織が行なっていることは、ただの連続殺人、大量殺戮です」
(大量? 殺人?! )「なっ、何訳分かんないこと言ってるの? どこが連続殺人なの? どこが大量殺戮なの? ……ふん、寝言は寝て言うものよ。ふざけたことを……私は純粋に被害者の」
「あなたこそ、分かってない……」
大人しくなったと思った女命毘師が、私の出番を遮ってきた。彼女のひ弱な可愛い眼は、真剣、いや怒りも含んだ鋭視に変わっていた。
「あなたの組織は、犯罪者を処理するだけじゃない。犯罪者に仕立て上げて処理してるの。不要ってだけで……それに、色んな方法で何の罪もない国民も、殺してる。
あなたは……ミナトさんは、それを、知らないだけ。……利用されてるだけ! 」
(りよう? )