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日本の製造業(FA)について


はじめに

私は2025年から新卒でITエンジニアとして働き始めます。そこで関わることになるであろう製造業について前もって知っておきたかったため、自分なりに情報を集め分析しました。今まで教えて頂いたことも含みます。
専門分野である人工知能ととても相性が良いと思い期待を抱いています。
専門的な知見が不足している部分もあるかもしれませんが、今後の成長のための勉強の一環としてまとめました。
この記事では、特に製造業におけるFA(生産工程の自動化)に焦点を当て、現状や課題をまとめています。

前提知識

ロボットには、大きく分けると産業用ロボットとサービスロボットの2種類があります。
産業用ロボット:工場などで使用されるロボット
サービスロボット:人々の生活を支援するロボット(ペッパーなど)
法律では、ロボット(定格出力80W超)との接触により生じる危険を防ぐため、安全柵や囲いの設置が義務付けられています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/pamphlet_140115.pdf
他にも人協働型ロボットというものもあり、名前の通り人と協働するロボットになります。こちらは特定の条件下で安全柵が不要とされています。

背景

日本は自動車産業の発展とともに、ロボットメーカーも成長してきました
https://globalxetfs.co.jp/research/japans-robot-dominance/index.html

需要

国内総生産における産業別構成比の2割を続けてキープしており、依然として大きな需要があると言えます。

引用元:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2015/honbun_pdf/pdf/honbun01_02_01.pdf
引用元:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2024/pdf/honbun_1_1_1.pdf

2022年時点で各業種の生産額は以下のようになる。生産額としてはサービス業に続き2番目に大きいです

2022年:生産額(2023年や2024年のデータは速報値や予測値のため、信頼性に欠ける可能性があると考え、2022年のデータを引用しています。)

日本の製造業の現状

産業用ロボットの大多数は大企業が利用しています。
産業用ロボットは主に大企業で導入されていますが、中小企業ではコスト面の課題から普及が進んでいません。
また社員一人あたりにかかるコストも大企業は福利厚生が充実しているため高く、ロボットを導入することで人との代替がしやすいそうです

設備の高齢化がG7の中で2番目に古く、最新設備の導入が遅れています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79268700U4A310C2EP0000/
設備が古い=生産の効率が悪く、最新技術を利用している機械に負けてしまう。設備が壊れにくいという見方もできますが、中国は最新設備の導入を進め、日本を追い抜きました。

実際に中国が日本のGDPを抜かした2010には都市部の固定資産投資(設備投資や建設投資の合計)は前年比24.5%増している

https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1905R_Q1A120C1000000/

→日本のモノ作りは強くなくなってきていると言える

Japan as No1と言われた時代があったがそれは過去の栄光となってしまっている。
日本ならではの技術も多くあるが、GDPという大きな部分では負けている。

引用元:https://ifr.org/img/worldrobotics/2023_WR_extended_version.pdf
圧倒的な中国のロボット導入率

日本のロボットメーカーは世界でもトップ。利用者は中国が多い

世界的なロボットメーカー(時価総額)

  1. ABB:16兆2884億円

  2. ファナック:3.90兆

  3. 安川電機:1.19兆

  4. 川崎重工業:1.08兆

  5. KUKA:5119億
    ※時価総額は2024/10/17のGoogleFinanceより

多くの日本企業の名前があり、誇らしかったです。
参考
https://blog.rflocus.com/industrial-robots/
https://sanmatsu.jp/article/detail21/

日本の製造業の課題

1.二重の人手不足

  • 労働力の不足

  • SIerやロボットエンジニアの不足

→人材育成が出来ていないため、FA(ロボット×AI)によって人手不足の解消を狙う。人材不足を解消するための人材が不足している。
この課題は少子高齢社会である日本においてますます深刻化してくると考えられます。

若い人が減りボリュームゾーンが40代以上となっている
出典:
https://www.populationpyramid.net/japan/1970/
出生率は右肩下がり
引用元:
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-01-07.html

2040年、出生数の推定は74万人とされていますが、現状のまま行くと70万人を切ると考えられます。2023年の出生数は72万となっています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240605/k10014471471000.html

2.要素技術の高度化

  • 各技術が深くなり、ハードとソフト両方の技術を持っている人が減っている
    機械を自動化するには、ハード(電気回路など)の知識、ソフト面(ROSなど)の知識両方が求められてくる。

  • 現場が分からない人の増加
    ソフト面は理解できるが機械に設置されているセンサーが分からない、内部の回路が分からない問題
    →日本企業の工場を人件費の安い海外に置いていたため技術の継承が出来ていない。現場が分かる年配の人と若いソフトができるエンジニアが協力することでスキルの継承を行うが、出来ていない。
    有識者のノウハウをデジタル化して継承することが進められている

3.IoT Industry4.0の波

  • OSSの流れ(日本のガラパゴス化)
    日本のロボットを製造している会社はROSに独自の言語を利用する傾向があり、操作の習得が難しく応用も利かせられない。

  • アジア諸国の追い上げ
    東南アジアは人件費が安いために工場があると考えられがちだが、日本の工場のレベルと同等またはそれ以上になってきている。製造業ではもはや人海戦術は行われておらず、工場自体を自動化し、現場は数人で日本から遠隔で工場を監視できるようになってきている。
    自動化の原因としては現地民の労働習慣の違いなどもあげられます。

4.人材育成の難しさ

  • 必要な知識が多い

  • メーカー主導の教育システム

    • 実際の機械の動かし方はスクールに行かないと習得ができない。また実務の行い方は教えてくれない

  • OJT現場の減少

    • 工場の海外移転に伴い現場を経験できる機会が減っている。有識者のノウハウ継承が出来ないまま引退してしまうと、1からもう一度ノウハウを貯めるところからやり直しになってしまう。

ロボット導入の課題

人手不足を解消し、作業も効率化してくれるロボットですが、導入にも高いハードルがあるようです。

1.導入コスト

お菓子ロボットくん

ここでは例としてラインから流れてきたお菓子を指定された場所に移動させるロボットを導入してみましょう。
ロボットアーム本体に200万、グリッパー(アーム)の作成に30万、お菓子を認識するカメラ、システムに300万など簡単に500万円を超えてしまい、中小企業にはとても厳しいです。他にも制御システムやインフラ整備、保守メンテナンスなどを考えると頭が痛いです。
中小企業では多品種少量生産の工場も多いため移動式のロボットの開発が進められているそうです。

引用元:https://rsi.jrcnet.co.jp/products/robot_system/robogie/

上記のように、ロボットメーカーからロボットを購入しても、工場に導入するためのその他の物はついていません。グリッパーから自作する必要があり、とてもコストがかかってしまいます。近年ではグリッパーがパッケージ化された物もあるようですが、利用方法によってアーム部分は変わるので自作することは避けられなさそうです。
仮にロボット本体が50万円とすると200,300万円ほど4倍程度の導入コストを見ておいたほうが良いそうです。

先端にアームがついていないことが分かる
引用元:https://www.fanuc.co.jp/ja/product/robot/f_r_cr.html

2.人材不足

内容はかぶってしまいますが、ここでも人材不足が出てきます。
ロボットの導入には多数の技術と工程が必要であり、1社では対応が難しい。なので複数社で協力をして導入を進める必要があります。
お菓子ロボットの例を用いると、まず工場にいって分析し(導入ができるか?適しているか?)要件定義、機器の選定、ソフトの開発、設備の設置、テストなどとてもたくさんの工程があります。
またロボット導入後、社内に面倒を見る人材がいない問題もあります。

3.情報不足

ロボットを導入したい会社にもロボットについてそれなりに理解してもらう必要があります。何も分からないと数百万円を請求されて、ぼったくられているのではないか?という疑いも生まれてきてしまいます。
また無理難題を要求されることもありえるので適切な情報提供が必要になってきます。

まとめ

日本のFAにおける課題は人手不足技術継承の遅れだと感じました。人手不足解消のための人手が不足している問題は早急に対処する必要がありそうです。
さらに、技術の高度化により、現場でのハードウェアとソフトウェアの統合が求められていますが、これに対応できる人材の育成が追いついていません。工場の海外移転により、実務経験の蓄積が減少し、若い技術者へのノウハウの継承も困難な状況です。
また、設備の高齢化や中小企業における導入コストの高さも、日本の製造業の競争力を低下させる要因となっていると思いました。

これらの課題に対応するためにハードウェアの知識を持つベテラン技術者と、ソフトウェアに強い若手技術者の連携を強化し、ノウハウの共有を進める必要があります。さらに独自の言語ではなく、OSSの技術を活用し、世界基準に適応させていくことが必要だと思いました。また積極的にAIやIoT、遠隔操作や自動化を進めることで、生産効率と競争力を向上させていくことが課題解決の一手になると思います。
FAがすべての問題を解決するわけではないことも忘れないでいたいです。
「世界に誇る日本の技術」を未来へ繋ぐためには、若手技術者の育成と現場技術のデジタル化が重要という結論に落ち着きました。

ここまで上げてきた話題は今までも頻繁に議論されてきたと思います。その中でなぜ最新設備の導入が進まないのか?ガラパゴス化から脱するにはどうすればいいのか?などを考えて解決していくことエンジニアには求められると思います。そんなエンジニアになれるように努力していきます。

おまけ

5G

低遅延、大容量、多接続。技術が進むことで個人よりビジネス面でのメリットが大きい。IoTなどは扱うデータも多く、リアルタイムの制御が求められる作業にも向いている。

世界に誇る日本の技術

日本の半導体製造装置メーカーは30%前後のシェアを維持し続けているそうです。AIに使用されるGPUにも半導体が使用されています。NVIDIAの半導体を製造しているTSMCで使用されていると嬉しいですね。
https://toyokeizai.net/articles/-/716871
他にも絶対に緩まないナット、トイレ、ホッカイロなどたくさんあります。
https://sotexglobal.net/post-234/

他の分析レポート
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/014_04_00.pdf

2024/10/18記事作成

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