[詩]「雪深い国の人々は皆リアリストなのだ」
積雪は もはや背丈を超え 雪雲が空を覆っている
一昨日も昨日も今日も明日も ここは薄暗闇の国
天気予報には太陽のマークなど付くことが無く
このような毎日が永遠に続くと言われれば
そうかも知れないと信じてしまいそうな灰色の国
色彩を削ぐ雪雲の上では太陽が眩しい光を放ち
また スバルやシリウスやM四二が凛と輝き
夜空を巡っていることは知っている
しかし そのことは頭の中で理解しているだけで
それらを見たことがなく 有るということを証明する手立てもない
実は 本当は それらは無いのかも知れない
さて この国の人々は心の奥底に鬱を抱えて生きている
いや 心が鬱で出来ている
その鬱を表に出さぬために 僕等は感情の揺れを作為的に抑制する
そして 宗教染みた諦めというものに全てを帰結させる
春に若葉が萌え 夏にカンカンと太陽が照り付けても
僕等は はしゃがない
なぜならば 秋が来て 間もなく また
あの暗闇の季節が必ず戻ってくるのだから
また 僕等は笑わない
鬱の後には躁が来て危うい位に高揚しても良さそうなものであるが
鬱の後には底なしの鬱が来るのだ
だから僕等は いつでも能面のように表情を変えず
乾いた視線で 表面の奥のもう一つその奥を見ようとするのである
根拠のない期待を決して抱かぬリアリストとして