[詩]「無に還りたい粒子たち」
僕等は どうして今ここに存在しているのだろう
僕等が生きているこの時代は
この時空が生じてから滅するまでの間の
途中経過の一切片である
生物としての存在意義は自己複製の完遂であり
多分に主観的であり因果律に支配されている
そうした生物としての人間が脈々と組み立ててきた観念や思想などは
独り善がりな主観の産物であり
宇宙の出現から消滅までの尺度で見れば
客観性を欠き何の意味も持たぬ徒労と断ずることができる
一方 物質としての存在意義はと言うと
客観的に考えれば
意義など無いというのが答えであろう
無から生じた僕等の体を構成する粒子達は
無に還りたくて 対となる反物質の出現を待ちわびている
でも それらの反物質は親宇宙に置き去りにされたので
決して現れることはない
対の無い寂しい粒子の集合体である僕等は
だから 基本的に孤独で
満ち足りることが無いのだ