終のステラ
読了直後
マジで良かったです、何から言えば良いんだこういうの
・血縁
まず、機械と人間扱ってテーマが遺伝というのが良い。二人にはもちろん血縁関係がなくて、父親と娘の関係性は後から定義付けられる。
後から定義付けられる分、ある意味で血縁という理由付けされた親子よりも、親子であるといえるのかもしれない。
・種の交代
アンドロイドを人間として愛すのではなく、人間とアンドロイドを完全に区別しながら、無償の(親子)愛を与えているの、最も美しい「種の交代」の瞬間だったんじゃないだろうか。
「衛星」を選択しなかったことで、人類の衰退に歯止めはかからない。一方フィリア(Ae型)は、同じAe型を助け、繫栄する。
これは、一度「人間は人間、アンドロイドはアンドロイド」と突き放したからこそだと思う。
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・他解釈
Ae型の目的を「大人を大人たらしめるため」かと思ってた時の文
・コロナ渦
多分このゲーム作られたのコロナ渦だと思うんですが、そう見ると、「遠くから全ての支援が可能な衛星」と「すべては助けられないが、Face to Faceで支援できる運び屋を続ける」の2択も、あぁ…という感じがする。
・リアリティに関して
この描写がChatGPT発表前にあったことにビビった(発売日が22年9月、chatgptサービス開始が22年11月)
(追記)腐っても情報系なのでこのあたりの描写について語りたい。
現在、ChatGPTを始めとした生成AIが話題だが、実は詳細な原理が判明していない。ある一定の学習量を超えた時に急激に性能が向上したそうだ。
本来、言語モデルはモデルのパラメータを調整し、ある程度の文脈を理解させる方向で研究がされていたが、GPT3は次の単語を単純に予測するのみで大成功した。(かなり意訳なので、詳しくは専門の方に聞いてください)
まさしく「言語的理解力はなく、統計的に傾向を抽出しているだけ」なのだ。
また、原理が判明していないということは、「 Chatgpt(AI)による課題解決に対して、人類が理解することができない」ということだ。
現在の人工知能分野では、Chatgptを利用した結果をまとめるものが大半で、原理についての研究が少ない。原理を知らないままに利用が加速している。
そのことに危機感と嫌悪感を抱く教授もいる。
というかこの文章はその教授の授業を聞きながら書いてる。終のステラやった後に人工ニューラルネットワークの話聞くの気持ち良すぎるね
・ビジュアルノベル自体の感想
(追記)もう少し整えたもの
若干重複あるけど許してね
アンドロイドにもある意味で遺伝が可能
子供を残すことが、「人類がもっとも平等に未来に託す権利」だと思っているが、未来に託す方法は他にもあるよと言ってくれた気がする。物書きがこれを言うのも良いね。
合理性から無償の愛に、価値観に変えても良い
結局理性じゃなくて感性で動いて正解のこと、あります。感性で動く時は「まぁ俺ロボットじゃないし」と理由付けてることある。
アンドロイドを人間と扱わずそのまま尊重する
シーンとして衝撃だったのは銃突き付けるところ。終のステラ(もしくは書き手)の特徴が顕著に出ていそう。アンドロイドと人間といえば、「お前はもう人間だ(泣きアニメ)」の単純なイメージしかなかったので…
このシーンはある意味で、衰退していく人間に対して、アンドロイドが繁栄していくことを決定づけ、種の交代を象徴する場面なんじゃないかとも思う。
フィリアを全て人間だと言って、2人で逃げていれば、成長(赤い目)はなく、フィリアが旅しながらアンドロイド(と人類)を助ける未来はなかった。
死ぬ時に言い切ったって言える美しさ
価値観には響いたのはこれ
死の概念がめちゃくちゃに地雷なんですよね、だって続きがないから。死ぬ間際には、もっと生きてぇよ!って暴れながら人間の醜さを存分に表したいと思うほどには地雷。
なので、全てをやり遂げて、静かに眠るように死んでいくジュードになんか感じるものがあった
まだ言いますけど、アズマが引退する時、全部やったの好きなんですよね。騒がしくか静かにか、の違いはあれど、死ぬまでに全部やって後悔ないようにするのが正解。そうわかってるのに、見ないフリしてる。
この言い切った美しさを、アンドロイドで達成することに、地球上の人間だけが尊いモノではなく、全ての生物が等しく美しいと言っているようにも見えた。
おまけ:個人的なストーリーまとめ
(何も見ずに書くことで、自分の印象に残った部分がわかるかなと…)
舞台は文明の衰退しつつある世界ジュードは残る文明と文明の物流、情報を繋ぐ運び屋という職についているある依頼で人間にそっくりなアンドロイドを運ぶ依頼を任される。人類の偉業になるという。ジュードは過去に家族を捨て、仕事を選んだ。仕事だけが自分の意義で、無償の愛は、自分の意義にはもはや出来なかった。アンドロイドのフィリアを運ぶ、いや旅する中でわかってくる。フィリアには心があること。どこまでも人間らしいこと。嫌悪したいほどに全ての人類を救いたいという習性があること。その習性はジュードにとって理解できないものだった。理想論でしかなかった。旅の終わりには、ジュードはフィリアに思い入れてしまった。(しまった。なのだろうか)この旅の目的は依頼者の老人にフィリアを運ぶことだ。フィリアも行きたくないと訴える。2人で逃げるのは自分の仕事を、騙しに騙して連れていくのも自分の心を裏切る。思い入れたのが間違いだったのだ。フィリアに銃を突きつけ、運び屋とモノの関係を再定義する。フィリアは人間ではない。老人の偉業は、フィリアを永遠にAIと人類を繋ぐ衛星とすることだった。人類のためにはなるが、それがフィリアにとっての幸せかどうか。その頃にはもう、人間ではないが、アンドロイドとして、フィリアの幸せを尊重したくなっていた。ジュードは依頼を拒否し、老人を打つ。仕事の誇りを捨て、フィリアを選んだ。非合理的だった。老人の仕込んだ反撃用のマシンにより残りは少なかった。それからはより一層フィリアに運び屋の弟子として、1人でも生きられるように、後悔のないようにたくさんのことを教える。最後の時が近づく。言い残したことはほとんどなかった。フィリアはもう立派に弟子をやっていた。いや一つあった。「娘だと思って良いか?」フィリアは人間ではないが、もはや娘だった。知性はあるし、言い残すことがないほど全てを吸収して立派になった。フィリアは旅で自分が見捨ててきた人間たちを救えるほどに立派になっていた。フィリアの理想論はもはや理想論でなくなっていた。衛星を選択しなかったため、人類の衰退に歯止めが掛かることはないだろうが、フィリアは、旅で会ったらアンドロイドも、人類も助けられることだろう。それで広めていくだろう「私の父親はジュードです」と。