無題。
空に昇るのは一番星。
月は未だその半身を隠して
信号は赤く光ったまま。
僕はスタートの合図を静かに待っている。
空気は刺すように冷たく
僕の感覚を鋭敏にさせる。
もはや、誰に劣るなんて考える余裕は無く
ただ、スタートの合図に反応するだけ。
ただ、自分の全てを出し切るだけ。
まだ終わって無い。
終わってなんか無い。
何度も自分に言い聞かせて
此処に立っているんだ。
ボロボロの体で
必死にしがみついているんだ。
さあ、始まるよ。
空を切り裂くスタートの合図。
反応する体。
僕はまだ止まらない。
僕があの日見た、夢の向こう側へ。