辛ラーメンを食べた
辛ラーメンを初めて食べた。カップのやつだ。
わたしにヒロアカを貸してくれたその人は、今度は辛ラーメンをお勧めしてくれた。キムチ味(オレンジのパッケージ)の方が若干マイルドだというのでそっちにしようと思っていたのだけれど、スーパーに並んでいなかったので仕方なく標準の赤の辛ラーメンを買った。
辛いものが特に好きなわけではない。キムチ好きな家で子ども時代を過ごしたが、わたしだけはキムチを食べなかった。食べられるようになったのは、大人になってからだ。
真っ赤なパッケージは、見るからに辛そうだ。というか、辛ラーメンという名前からして辛い。これはきっと、とても辛い。
やかんでお湯を沸かしながら、ビニールを剥がし、所定の位置まで蓋を開ける。ご丁寧に粉末スープの袋も真っ赤だ。開けてみれば、当然ながら粉本体も赤々している。そこで、賢いわたしは思い至った。辛ラーメンを辛ラーメンたらしめているのは、この粉であると。その証拠に麺は健全なクチナシ色である。つまり、粉の量を調整すれば辛さを抑えられる!
徹底的に赤い辛ラーメンに圧倒されてすっかり自信を失ったわたしは、粉末スープを半分だけ入れて、いや、より正確には半分よりもやや少ない量を入れて、沸騰したお湯を流し込んだ。
念には念をと、お口直しに白米とオクラのお浸し、それからコップに並々とジャスミン茶を入れていざ実食。
最初の一口から、間髪入れずに辛かった。舌がびっくりするのがわかった。二口目も辛かった。何度食べても辛かった。これで粉末スープ半分である。倍量だったらどうなっていたのか。身震いする。
その人は、辛ラーメンは確かに辛いがうまいのだと勧めてくれた。真っ赤なパッケージにも、「うまからい」の文字が踊っている。この激しい辛さのノイズをかき分けてどうやってうまさを探し出したらいいのかわたしにはわからなかったが、言われてみれば麺はおいしいような気がした。チリチリの麺を咀嚼していると、昔食べたインスタント麺を思い出した。
わが家でラーメンといえばインスタント麺だった。外食もほとんどしないから生麺は食べたことがなくて、ラーメンはチリチリしているものだとずっと思っていた。チリチリはあんまり好きじゃなかった。だから、大人になってラーメン屋さんでラーメンを食べて、ああラーメンって美味しかったんだと知った。
あんまり好きじゃなかったチリチリラーメンだけれど、本当に久々に食べたから懐かしくておいしく感じた。
しかし辛かった。舌が悲鳴をあげている。ご飯を頬張っても、舌を余計に刺激するばかりで麺を啜っているときと同程度の辛さに襲われる。オクラはオアシスとして機能してくれた。唇を舐めたらヒリヒリした。もはや辛いのは舌だ。辛ラーメンが舌に乗り移っている。
何かに急かされるようにして完食して、唇が紅を引いたように赤くなって、鼻水が垂れた。
辛かった。唇の痺れがまだ止まらない。
あと、心なしかお腹が不穏である。
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