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#11 モチベートするわたし|思考の練習帖

2つ前の #思考の練習帖 で、目指すべきは子どもたちが主体的に生きられる環境づくりだという結論に至った。

さて、主体性を尊重するということは、彼らが動き出すのをただ手をこまねいて待っていればいいというわけではない。
これまでの人生でたくさん大人に振り回されてきた彼らにとって、人生のハンドルをほかでもない自分が握るということのハードルはとても高い。ずっとその手に握ることを許されなかったのだ。いまさら「さあどうぞ」なんて言われたって、困ってしまって当然である。

それでも取り戻さなくちゃいけない。
彼らの人生を代わりに生きてくれる人はいないのだ。

生きる力を取り戻すためのヒントを探してみた。

『図解 モチベーション大百科』

著者である池田貴将氏のことは何も知らないし、本を買ったのもわたしじゃない。今日ぼんやりとリビングに座って本棚を眺めていたら、たまたま目が合った。半年前から確かにそこにいたはずなのに、今日初めて手に取った。
今のわたしの問いに答えてくれそうだと直感したのだ。

モチベーションの源流

人を動かすものは、究極的には次の6つのニーズに収斂されるのだそうだ。

①安定感

今までと同様に生きていたいというニーズ。生きていくために必要ですが、安定感を求めすぎると他人をコントロールしたがるようになります。

②変化(不安定感)

今までとは違う体験をしたいというニーズ。現状を変えるために必要ですが、変化を求めすぎると生命が危機にさらされていきます。

矛盾する2つのニーズの間を、わたしたちはしきりに行ったり来たりして生きている。安定感が満たされると冒険をしたくなるし、変化の波に揉まれるとまた安定のやすらぎを求めたくなる。だからニーズは途絶えない。わたしたちは動き続ける。

③重要感

特別な存在でいたいというニーズ。競争に勝って満たそうとする人もいれば、他人を否定することで満たそうとする人もいます。

④つながり

周囲と一体感を持ちたい、誰かに愛されたいというニーズ。根っこには家庭環境があり、共通項が少数派であるほど満たされます。

「重要感」と「つながり」もまた、ある意味では対になっているのかもしれない。自分とは何者かというアイデンティティを確立する過程で、誰にも真似できない唯一無二の存在でありたいと願う一方で、誰かと同じ安心感に包まれていたいとも願う。

⑤成長

自分のレベルを上げたいというニーズ。

⑥貢献

誰かの役に立ちたいというニーズ。

マズローの5段階の欲求のピラミッドのてっぺんにある「自己実現欲求」に該当するニーズだろう。自らの成長や、誰かの役に立っているという実感によって自分を満たしたいという願い。

2大ニーズにフォーカスする

これらのニーズについて、著者はこのように述べている。

誰もが6つのニーズを持っていますが、人によってニーズの強さが違います。
人にはそれぞれ「2大ニーズ」があり、その2つのニーズを積極的に満たそうとしながら生きています。

2つである理由は説明されていないけれど、そういうふうに仮定して子どもたちを観察してみるのは面白そうだ。

先に⑤と⑥はマズローのピラミッドのてっぺんにあると言ったように、それらはかなり次元の高いニーズだ。自分の人生のハンドルをしっかり握ってアクセルをがんがん踏み込んでいる人たちの話。だから今回は脇に置いておこう。
だとすれば、①から④。

①安定感 あるいは ②変化

学校教育のなかで、あるいは児童福祉の年齢制限のなかで、子どもたちは否応なく変化を求められる。小学校では集団の中に適応することを促され、できることのレベルがだんだんと引き上げられるし、18歳になったら施設を出て独り立ちすることを要求される。それがしんどくて、不確定で不安定な未来を遠ざけたくもなるだろう。

その反対に、集団生活ゆえのいろいろな制約や、気ままに生きていけない閉塞感から飛び出してやりたい衝動もあるだろう。いま・ここの生活や自分という存在を信じられなくて、受け入れられなくて、愛せなくて、ぜんぶ投げ出してしまいたくもなるだろう。

③重要感 あるいは ④つながり

たった一人の自分を誰よりも何よりも一番に思ってくれる人の存在を信じられなければ、あるいはそれを永遠に失ってしまったならば、重要感のニーズはずっと満たされないままだ。代替品で満たそうとするけれど、それが本当によくできていたとしても、本物じゃないとわかっているから虚しいだろう。それはわたしたちの愛情が偽物だということじゃなくて、どんなに思っていても敵わないのだ。

人生の最初に、人間は他者との一対一の愛着形成を学ぶ。それを元手に人間関係を広げ、他者との比較のなかで自己を見出していく。最初にこじれた愛着を修正していくのには大変な労力を要する。それだけ欠乏感や飢餓感は大きいし、ニーズは膨れ上がるだろう。ときに、まともに向き合っていられないぐらい。でも目を逸らしたって、ニーズはたしかにそこにある。

相対するカテゴリー(①と②、もしくは③と④)の中で大きく揺れ動いているケースもあるだろうし、それぞれのカテゴリーから1つずつ突出したニーズを持っているようなケースもあるのだろう。

モチベーションにつなげていく

こういうニーズは彼らを生きづらくさせるバリアだ、という認識が強かった。だけど、ニーズはモチベーションの源流なのだ。
適切に導くことができたら、生きるモチベーションが溢れ出してくるということなのではないか?
半信半疑だけど、もしそうならばこれは大いなる希望だ。

彼らは、生きようとしているのだ。
モチベーションが足りないのではなくて、わたしたちが引き出せていないだけ。ニーズをよく観察して、モチベーションの出口を示してみよう。

明日から試してみたいこと(メモ)

手始めに、本のなかで紹介されていた理論を試してみよう。

焦点の移動
人の考えは「理由」をたずねると強化され、目的をたずねると軟化する。
「なぜそんなふうに考えるの?」と聞く代わりに、「そう考えることがあなたにとってどう役に立っているの?」と聞く。今の自分にとって本当に有用なものなのかを自問する機会になる。

道徳的行動
行動を叱り、存在を褒める。
人格否定はダメだけど、褒める分にはよい。

自信過剰バイアス
「わかった?」と聞く代わりに「できそう?」と聞く。
「わかった?」と聞かれると咄嗟に「はい」と答えてしまうが、わかっている保証はない。いったん相手に想像する猶予を与えることが大事。

泥棒洞窟実験
一緒に楽しいことをするよりも、協力が必要な場面を共有した方が、信頼関係が芽生えやすい。危機的状況を乗り越えることが愛着形成に作用するのと同じ理屈なのだろう。

妥当性の論理
自分へのデメリットを伝えると「結果の論理」が働きやすくなる(「これまで◯◯をしなくても問題なかったのだから、今後もしなくてよいだろう」)
他者へのデメリットを理由に教化を試みると、「妥当性の論理」が働きやすくなる(「自分が◯◯しないことで他者に不利益を与える可能性があるから◯◯しよう」)。

今日はここまで。

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