#17 変革するわたし|思考の練習帖
ついに分厚いあの本に手を出した。
入山章栄氏の『世界標準の経営理論』である。
帯には「こんなに分厚くても11万部突破!!」とある。ほんとだよ。厚みは4.5センチ。
最初から最後まで読む勇気はないけれど、目次をパラパラとめくっていくと面白そうな章がいくつもあって、さっそく気になるところから読んでみたらさくっと読めた。一つひとつの章が短くて完結しているので、つまみ読みに最適だ。
そんなわけで、今日は「リーダーシップの理論」の章を。
大事なのは、個別の関係性と主体性
ここまでの #思考の練習帖 で、どうやって仕事のパフォーマンスを高めるか、どうやってリーダーシップを発揮するかということをあれこれこねくり回しては考えてきた。子どもたちの支援という業務において基盤となるのがそれぞれの子どもとわたしの間の個別の関係性であること、そして支援そのものが意味をもつのは子どもの主体性を引き出せてこそだということを、とても強く認識するに至ったのだった。
そして不思議なことに、リーダーシップという文脈のなかでもまた、まるきり同じ「関係性」と「主体性」というキーワードが浮かび上がってきたのだ。
リーダー・メンバー・エクスチェンジ(LMX)
これは、1970年以降のリーダーシップ研究で導き出された理論で、リーダー個人の資質とか行動ではなく、「リーダーと部下それぞれの関係性」に注目するもの。
リーダーに期待をかけられることで部下がそれに応えようと高いパフォーマンスを見せ、リーダーはそれを高く評価する。逆もまた然りで、リーダーの期待が低ければ部下もそれを感じ取って意欲が低下するだろうし、部下のパフォーマンスが低ければリーダーは評価を下げる。したがって、リーダーの部下のコミュニケーションの質を改善することでLMXを高め、チームのパフォーマンスを高めることが目指される。
ここで重要なのは関係性だ。
上司とうまくやれているか、同僚と良いコミュニケーションが取れているか、ということが仕事のパフォーマンスや精神衛生に影響を及ぼしているという実感があるので、とても納得感のある理論である。
なんというか、これってリーダーシップに限定されないもっと普遍的なことだと思うのだ。わたしたちは一人では生きていけないのだから、周囲との関係性が良いことがあらゆるパフォーマンスに良い影響をもたらすし、関係性が破綻すればいろんなことが回らなくなる。
わたしは子どもの支援をする仕事だから、みんな口を揃えて関係性が大事だと言うけれど、大人の同僚同士になると途端にそれがなおざりになってしまう。当たり前に必要なことだから、個人の責任で努力をすることを求めてしまう。構造の問題があるかもしれないのに、見えなくされてしまう。
トランザクショナル・リーダーシップ(TSL)とトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)
こちらは1980年代以降に登場した二つの概念。
これはLMXにおけるリーダーの態度とほぼ同義。
リーダーはビジョンを掲げるが、部下はそれをただ盲目的に追従するわけではなく、自立性を持つ。リーダーによる知的刺激や個別のコーチング・教育を通して、フォロワーをみずからの意思でリーダーに追従させるのだという。
シェアード・リーダーシップ(SL)
そして2000年代に登場したのが、リーダーシップを執るのは特定の一人ではなく、「グループの複数の人間、時には全員がリーダーシップを執る」と考える新しい理論。一人のリーダーからその他のメンバーへという「垂直的な関係」ではなく、それぞれのメンバーが時にリーダーのように振る舞って影響を与え合うという「水平関係」のリーダーシップである。
これは、「関係性」と「主体性」という二つのポイントを融合した最終形態のように思われる。チームの一人ひとりが主体性をもち、相互に影響を及ぼし合う関係性が機能している。これがおそらく、わたしたちの組織の目指すべき場所なのだろう。
ビジョンはあるか
関係性と主体性があればオッケー、ではない。
TFLの基本要件は「ビジョン」だが、わたしが思うにこのビジョンこそが主体性の源流なのではないだろうか。他者にビジョンを持つことを委ねてしまったら、自分がどこに向かって行きたいのかがわからなくなってしまう。わたしはこれをするのだ、というビジョンを明確に掲げるからこそ、それを妨げるものを取り除き、実現するものを取り込んでいくという意思決定が可能になるし、意思決定をするからこそ他者に変化を及ぼしうる。
わたしのビジョンを定期的に点検するのはもちろんのこと、チームの仲間たちにもそれを問い続けることを自分に課していきたい。
今日はここまで。
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