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『紛らわしい人々』 二人(三人)会話劇


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作   :骨髄
ジャンル:コメディ
名目  :二人劇台本
頭こんがらがるかと思った。。テンポ感とテンションの差で緩急をつけて読んでみたい、勢いだけの台本。果たして、笑える内容に仕上がっているだろうか。楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。
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放課後、帰宅する道中での会話。


鈴木   :あいつ、彼女できたんだって。
塚本   :へえ。
鈴木   :まさか、あいつに先を越されると
      は!
塚本   :どんまーい。
鈴木   :くそぅ……。
塚本   :……。
鈴木   :……。
塚本   :ところで、『あいつ』って誰?
鈴木   :え?
塚本   :え?
鈴木   :「おまえ」、知ってるだろ?
塚本   :う、うん?僕、知ってる?
鈴木   :お前どころか、この学年の人間なら
      知ってんだろ、あんな有名人!
塚本   :なに、そんなに有名なの?
鈴木   :入学早々噂になったじゃん!!イケ
      メンが来たって!!さてはお前、モ
      グリか!?
塚本   :モグリじゃない。多分その時期僕、
      インフル拗らせてた。
鈴木   :そうだったわ……。ていうかそもそも
      さ、お前よくあいつと顔合わせてん
      じゃん。なんでわかんねえの?
塚本   :え、うそ。
鈴木   :ほら、昨日もお前、数学の教科書借
      りに来たじゃんか。
塚本   :うん。あ、話盛り上がってたのにご
      めん。
鈴木   :ああ、いやそれはいいんだよ。じゃ
      なくて、あん中にいたでしょ!あい
      つ!
塚本   :ええ?知らないよ〜
鈴木   :はあ!?おま、それ、ショックだぞ
      あいつ!
塚本   :そんなこと言われても、あの中にい
      た鈴木の友達はおぜん君しか知らな
      いって
鈴木   :はあ!?逆になんで「ソイツ」が出
      てくんだよ!?
塚本   :逆になんでその子以外を知ってると
      思ったの?
鈴木   :あああ、もう!先週のタコパにも呼
      んだだろ?
塚本   :あ、おいしかったよ。ありがとう、
      また呼んでね。
鈴木   :ったりめーだろ、ばか。じゃなく
      て!メンバー、覚えてるだろ?
塚本   :うん。
鈴木   :「うん」じゃあ、なぜあいつを知
      らないんだよ!
塚本   :えええ!?
鈴木   :「えええ!?」は、こっちだバ
      カ!
塚本   :ちょっと。さっきから「バカ」っ
      てなに?僕の方が鈴木より成績い
      いんだけど。
鈴木   :も〜〜!なんなのこいつぅ〜〜!
塚本   :ていうか、さっきから「あいつ」
      ばっかで本当にわかんないんだけ
      ど。ちゃんと名前を教えてくれな
      い?
鈴木   :……は?なに言ってんの?
塚本   :本名。苗字は?
鈴木   :……「おまえ」。
塚本   :え、何……?僕?
鈴木   :ちげえ、お前じゃねえ。苗字、「お
      まえ」っていうの。
塚本   :お、「おまえ」?
鈴木   :「おまえ」。
塚本   :「おまえ」?
鈴木   :「おまえ」。
塚本   :……か、漢字は??
鈴木   :下駄の「緒」に「前」。
塚本   :……下の名前は?
鈴木   :「あいつ」。
塚本   :漢字は?
鈴木   :ひらがな。
塚本   :あ、そ う なんだ。
鈴木   :え、何、その反応。
塚本   :あのさ、「あいつ」くんの苗字だけ
      どさ。
鈴木   :ああ、珍しいよな。
塚本   :うん、それはそうなんだけど。僕が
      思うに、「あいつ」くんの苗字っ
      て、「おまえ」じゃなくて「おぜ
      ん」って読むんじゃないかな?
鈴木   :……なわけ!俺、あいつと二年一緒
      にいんだぞ?
塚本   :僕、今年の美化委員、緒前くんとペ
      アなんだ。
鈴木   :あ、え、そうだったの?
塚本   :うん。それで、最初の顔合わせの時
      に自己紹介で「おぜん」って……
鈴木   :嘘だろ!?
塚本   :一応、確認してみる……?
鈴木   :あ、ああ。

緒前   :もしもーし、どしたー?
鈴木   :お前って「おまえ」じゃないの…
      …?
緒前   :んんん、どゆこと??
鈴木   :だから!お前の苗字って、「おま
      え」じゃなかったのか!?「おぜ
      ん」なのか!?頼む違うと言って
      くれ!!
緒前   :声でっか(笑)。何、やっと気づ
      いたの?
鈴木   :嘘だああああああ!!
緒前   :あっはっはっは、やっぱり黙ってお
      いてよかった!漢字に弱い鈴木、お
      もしろくて好き〜
鈴木   :俺が二年間共に過ごしたあいつは誰
      だったんだよ!
緒前   :さあね(笑)。ーーごめんね〜すぐ
      終わるよ!ーーじゃ、彼女待ってる
      から切るよ。また明日ね〜 

 ーーブツっ 

鈴木   :あ、あいつ〜〜!!許せない!!ず
      っと俺を騙してたのか!!
塚本   :鈴木が間違えてただけでしょ。そう
      いえば、タコパの時、もう一人鈴木
      の友達いたじゃん?ハーフみたいな
      可愛い女の子。
鈴木   :ああ、「ソイツ」のこと?
塚本   :そうそう。名前は?
鈴木   :「ソイツ」。
塚本   :あ、「ソイツ」?
鈴木   :うん、「ソイツ・オゼーンヌ」。
塚本   :「オゼーンヌ」……「おぜん」……
      似すぎでは?
鈴木   :ミドルネーム入れると「ソイツ・ル
      イ・オゼーンヌ」。「ルイ」とか
      「ンヌ」とか入ってるくせにアイツ
      ドイツ人だってんだ、フランス人じ
      ゃねえのかよ紛らわしいにも程があ
      る!!
塚本   :いやそれ以前になんで鈴木の周りは
      代名詞の人間しかいないの?
鈴木   :ほんとだよ!お前こそ、そんだけ濃
      い顔しといてなんでドイツ人じゃ無
      いんだよ、塚本どいつ!!
塚本   :実際ドイツ人からもよく間違えられ
      るけどね、僕は系図正しき日本人な
      んだよ。不思議だね、鈴木こいつ。
鈴木   :紛らわしーー!!


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