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水面を眺めに、初夏の洞爺湖へ


6月、季節休をいただいたので旅に行くことにした。海外に行くことも考えたけれど、今は穏やかな時間を過ごしたかった。ぼーっとしたり、考え事をしたりする時間が必要な状況だった。そういうとき、僕は海や湖、大量の水のある場所に行きたくなる。水の近くでは1人で安心していられる。

そこで旅先で浮かんだのが、以前から惹かれていた洞爺湖。関東が梅雨の中、あちらは初夏の陽気のようなのも決め手だった。

そんな初夏の洞爺湖への旅の記録を、数多くの水面の写真とともに。

5:14、最寄りの駅で見た美しい空。幸先が良いと思った。

札幌から洞爺湖へはバスで2時間ほど。普段移動では眠らないタイプなのだけど、うとうとして30分ほど眠ってしまった。目覚めて車窓を見てみると、いつもとは違う美しい景色が至るようなところにあり、好きな音楽を聴きながら、窓の外を眺めてバスに揺られた。

北海道は、まぶしいほどの新緑の季節

宿の最寄りである、洞爺湖水の駅バス停に到着。到着したのは17時頃だけど、夏至に近いのでまだまだ真昼のような明るさ。

湖までのアプローチに、気持ちが昂る。

「楽園」という言葉が浮かんだ。爽やかな風に揺られる木々。ゆたかに広がる湖。そして見渡す限り、誰もいない。聞こえるのは波の音と、虫の鳴き声だけ。 しばらくの間、こんな場所に出会えた嬉しさを噛みしめながら、湖を眺めた。

そして、今回の宿である「チャシバクINN」にチェックイン。入ると素敵なオーナーさんが迎えてくれた。
ここは、いつか洞爺湖に行こうと思ったきっかけのひとつである、miiさんの素敵なnoteを通して知った宿。行くならここに必ず泊まりたいと、営業日に合わせて休みをとって予約した。飾っている花、本棚に並ぶ本、すべてが感じがいい。

部屋もとても快適で、素敵なしつらえをしていた。生花が飾ってあるのが嬉しい。コンパクトなシングルルームだけど、1人には十分で、部屋にはお風呂とトイレが別でついていた。そしてここは本当に湖の前にある、湖畔まで徒歩0秒の宿。「これ以上ない宿だ。」と思った。

シャワーを浴びてスッキリしたあと外に出ると、一匹の猫に出会った。

とにかく気持ちのいい場所。ここであと3日間も過ごせるなんて嬉しいな。

どこにいても、とことこと歩いてそばに来てくれる猫ちゃん。とても人懐っこい。かわいい。優しい人にいっぱい出会ってきたんだろうな。

長い間、一緒に湖を眺める。ベンチに座ると隣に座ってくれて嬉しかった。
少し撫でずにいたら、離れたところにいた二人組の方のところに走っていって撫でてもらっていた。これからも色んな人に撫でてもらって、あたたかくして過ごしてね。

まろやかになっていく湖
18:41、段々と深まっていく水面の青色
空の青


洞爺湖に浮かぶ中島


19:31

日が完全に落ちる前の、なんとも言えない、空と水面の色。魅惑的な景色に心を奪われ、暗くなるまで湖を眺めて過ごした。こんな贅沢はない。

平日なのもあって、近くのお店は軒並みお休みだったので、セコマでごはんを買ってお部屋で食べて、すぐに眠りについた。


翌朝、4:20頃に起床。朝の湖を散歩するために早起きしたけれど、前日の朝も早かったので難なく起きることが出来た。そして外に出たらあの水面が広がっていると考えると、寒い朝の布団から出るのも簡単だった。

朝の湖


湖畔沿いを歩く。湖のある風景の美しさに、何度も足を止めながら
4:45、陽が昇ってきた


陽が差すと景色は一変した。朝日に照らされる洞爺湖が幻想的。

時間をかけて歩くうちに、浮見堂公園に到着。こちらは緑が豊かないい公園だった。

いつまでもいられそうなベンチ

旅では、いつもでは見逃してしまうような景色に気づくことが出来る。新鮮な目線、心持ちが感性を広げてくれる。

昨日ずっと座っていたベンチ、いい場所にある。

そして宿に戻ってきたのが、6時頃。もう十分ってくらい美しい景色を見たのに、またこんな時間。

お部屋に用意があったお茶の中からハーブティーを選んで淹れる。外は寒かったので、あたたかいお茶が染み渡る。

朝食はお部屋で。フルーツの練りこまれた焼きドーナツ、いちご、そしてコーヒー。ドーナツはもちもちですごく美味しかった。

朝ごはんを食べた後も、目の前の湖に出てゆっくりする。湖が目の前なので、ハードル低く部屋に戻ったり、外に出たり出来るのが嬉しい。
10時頃にチェックアウト。おふたりが優しく送り出してくださった。必ずまた来よう。大切な人にお勧めしたい、素敵な宿でした。


道南バスに乗り洞爺湖温泉へ向かう。車窓から見える景色がずっと綺麗。

洞爺湖温泉街から見る、洞爺湖。奥に見えるのは羊蹄山。こちらは先ほどのエリアとは全く雰囲気が変わって、観光地的なエリア。人は多かったけれど、あたたかくて、風通しが良い空気感がある。


洞爺湖の真ん中に浮かぶ、「中島」に向かうために観光船に乗る。


中島は支笏洞爺国立公園の一部でもあり、島には散策路やトレッキングのルートがある。博物館で入山手続きをしてから、森へ踏みいる。

神秘的な緑の世界。
湖を眺めていた時とは違う種類の、野生的な自然を感じる。

最後のフェリーの時間が間も無くだったので、短時間で森から出て船へ。もう少し森に居たかったな。次はちゃんとした装備をして、島を一周しよう。

感じの良いスタッフさんがいるアウトドアショップ、ZERO DAYで買いものをしたりしてから、2日目の宿にチェックイン。

客室からの景色。この辺で一番安いし、湖近いしと思って取ってみたら想像以上の絶景で驚いた。温泉もついていたしラッキーだ。ひとまず温泉に入ってビールを飲もう。

部屋に差し込む陽が綺麗。

ノートを取り出して日記を書いたりしながら、部屋から湖を眺める。湖が美しすぎて日記を書くのは捗らなかった。

宿を出て湖畔の公園へ。西日で空が赤く染まりはじめる。

湖畔の公園では、アジア人の観光客の方が浴衣で写真を撮ったり談笑したりしていて、平和な空気感。

その美しさに感動していたところ、空を見上げると綺麗な月がのぼっていて思わず「うそだろ。」とつぶやいた。なんて良い日に来たんだろう。最近は、運に恵まれているな。


20:00頃、花火が上がった。陸ではなく、モーターボートからあげる花火。湖上を猛スピードで走りなら、いたるところから花火が上がる。あのお仕事、ものすごくアドレナリン出るんだろうな。
ひとり旅には慣れっこだけど、部屋から1人で花火を眺めていたら少しさみしい気持ちになった。お祭りは誰かと分かちあいたいものだなと思う。


4:57

翌朝、早朝にも関わらず部屋にはつよい光が差し込む。今日は夏至。


すがすがしい、朝の散歩
今日もきれい

湖をもっと近くで見てみたいなと思い、はじめて手漕ぎボードに乗った。漕ぎ方が全然分からずに波に流されていると、グラサンをかけた係員のおじさまが電動のスワンボートで追ってきてくれて、漕ぎ方を教えてくれた。慣れるとすいすい進めて気持ちがよかった。

まだまだ見てみたい景色や、行ってみたいお店があったので、最終日は自転車を借りて洞爺湖を一周することに。約40kgの平坦な道のり。

木々の隙間からたおやかな湖が見え続ける。角度によって見え方が変わるので、つい色んな場所で立ち止まってしまう。

次はカヌーに乗ろう

段々とお尻がいたくなってきたけど、道のりが平坦なので気持ちよく走ることが出来る。自転車で走ると、街のまた新たな魅力が見えてくる。

約半周して、初日に宿泊した、洞爺湖水の駅のエリアに到着。洞爺湖に来るきっかけのひとつとなったお店に行くためにここに戻ってきた。

写真は、初日の夕方に撮ったもの


くらしの商店「toita」。何かの拍子に見つけてからそのお店の佇まい、丁寧な企画展やイベント、言葉から溢れる感じの良さからずっと気になっていたお店。すこし緊張しながら入店し、当時行われていた木工作家の木工飛世さんの展示のスプーンを眺めていると、店主さんがフランクに話しかけてくださった。
とても優しい方で、洞爺湖の街のこと、商品の話など色々伺うことが出来て楽しい時間だった。また会いたい人が増えたことで、またいつか洞爺湖に来ようという気持ちが強まった。

購入した木工飛世さんの木のスプーン。数あるスプーンから一番自分にフィットするものを選んだ。持ち手のカーブが特徴的。

帰ってから愛用している。手に、口に馴染む。

それから「yucana」でランチをして、エルトーヤでコーヒーを飲んだ。このエリア、素敵なお店が多くて穏やかですごく気に入った。つぎ来る時は「たまたま書店」さんの営業日に合わせてまた来よう。

この旅、最後の目的地へ。旅に出る前、洞爺湖について調べているときに、「月浦」という地名を見てビビッと来た。もしかして、と思って調べるとやっぱり映画「しあわせのパン」の舞台になった場所だった。


10代の頃に見て大好きになった映画。その美しい景色と、チャーミングなやさしい登場人物に癒されて、いつかこんな暮らしがしたいと思っていた。影響を受けやすい僕は、その映画を初めて見てすぐにカンパーニュを焼いてみたな。そんな前から洞爺湖に惹かれていだんだなと嬉しい気持ちになった。

ここはぜひ行ってみたいと、舞台となった景色を見に月浦に行くことに。

陽が照っている中、急激な坂を登る。そうして登るうちに、月浦にある「ハーバルランチ」に到着。到着した途端に汗が吹き出て止まらない。
その姿を恥ずかしいなと思いながらも「入れますか?」と聞くと、快く迎えてくれ、「坂のぼってきたの、大変だったね〜、ここは涼しいからゆっくりしてね。」と風の通るテラスに席を用意してくださった。とてもやさしい。

ハーバルランチは、絶景の丘の上にあるハーブの農園。栽培だけでなく、ハーブティーなどの販売や、ハーブをその場で収穫しアロマウォーターやハーブソルトなどをつくる体験も出来る。お店の方もみなさま優しく、心が落ち着く。

僕は自分で農園から好きなミントを収穫してつくる、ノンアルコールモヒートをつくって飲んだ。暑かったのもあって、とんでもなく美味しかった。ミントが体の中にも爽快感をもたらしてくれる。風の通る気持ちのいい場所で飲んでいたら、心身ともに軽やかになった。旅の終わりにこんな素敵な場所に出会えるなんて、良い旅だな。

お礼を伝えてお店を出たあと、少し丘を登り、しあわせのパンの舞台になったエリアへ。そうそうこの景色!と気持ちが高揚する。

今はあの映画のような世界よりも、もう少し刺激的な世界で生きたい気持ちが強まっている。それでもあの頃も今も変わらず自分の心に持っていたいのは、この湖のような穏やかさだなあなんてことを考えながら眺めた。


そして坂を降り、出発地であった洞爺湖温泉に到着し、湖畔一周を達成。疲れたのでそのまま日帰り温泉に行き、札幌への帰路についた。

ぼーっとしつつ、考えごともしたいと思っていた旅だけど、景色に夢中であまり何も考えずに過ごした。そんな時間もたまには良いかもしれない。おかげで帰ってきた今、心身の調子はいい感じだ。

洞爺湖。自然も、人も。爽やかな風が吹く居心地の良い土地だった。また帰ってこよう。次は冬に来るのもいいかもしれない。

こうやって旅をして、また帰りたいと思う場所が増えていく度に、生きやすくなっていくような気がする。

次の旅もたのしみだな。


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