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イリノテカンには便秘対策も重要?
え?イリノテカンって下痢>>>>便秘でしょ?
その通りです。副作用としては下痢の頻度の高い薬剤ですよね。でも、下痢を起こさないための便秘対策という視点も大切!イリノテカンの下痢の原因とともに見ていきましょう。
イリノテカンによる下痢の種類と対策
前提として、まずは副作用と決めつけずに発現時期や併発症状から他の原因がないか考えてから対策に入りましょう。下痢の場合、感染症の可能性もありますので、安易に止瀉薬を使用するのは危険です。
①早発型
発現時期:投与中~24時間以内に起こるもの
原因:イリノテカンによるコリン作動性
併発しやすい症状:発汗、鼻水などコリン様症状
点滴中から汗や鼻が出て、お腹がグルグル言い始める・・・というのが典型例。ただし、すべての症状が出るとは限らず、1つの症状だけのこともあります。また、点滴中は大丈夫だけど、帰宅中に症状が出始めるケースもあります。
対策としては、原因が「コリン作動性」なので「抗コリン薬」になります。点滴時にアトロピンやブチルスコポラミンを投与するケースが多いですね。どちらの薬剤を用いるかは医療機関により異なる印象です。もちろん「抗コリン薬」なので、前立腺肥大や閉塞隅角緑内障などの禁忌疾患がないことを確認の上、提案しましょう。
また、点滴で抗コリン薬を投与してもそんなに半減期は長くないですから再燃してくることも。その場合は自宅でも対応できるように内服のブチルスコポラミン錠を頓服で処方してもらうとよいと思います。
②遅発型
発現時期:投与翌日~1週間前後(書籍、文献により若干異なる)
原因:イリノテカン活性代謝物SN-38による粘膜障害
併発しやすい症状:特徴的なものはないが、腹痛は多い印象
便秘対策が重要なのは、この遅発型の下痢に対してです。イリノテカンは肝臓でSN-38に変換された後、グルクロン酸抱合されて胆汁経由で腸管に排泄されます。その後、腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによって脱抱合を受けると再びSN-38となり、腸管の粘膜を障害することで遅発性の下痢を発現すると考えられています。
つまり、便秘だと腸管内のSN-38がスムーズに排泄されず粘膜障害を起こしやすくなってしまうのです。そのため、治療開始前のお通じの状態を確認し、便秘症であれば先手を打っておくことが重要です。また、元々便秘症でなかったとしても、イリノテカン投与時は必ず5-HT3受容体拮抗薬を投与していますので便秘になる可能性はあります。お守りとして酸化マグネシウムを持たせておくのも一手でしょう。
発現機序の詳細や、遅発性下痢に対するその他の対策はこちらのサイトが分かりやすいのでご参照ください👇
5-HT3受容体拮抗薬による便秘は別記事でまとめているので、一緒にご覧いただけると嬉しいです👇
まとめ
イリノテカンによる下痢は、原因と機序を考えることで対策が変わってくる典型例だと思います。点滴後数日は便秘だけど、その後に下痢になるというケースの場合は便秘解消も視野に入れてみてくださいね。
下痢は体重減少のリスクもありますし、外出制限に繋がってQOLを低下させてしまうことも・・・。患者さんの困っているポイントも併せて聞き取っていきたいですね。