がん種について患者さんに質問するときに気をつけていること
最近は病院側からの情報提供も増えつつありますが、がん種についての記載は少なく、薬局においてがん種情報を正確に把握するのは依然として難しいように感じます。
ただ、そもそも薬局で「がん種」を確認する必要はあるのでしょうか。保険調剤だからとか処方鑑査のためとかド正論はいったん置いておき、なぜ確認するのか、知り得た情報をどう活用するのかについても考えてみたいと思います。
がん種を確認する理由
①患者さんのことを知るため
これから治療で何かあったときに相談してもらえるパートナーの1人でありたい。だからこそ、何の治療をしているのか共有してほしい、患者さんのことを知りたいという想いがあります。そのため、「確認したい」というより「教えてほしい」という気持ちです。
ですが、薬局にそんなこと期待していない患者さんが多いのは事実。常日頃から薬局薬剤師の仕事について社会にもっと知ってもらう努力が必要だと思いますし、1人ひとりの患者さんへの対応の積み重ねが薬局薬剤師の印象に繋がっていることを意識して働く必要があると感じています。
②薬のこと以外で注意すべきことを考えるため
副作用管理をするだけであれば、正直、がん種の情報がなくても使用している薬剤さえ分かれば問題ありません。ですが、私たちは疾患そのものが与える影響も考慮しながらお伝えする内容を考えているはずです。身近な例でいうと、同じ痛み止めが出ていても、頭痛と腰痛ではお話する内容が違うはずです。がんにおいても同じです。同じ消化器系でも、例えば以下のようなことを考えます。
大腸がんだから腸閉塞の症状にはより気をつけておきたいな
胃がん術後だからダンピング症候群にも注意したいな
膵臓がんだから血糖値が上がりやすいかもしれないな
とくに抗がん剤は副作用が多いため、何か有害事象が起きたときにも、これは薬剤性?原疾患の影響?など原因の考察にも役立ち、より適切なアドバイスへ繋げる可能性が高まると感じています。
確認する際のポイント
①「がん」という言葉を使わない
「何がんですか?」とは私は絶対に聞きません。「がん」と言われること自体に精神的苦痛を感じる方もいますし、薬局だと周囲に聞こえるリスクも否定はできないからです。代わりに「どちらの治療ですか?」だったり、レジメン等の情報である程度絞れる場合は「胃ですか?大腸ですか?」のように選択肢を設けて聞くこともあります。
②がん種から注意したい情報を伝える
がん種の確認に限らずですが、「なんで聞いたの?」と患者さんが思わなくて済むように、聞いた理由がわかるような言葉を添えるようにしています。大腸だったら「お通じはどうですか?」、胃だったら「お食事の量はどうですか?」のように、「あ、だから聞いてきたんだ」と患者さんに思ってもらえるような会話を心がけています。このとき、何か意味のある情報を伝えなければと身構える必要はなくて、「聞いて終わりにしない」という姿勢を見せることが大切ではないかと思っています。
まとめ
色々書きましたが、がん種を教えてもらうことは患者さんと向き合う1歩のような気がしており、大切なのはテクニックよりも「自分に自信をつけること」なのではないかと感じています。途中にも記載しましたが、副作用管理はがん種情報がなくてもできるので、まずは薬について話せることを優先してよいと思います。そして、がん種を確認することを目的にするのではなく、患者さんの治療のパートナーになることを目的にすれば、がん種についても会話できるようになってくるのではないかと思っています。
ちなみに私が「確認する理由」を考えるようになったのは、病院薬剤師に「薬局ががん種を知る必要ある?詮索じゃない?」と言われたことがきっかけでした。(そもそも論、適応分からないまま保険調剤してはいけないという正論はあるのですが)同業者ですらそういう風に感じる仕事の仕方になっているんだな、とも思わされたのです。これからもただの形式ではなく、意味を持って質問していることが患者さんに伝わるように気をつけていこうと思います。