![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160066142/rectangle_large_type_2_3d0ab45f36731128576a2711019f4647.png?width=1200)
咲くときも散るときも片ときも
色づき始めた、楓の木のそばに佇んでいると
こゝろがゆるみ、穏やかな空気に包まれる。
普段の暮らしの中で知らない間に
あちこちが緊張したり
固くなったりしていたからだやこゝろが
その木やこの日和に倣うのだろうかと思う。
すっかりやわらかくなって心地よさが
戻ってきた気がする。
楓と並んでいたさくらの木は
葉がほとんど落ちていた。
暑さが長引いて木の水分が減ってしまったんだなぁ。
葉を落として自分を守るんだなぁ。
かなり高齢と映る、草刈りをしていた男の人が
ぽつねんと、こぼす。
それでも誰かに聞いてほしいような度合いの声は
わたしに向けているに違いなく
草刈機のエンジンを止め
少し油の匂いのする軍手を付けた手で
さくらの木を指さした。
ここ数年はさくらの葉が色づく前に
落葉してしまうねぇ。
あの木もそうだねぇ。
春にあれほど湧いたさくらの花。
この木はよく知っているのだろう。
生きるための術を自ら学び、身につけて
また来年の春には湧こうと、支度を始めている。
花と同じように葉の色がどんな風に
わたしのこゝろにはたらくのか思ってみた。
楓の葉からも葉を落としたさくらの木からも
大切なものをちゃんといただいているということ。
何かを守るとはそういう感じだということ。
ほわっと 。。◯
赤いのと橙のと黄緑の、ほわっと包んで
持ち帰った。
大切なものを守ったよ。なにげないことだけれど
やさしい気持ちになった。
![](https://assets.st-note.com/img/1730376401-vZz68XNKa1tSFf4dxVLl297I.jpg?width=1200)
これから赤くなるよ、黄色くなるよ。
空を見上げても山を見渡しても
冬が近づいている気配がする。
燃えるように色づこうと静よりも動さえ感じるほど
霜や雪に立ち向かう潔さを見ると
わたしの気持ちも幾分、きりりとなるよう。