花 きみのめ
ふらっと外に出てみた。
夜が近づいてきて
無数のこうもりが
ひららと飛び交う時間で
月は見えるか見えまいかの
気を持たせる時間に。
華やかな花を楽しんだ路地でも
ふっと花が途絶えることがある。
今日、季は小満。
草木花々、生き物もすべてのものが
育ち、命がみなぎる頃。
上の方でもなく横の方でもなく
地に一番近い場所で命は満ちていた。
花は雪をちりばめたように可憐で
誇張せずひっそりと
寄り添うように咲いていた。
それは、ごく小さな景色だったが
この瞬間に出会えたことが
とても愛おしかった。
帰り道の余力が
残っているあたりで引き返す。
人は自然と共に生きてきたから
花の中に居ればこゝろが落ち着く。
ご機嫌な笑い声が聞こえて
自販機の明かりが艶っぽく映えて
余地やら余白の在処が
消えゆくと同時に寂しさと疲れも
すうっと――
心地よい風がからだに当たる。
子の綿毛布を整え、掛け直したら
バギーの向きを変えて帰路についた。
澄んだひとときを思う。
また、一日が終わろうとしている。
*****
何でもないように見えるけど
何でもないってわけではないよ、花って。
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