花 ふるさと
思い出を重んじるのはいつでも人。
花が咲けばその花を懐かしみ
その花を思い出せばあの日あの場所あの時を
思い出し、そして誰かをも思い出す。
もしかすると花も人と同じように
持っているのではと思えてしまう、思い出を。
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コンクリートに囲まれた庭のない住居に暮らし始めて
数十年になる。
単純で自由だけれど、ふと寂しいなと思う。
わたしが暮らしていた実家はコンクリートとは無縁で
ぬくもりにまみれていた。
当たり前のように庭と繋がった畑があり
大小さまざまな花が咲き野菜が育ち
モグラが顔を出すやわらかな土はいつも
ぽこぽこと盛り上がっていた。
同じ土からいろいろなものが育つ庭は
幼いわたしにとって宇宙一の庭だと思えても
不思議ではなかっただろう。
ふりそそぐ夏の日差しの中
明るく咲くひまわりもそこで一緒に暮らしていた。
わたしの背丈ほどあるひまわりと並んで立つ。
その光景を庭隅から見つめていたのは母だった。
「大きくなったねえ」
どちらだったのか。
大きくなったと見えたのは。
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花を覚えた最初の記憶はひまわりだった気がする。
まるで幼友達のようなひまわり。
「これからはわたしと一緒に暮らそう」
わたしのこゝろに初めて迎え入れた家族以外の存在。
わんわん泣いている日もぴりぴり怒っている日も
わたしのこゝろで咲き続けている。
ささやかだろうと思う。ささやかだから
どうしようもなく、枯れてしまう時がある。
そんな時はお日さまの光と水とやわらかな土だけで
こと足りる、あの宇宙一の庭へ向かうことにしている。
宇宙一の庭に帰るとひまわりはまた
少しずつ元気を取り戻し持ち堪えてくれる。
生まれ育った場所に帰ることで花として花らしく
永らえる術を知っているかのように。
思い出を持つ花。 そうだと思う。
「誰のこゝろにも咲いているだろう花は
どのような思い出に支えられているのだろう。
ふるさとに咲くささやかな花―」
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花はいつでもあふれたものを掬い
こぼれたものを拾ってからだの中に
抱えているのですね。
控えめでも凛としていても同じように
花にもふるさとがあるから。
宇宙に咲くひまわり。
今から47年前の1977年7月14日、はるか宇宙に
日本初の気象衛星「ひまわり」が打ち上げられました。
現在は9号機まで上がっているそうです。
日本やアジアを宇宙から見守り続けてくれています。
明日は
ひまわりを思いたい日。
ふるさとの、宇宙の、こゝろのも。