蒼空の歌謳 -5-
ガツンッ ドスッ ビシッ
くぅ・・・・・・本日四回目の頭に対する強力な攻撃。ひょっとして、俺の頭が悪いのはこのせいなのか?
俺はいつも通りの拳骨、白夜はまっすぐ振り下ろされたチョップを、フォノは右手中指による強力なデコピンをヴィア先生から受けた。
白夜と俺は同じように上半身を傾けながら頭を抱え、フォノは額をさすっている。痛てて。
「ったく・・・・・・隣村の援軍に行ったら別の魔物がこの村を襲う。
その魔物を倒すためにリーンとフォノは勝手に武器を取り出して戦い、白夜は無謀にも歌謳を使用して倒れる。
さらにはその魔物が跡形もなく消え去ってしまう・・・・・・か。
状況は大体分かった。報告ご苦労。しっかし・・・・・・」
俺達三人の様子を一通り眺めた後、先生は後頭部をワシワシかきながら大きくため息をついた。
「どうしてお前ら三人は、俺がいないときに限っていつも面倒なことを引き起こすんだ?」
俺は白夜を白夜はフォノをフォノは俺に、お互い顔を見合わせる。うん、二人とも大分顔が引きつってるな。
俺達三人は今、学校で先生と対面中だ。外はすっかり日も暮れて、夕方なんてとっくの昔に走り去った感じがする。
教室の中では、俺達は教壇に一番近い生徒用の机に三人並んで座り、先生は教壇を背もたれにして腕を組みながら俺達にを眺めている。
・・・・・・非常に気まずい状況だ。
こんな複雑な状況になったのは俺達が勝手に魔物と戦ったのもあるけど、その後の出来事の方がもっと大きな原因なんだよな・・・・・・。
それは、白夜が『切り札』を中心に突如現れた陣に触れた途端のことだった。
「!? 二人共、そこから離れて!!」
フォノのいつもの勘が、突然何かを感じ取ったらしい。だが、遅かった。
フォノが叫んだその瞬間、白夜の触れた部分から陣が青白い光を放ち出した。
「白夜っ!!!!」
「くぅっ・・・・・・!!!」
光を一番強く、まともに見てしまった白夜は思わずその場に右手をつき、左手で両目を押さえながらうずくまる。
しまった!! 俺は急いで白夜の側に走った。
白夜の属性は、物質そのものを司る『元』。『火』などの四大属性、『氷』などの下級属性には絶対的相性を持っている。
だが、その代わりに『光』や『闇』、『音』など物質以外のものには極端に弱い。
白夜の属性の相性だけは、しっかりと覚えている。結構簡単に覚えられるからな。
例えそれが術ではなくても、白夜には都合の悪い攻撃だ。
白夜の側にたどり着き、同じように姿勢を低くする。
「白夜!! だいじょ・・・・・・」
うずくまった白夜の肩に触れた途端、目の前が真っ白になった。
あの時、光を見たのはほんの一瞬だった。その後は・・・・・・奇妙な光景が目の前に映し出された。
磨き上げられた、表面が鏡のように反射した石が繋ぎ目なく続く大きな広間
その奥には、床と同じような石で作られた玉座
そこに佇んでいるのは・・・・・・
「・・・・・・ン・・・・・・リーン・・・・・・リーン!! リーン!!」
俺が見たのはそこまで。いくら思い出そうとしても、そこから先は分からない。
気が付くと、フォノが俺の両肩をがっしりと掴みガクガクと揺さぶっていた。
うぁー・・・・・・目の前が上下に揺れてる。天と地がひっくり返りそうだ。
頭の中がボーっとしてて・・・・・・寝起きの時の似たような感覚がやってきた。
おそらく、これはフォノに思いっきり揺さぶられたのも大きな原因だな。
「フォノ・・・・・・か。白夜は?」
「・・・・・・これから、確認するつもりだったの」
俺の意識が戻ったのを確認して、フォノは少し表情を緩めながら答えた。
フォノはそのまま左を向いた。俺も向いてみると、側に先程と同じように目を押さえている白夜が居た。
よろよろと一度立ち上がり、もう一度白夜の側にしゃがむ。フォノは俺の後ろから様子を窺う。
「白夜、大丈夫か?」
「・・・・・・うぅ」
左腕を肩にのせ、そっと話しかけてみた。よし、今度は何も起こらない。
白夜は呻くだけ。よく見てみると、押さえている指と指の間から見える目は普段の大きさよりも少し大きく開き、瞬きもせずに硬くこわばっている。
それに、何処かを見るわけでもなく、目の焦点が合っていない。
この状態だと、白夜の目には俺やフォノは映っていないみたいだな。声も聞こえていないみたいだし・・・・・・。
「・・・・・・か・・・・・・あ・・・・・・さま・・・・・・?」
さっきまで呻き声しか発してなかった白夜が、誰に話しかけるわけでもなく、ポツリと呟いた。
かあさま? ・・・・・・母親のことを思い出したのか?
いや、でも確か白夜は両親の記憶を失っているはずじゃ・・・・・・まさか。
「白夜、お前もしかして記憶が・・・・・・」
「うぅ・・・・・・ん? あれ、リーン?」
目を押さえていた左手を放し、白夜は俺とフォノを交互にゆっくりと見た。
普段の口調に戻って、どこかきょとんとした話し方だな。
やたら目を擦ったり、瞬きの回数が多いのはさっきの光の影響がまだ残っているみたいだな。
「白夜、大丈夫?」
「あ、うん。もう平気~」
フォノの問いにのんびりと答え、白夜はよろよろと俺の肩を借りて立ち上がろうとした。
が、足が身体を支えきれないようで、すぐにガクンとバランスを崩し、前のめりに倒れそうになる。
俺は急いで白夜の肩を持ち、何とか支えてやった。フォノも反対側から白夜を支える。
今白夜は俺とフォノにしっかりともたれかかっているはずなのに、ずいぶんと軽い。
そういえば、白夜は俺と同じ体型をしているけど、俺の半分より少し重い位しか体重がないんだっけ・・・・・・。
おそらく、白夜が半分精霊の血を引いているのにも原因があるんだろうな。
そのおかげかフォノもあまり無理をせず肩を持つことが出来る。
こんな白夜を、たまにフォノが羨ましそうに見ることがあるけど・・・・・何故だ?
「へへ、ごめんねぇ・・・・・・ハァ・・・・・・。
半年振りに使ったから、体が耐えられなかったみたい・・・・・・」
「白夜・・・・・・ごめんなさい。あんなに無茶させて」
「いいよぉ、大丈夫・・・・・・フゥ・・・・・・」
大丈夫って、必死に胸を押さえながらせわしく呼吸を繰り返して、額にたくさん汗をかいてるお前の言える言葉じゃないぞ・・・・・・。
「しっかし、さっきコイツの近くから出てきた光は一体何だったんだ?」
俺は呆れた顔で先程強烈な光を放った陣を見る。もう、さっきの光はほとんど消えている。
まあ、相変わらず倒された『切り札』は伸びたままだし・・・・・・ん?
「・・・・・・白夜、フォノ」
「・・・・・・フゥ・・・・・・ん~、どうかしたのぉ?」
白夜とフォノは、目線を俺の見ている先に合わせる。
その先には、さっきから伸びきったままの『切り札』。だが、今までとは明らかに何かが違う変な感じがする。
そんな感じがするが・・・・・・一体何が違うかまでは俺には分からなかった。
カチリッ そう思った瞬間、水が一瞬にして固まるような音が耳に入った。
そのままヤツから瞬きをほとんどしないで見ていると、ヤツの真っ黒に焼けた体全体が徐々に砂色に変わり始め、最後にはヤツの体全てが砂のようになった。
パキンッ、パキンッ ヤツの体の丁度真ん中あたりに大きなヒビが入る。ヒビはそこから徐々に大きくなり、いつの間にか網目のように体中を包んでいた。
「・・・・・・何が、起こっているの?」
「・・・・・・この魔物の何か・・・・・・大事なものが、抜けているみたい・・・・・・」
確かに、白夜の言う通りかもしれないな。
上手い例えかどうかは分からないが、水を含ませた砂を丸めた団子みたいなものを炎天下に置いて、徐々に中の水分が蒸発して団子がパサパサになっちまうような感じにも見える。
その場合、大事なものは水分。だが、やつから抜けているのは水分ではない気がする。
色々と考えながら眺めているうちに、ヤツの体がゆっくりと、陣の中に沈み始めた。
「なっ・・・・・・!?」
一言を言い終えないうちに、ヤツの体はあっという間に全て陣の中へと沈んじまった。そして、その陣そのものも。
そのまま、俺達はぼんやりと何も考えることが出来ずに、何もかも消えた場所を眺めていた。
しばらくすると門の方から色々な声が聞こえてきた。騒がしいぐらいだな。
そっちに首だけを動かしてみると、先生達が帰ってきた。
その後、俺達は必死になって消えた魔物やオーク達がやってきたことを手早く説明したが、手早く全ての説明が終わったのがついさっき。
俺だけでは状況が詳しく分からないかつ説得力がないため、白夜とフォノが時々口を挟んで詳しい説明を入れてくれた。
何も説明しないままだったら、村の門をメチャクチャにしたのは俺達三人ってことになっちまうからな。
勘違いされたままだと、俺達は口だけでは表現できないようなとてつもなく恐ろしい罰を先生から受けることに・・・・・・うぅ、考えただけでも顔から血の気が引きそうだ。
「いや先生、偶然ですよ偶然。そんな俺達三人が集まる度に問題が起こったら、この村の平穏は保てませんよ」
「そうか? 確か、二年前はフォノとお前が白夜が行方不明になったって騒いで村の外で魔物から逃げ回りながら俺に助けを求めたな。
二年半前、三年前、三年半前、三年前もだな。半年に一度は毎回お前ら三人が村中を巻き込む大問題を引き起こしてるぞ。
俺が村に来て以来、お前らが揃うとろくなことが無かった」
先生は組んでいた両腕を緩めて、右手の指を一本ずつ曲げながらカウントする。
ぐっ・・・・・・確かに。二年前のことはよく覚えているよ。
あの時は、白夜がフィンリヴィアで歌謳を使い過ぎて倒れて、一時休養ということで家に帰って来た。
その頃は丁度白夜の母親の命日と重なってて、白夜が母親の墓参りに一人で行ったのを知らずに、俺とフォノが必死になって探し回ったんだよなぁ。
村の外を魔物に気付かれないようこっそりと回っていたが運悪く見つかってしまい、偶然村の外で訓練をしていた先生に助けられて一緒に白夜探しを手伝ってもらうことに。
しばらく歩くと俺の家の裏道に繋がり、母親の墓の前にいた白夜とバッタリ再会したという事件だ。
「まあ、お前らを長年見ているため、村に戻ってきた直後は
『お前とフォノが武器を使って大喧嘩を始めて、それを治めるために白夜がでかい歌謳を使って見事解決した直後』
と思ったってわけだ」
先生がにこやかに笑った。・・・・・・俺達、そんなに信用がないのか?
その後、先生の顔は急に真剣に戻る。
「しかし、信じ難いな・・・・・・そんな魔物、一度も聞いたことがないぞ」
「でも、僕達は実際に戦いました。
仮に僕達三人が嘘をついていたとしても、僕達だけでは地面や門にできた大きな傷跡は作ることはできません」
「うーん・・・・・・リーンなら信じたくないが、白夜がそう言うのなら正しいんだろうな」
「先生!!」
「っと、悪い悪い。つい口を滑らせて・・・・・・冗談だよ」
「・・・・・・あの魔物、一体何だったのでしょうか・・・・・・」
フォノの呟くほど小さい声に、全員はしんとなる。
どんな考えを出しても、あの魔物がなぜあの場から消えてしまったのか・・・・・・先生は色々と考えているようにも見えるが、答えを出せたようには思えない。
白夜もさっきからずっと考えているみたいだが、同じく答えが見つかった様子はない。フォノも同じだ。
もちろん、白夜や先生に分からない問題が俺には全く分かるはずがない。
ほんの短い間だったかもしれないが、俺にはずっと此処には沈黙という言葉がずっしりと重くのしかかったような感じがした。
しばらく全員が黙っていると、先生がゆっくりとため息をついて組んでいた腕を解き、左手を腰にあてて俺達三人を見た。
「・・・・・・まあ、このまま今晩ずっと考えても答えは出ないだろうな。もう外も暗いし、お前ら三人帰ってよし」
「先生、いいの?」
「ああ。そろそろ親方さんやラカンティさんが心配してることだろうしな」
白夜が心配そうに尋ねたが、先生はあっさり答えた。
ふぅ、ようやくこの椅子から解放されるみたいだな。
長時間座っていたせいか少し体が固まって立ち上がるのに少し苦労したが、ようやく動ける。
「あ、そうだ。リーン、フォノ」
教室の扉の方へ歩き出そうとしたとき、先生が何かを思い出したように俺達の方を向いた。
・・・・・・ん? 俺、他に何か悪いことしたっけ?
今日は遅刻をしたけど宿題は忘れなかったなし、この事件を含めても今日一日何も悪いことはしていない。賭けてもいいぞ。
しかも、フォノも呼ばれているし。
「お前ら二人、今度から自警団の模擬戦闘訓練に参加してもいいぞ」
「先生!! いいのですか!?」
この突然の許可にはフォノもびっくりみたいだな。もちろん、俺はもっと驚いている。
模擬戦闘の訓練といえば、先生が作り出した本物そっくりの偽者の魔物と戦うっていう自警団の正規のメンバーが行う本格的な戦闘訓練。
ついこの間まで、見習いの俺とフォノは訓練をする村の外れで遠くからジーッと眺めているしかなかった・・・・・・しかし!!
「ああ。俺の思っていた以上にお前らは強くなっているみたいだし、そろそろ別の訓練でも取り入れようと思っていたところだ。
それに、お前らは初めて魔物と戦い勝って村を救ったんだ。それぐらいは褒美をやらないといけないだろ?」
先生はにこやかに答えた。その様子を見ている白夜も、嬉しそうに俺とフォノを見ている。
この瞬間だけだが、先生の後ろから神々しい光が・・・・・・心の中で、そっと先生を両手を合わせて拝む。
「二人ともよかったねぇ。ずっとあの訓練に参加したかったんだよね!!」
「ああ!! これで、一人前に一歩近付いたな」
「ずっと見てばっかりっていうのも、結構辛いものだしね」
おいおい。訓練を受けられることになった俺とフォノよりも、白夜の方がはしゃいでどうするんだよ・・・・・・。
そんな様子を見た先生も、嬉しそうに笑っている。
「それじゃあ、もう外は暗い。気をつけて、なるべく早く家に帰ること。いいな?」
「了解!!」「はーい」「分かりました」
俺は真っ先に教室の扉の方へ向かう。その後に白夜が続き、最後にフォノが少し間を置いて歩き出す。
扉には取っ手がない代わりに窪んだようになっている部分があってそこに手を入れる。
そのまま引き戸になっている扉をガラッと開く。
ガサゴソ・・・・・・ガタン
ん? そういえば、開く前に少し声が聞こえたような気が・・・・・・。そう思った次の瞬間、
ドターン!!
な、何だ!? 新たな敵襲か?
扉の奥からなにやら黒い物体が三つほど俺に倒れかかってきた。
「痛ってぇ・・・・・・おい!! さっきリーンやフォノが出てこないって断言したのは誰だ!!」
「僕じゃないよ。シャレンだよ」
「何ー!? ダン、お前が大丈夫って言ったじゃねぇか!!」
「その前に、フリア。君がまだここにいようって言ったんじゃないの?」
「何だと!? その意見と今回の計画はお前らも同意したんだから、同罪だろ!!」
お前ら、普段は全く働かせない頭脳を使い、沸騰しているやかんの様に熱く議論をするのはいいんだがな・・・・・・時と場所を考えてくれないか。
必要な条件の一つである『時』は、まだまだ長い夜の間は問題はないだろう。しかし、『場所』はどうだ。
俺の上だぞ!! 俺の!! 仰向けに倒れた人の上に三人も乗りかかるなんて・・・・・・。
「シャレン!! ダン!! フリア!! お前ら、何でここに居るんだよ」
「それはこっちの台詞だ!! 何で白夜が帰ってきたのに連絡をしてくれないんだ。
このままじゃあ宿題を白夜に手伝ってもらうという計画が・・・・・・」
「ほう、そういうことだったのか・・・・・・」
さっきまで心の内に秘めていたことをそのまんま口に出していたフリアが、ハッと気付いたように目線を上に上げた。
目線の先には、僅かに笑っている先生。さっきまでの神々しい光はどこかへ消え去り、背後に漆黒の闇が燻っているようだ。
同時に、三人はサッと俺から降りる。ふぅ・・・・・・あぁ、重かった。
「お前ら三人は俺が今日出した宿題を、白夜に頼んで教えてもらうつもりだったのか?」
ギクッ!! シャレン、ダン、フリアは体全体をビクッと動かす。
おいおい・・・・・・そんな動きをとったら、先生にそのつもりでしたって言ってるようなもんだぞ。
まあ、実を言うと俺もちょっと焦ったな。今から帰って、白夜に教えてもらうつもりだったし。
「しっ・・・・・・シャレンが言い出したんです!! 俺はあいつを止めようとしました!!」
「違います!! ダンがどうしてもって言うから、兄として心配を・・・・・・」
「ぼ、僕だけじゃないですよ!! シャレンもフリアも同意しました!!」
・・・・・・そんな責任の擦り付け合戦したって、さっき全員で同意して同罪だって言ったじゃねぇか。
そんなどうでもいい白熱した合戦を、先生はにこやかな笑顔で見ていた。
「そうだなぁ。そういえば、お前らさっき全員同罪だって言ってたよな~。
とりあえず、次はお前らとみっちり話し合わなきゃいけないみたいだな。
まあ、夜は長い。しっかりとお前らの言い訳という長話を聞いてやるぞ~」
俺とフォノと白夜の三人は、先生に背中を押されて教室の外へと出され、代わりに今度はシャレンとダンとフリアがさっきまで俺達三人が座らされていた席に座っている。
三人から、徐々に血の気が引いているように見えるな・・・・・・。
扉を閉める直前、先生は右手を小さく左右に振る。
「じゃあ、気をつけて帰ろよ」
バタンッ
教室の中から流れてくるどんよりとした重たい雰囲気をスパッと一気に断ち切るように、扉は閉まった。
・・・・・・扉の向こうからは沈黙しか聞こえない。
「三人とも、大丈夫かなぁー・・・・・・。後で手伝ってあげようと思ってたのにぃ~」
白夜はさっき閉められた扉をジーッと眺めながら、扉の向こうで先生の新たな餌食となったあいつらを心配してるみたいだな。
横のフォノは扉に背を向けてため息をつく。
「まあ、仕方ないことね。ああいうのは、勝手に盗み聞きするのが悪いのよ」
「それに、もう少し上手く盗み聞きすればよかったのになぁ」
俺の余計な一言にフォノはキッと俺の方を睨む。
「リーン」
「ごめんなさい」