コットクラブ vol.57
アイラインを描いてたらどこまで描いていいかわからなくなってしまった。
考えすぎてしまった結果耳のキワまで描いてしまった。
あー今日は長く描きすぎちゃった。
と思っていたらそのアイラインの上を前転しながら歩くものたちが現れた。
ずっとコロコロ回っている。
わたしが
「ぎゃっ!こわい!」
と言いながら鏡から離れようとすると、
「いやいや、安心してくれ。我々はアイラインの成分でできている。常日頃からアイラインは歩道なので安全だとママに教わっているから前転しながら歩いているだけだ。そして今日はいつもよりアイラインを長く描いてくれてありがとう。いつもより歩数を稼げそうだ。え?なんで我々が歩数を稼ぎたいかって?100歩まで到達するとダイエット成功なのだ。最近、アイライン太くなってしまうことないかい?」
わたしは心当たりがあった。
細く描いているつもりなのに海苔のように張り付いたアイラインになってしまう。
あ〜そういうことだったのか。
綺麗なアイラインを描くためにもわたしはなんとしても彼らのダイエットを成功させようと思った。
普通の長さじゃ歩数が少ないだろうなと思ったわたしは10日間だけ毎日耳のキワまでアイラインを描いた。
10日間だけなのにすっかりわたしのあだ名は"キワ"になってしまったがそんなのは気にしない。
10日目にあと何歩かと聞いてみたら、
「あと99歩だ。」
と言われた。
君たちの歩数換算どうなってるんだ!!!と言いそうになったがプレッシャーをかけてはいけないので「なるほど。了解した。」とだけ言った。
それからしばらくの間耳のキワまでアイラインを描く生活が続いた。
どんなに変なことでもずっとやっていれば日常になって周りからは何も言われなくなった。
あだ名も"キワちゃん"と親しみやすくなった。
ある日
「あと何歩!?」
と聞いてみたら
「ふふふっあと1歩だ」
と笑顔で言われた。
歩数の換算基準が未だにわからないのでなんとなくあと5日間だけ続けた。
最終日、アイラインを描いているとなんだか描き心地がいつもと違うことに気づいた。
細く思い通りに描けるようになったのだ。
これはダイエット成功したんだなと思い鏡にぐっと近づくと、彼らはアイラインの少し上に「THANK YOU」と人文字を作っていた。
おお成功して良かったと一安心しわたしはクレンジングオイルで化粧を落とした。