三十路の上海留学13日目 ~华师大日本人の会~

9月21日(土)留学13日目

 今日は授業始まって以来はじめての週末!
 そして今日は華東師範大学にあつまる日本人留学生(語学生・本科生)どちらもあつまる日本人会(秋の新歓焼肉会)の日である。

 華東師範大学の正門から5分くらいのところにある金沙江路駅から地下鉄13号線に乗り、長寿路駅で7号線に乗り換え到着した静安寺駅にある焼肉酒場HIROSHI。
 メニューはすべて日本語、店内にあるテレビでは王様のブランチが流れていて、なんなら店員さんも日本語で通じる、そんなお店。

 建物の3階にあるそこで、40人近い日本人が一堂に会した。

 その日、私は国際交流中心に住む2名の女性と一緒に行こうとしていたのだが、集合場所の正門に現れたのは一人だけだった。
 彼女はもうお子さんが大学生を超えた2人の子どものお母さんで、子育てが一段落したので半年語学留学に行くことを決めた才女である。

 彼女いわく、もう一人来る予定だった私と同い年の女性は、同室のタイ人と全く反りが合わず、寮に部屋がえを訴えたところもう空き部屋が無いとかで、急遽この上海に家を借りることにしたらしいのだ。
 以前から「同室のタイ人は入学の式典にも出なかった」「クーラーを21度で固定してくるので寒くて風邪を引きそう。訴えても絶対に温度を変えてくれない」だとかきいていたので、なるほどなと思っていたのだが、今回そのタイ人から「私はこの学校に遊びに来ただけで、学習する気は一切無い」「うるさいから音読をやめろ(※自分は深夜まで友達と電話している)」と言われて堪忍袋の緒が切れたらしかった。
 気の毒である。

 家探しをしなくてはならないので、彼女は急遽このイベント参加を諦めたようだった。
 駅への道中、私は才女と会話をしながら歩いていると、中国のSIMカードをいれたスマホに着信があった。
 一緒にいた彼女は「迷惑電話じゃない?」と言っていたが、面白そうだったのでためしに電話に出てみることにした。

 「喂你好?(もしもし?)」
 覚えたばかりの言葉を使ってみたかったので使ってみた。
 相手は男性で、何事かを速いスピードで言われる。聞き取れない。
 「听不懂・・・听不懂(聞き取れません)」
 何を聞いてもそう答える。そこから相手は「○○○、听懂吗(聞き取れましたか)?○○○○、听懂吗?」と会話の合間に確認してくる。聞き取れない。

 「现在出去外面,以后我给你打电话(外にいるからかけ直すわ)」というと、男はしきりに「○○○拍照片(写真を撮る)、○○○拍照片!」と言っていた。
 聞き取れなかったので電話を切った。

 お店には、開始時間の3分前くらいに着いた。エレベータを上がったところに日本人が3人いて、名前の確認、一杯目の飲み物の確認、180元の支払いを求められた。
 私はメロンサワーを頼んだのだが、これが中国渡航以来はじめてのお酒であった。

 二人で店内に入るとテーブルが三列並んでいて、各列のテーブルには3つ、肉を焼く七輪が置いてあった。
 入ったタイミングで、真ん中の列に7人座っているだけである。
 我々の到着がすでに3分前なので、残りの30人弱は全員遅刻であった。

 私は連れの強い希望で真ん中の列の端っこ2席に二人で座る。向かいには年下と思われる男の子たちが座っていたが、二人はずっとスマホをいじっていたので私は連れの女性とずっと話をしていた。

 途中、日本人の微信グループに「エレベータ壊れました(笑)」というメッセージと、5センチほど隙間のあいたエレベータの写真が投稿された。
 幹事は「手動でこじあけてください」としれっと返していたが、それにまた違う人が「無理です!」と返していた。
 結局建物の管理者らしい男性が外の非常階段を案内してくれたようで、彼らは徒歩で集合した(帰りにはエレベータはすっかり直っていた)。

 この時点で開始時間を30分超えていて、私は前日の晩御飯も食べていなければ、この日本人会が13時開始だったこともあって朝御飯も食べていなかったので、飢えて死ぬかと思った。

 13時30分、ほぼすべての席が埋まり、乾杯の前に幹事の一声で自己紹介が始まる。名前、所属、趣味をいうことになったのだが、半分が本課生、半分が語学留学生であった。

 自己紹介も終わってお酒が運ばれ、乾杯をする。それとともにすでに出来上がっていた料理もガンガン運ばれてきて、各テーブルで自由に交流が始まった。
 向かいの少年たちはまだ21歳とかで、ジェネレーションギャップがすごすぎる。なんなら彼らは数学の授業で同じクラスの友達であるらしいが、乾杯までお互いすら話をしないような比較的内向的な子達だったので、コミュニケーションで少し苦労した。

 私のひとつ飛ばした左隣は、式典の日に声を掛けられ、色々と教えてあげた友達だったので、私は目の前の若者たちとの会話につまると、時おり彼とも会話した。
 また、左隣の彼のこともこちらが勝手に知っていたので、色々と話をした。
 
 なぜ左隣の彼を知っていたかというと、彼は上海に支社を持つ商社に勤めているらしいのだが、学内案内の日に支社に顔を出してから来たので一人スーツを来ていて、かつ彼は背が高く目立つのか、その後の式典でもオープニングムービーに出演して、各国の生徒たちに混じって中国語で華東師範大学の理念(4文字熟語)を音読していたからである。

 各国の生徒たちが英語で理念を読み上げるなかで、彼一人中国語で理念を読み上げていたので、さぞや中国語の上手い人なのだろうとクラスをきいたら、「1-1です」といわれる。
 1-1はこれまで一切中国語を学んだことの無いクラスで、元々友達の彼も1-1で同じクラスなのだと言っていた。

 「ひとりだけかっこ良く中国語を読み上げていたからてっきり熟練の中国語話者かと・・・」と言うと、「いや!全然初心者ですよ!でもいまクラスを変えようと思ってて・・・」と言われる。
 「やっぱり簡単すぎますか?」ときいたら、「昨日は宿題で一二三を書く宿題が出ました」と言っていて爆笑した。

 ひととおり食事をとったあとは自由に席を移動して良かったので、私と一緒に来た彼女も一緒に席を移動したのだが、途中から本課生と語学留学生はぱっくりと分かれていたのが興味深かった。

 そのほかおもしろかったことはと言えば、本課生は99パーセント両親どちらかが中国人のハーフで、純日本人は一人しかいなかったことや、外務省勤務の男性が午前は学校、午後は仕事で学びに来ていたり、サントリーの社員の方がいて、中国では学校相手にサントリーがコーヒーの自販機を卸していることだとか、上海の美味しいカフェを教えてもらったり、もうひとつのキャンパスの様子をきいたり出来たことだろうか。

 二次会もあるとのことだったが、駅に併設した商業ビルの無印に行きたかったので、私と、一緒に来た友達の彼女は一次会で会を抜けた。
 帰る途中、自転車の鍵を外しているサントリー社員に出会い(上海はシェアサイクルが溢れている)、「お酒飲んで自転車のって良いんですか?」ときいたら、「上海は自転車はOKなんですよ」と教えてもらった。

 サントリーさんとも別れて、我々は上海静安嘉里中心に入った。私は香水とマニキュアを探していた。
 とりあえず建物内をぶらぶらと歩いていると、化粧品の売っているお店があり、入店した。
 すぐに美容部員らしき男性(ばっちり化粧が決まっていた)に声を掛けられたので(たぶん「なにかお探しですか?」みたいなこと)、「みてるだけです。まだ買うか分かりません」と中国語で答えた。

 彼は「分かりました。何を探していますか?」と言われたので、香水のコーナーを指しながら「香水がほしいです」と言う。
 彼は私を香水コーナーに案内した。

 「どれにしますか?」みたいなことを言われるが、数が多くてどうしたら良いか分からない。
 「你的推荐是什么(おすすめは?)」というと、彼は少し悩んだあと、「どういう香りが良いですか?」ときいてきた。

 本当は柑橘のような匂いが好きなのだが、柑橘の言い方が分からないので「好像・・・水果(フルーツみたいな)」と言った。
 すると彼は「那・・・Lemon」と言った。
 私は最近まで「亲爱的柠檬精先生」というドラマをみていたので、「これ進研ゼミでやった問題だ!」と「柠檬?!」と質問する。
 彼は優しく「柠檬!」と言ってくれた。

 彼は細い紙に香水を吹き掛け、こちらに渡してくれる。
「んー・・・」自分のこのみの匂いに比べて香りが軽くて浅かったので、「更甜的(もっと甘いの)」と言った。
 たぶんこれは文章が間違っていて意味が通じなかったので、「モア スウィーティー」という。
 彼は「分かりました」と言って違うのを嗅がせてくれる。
 超良い匂いだったので、「めっちゃいいね!」というと、彼が値札を指差した。
 1,000元。日本円で22,000円くらい。「我是留学生。所以太贵了(留学生には高すぎます)」という。
 
 そうすると彼はmiumiuの別の香水に案内してくれ、たしか彼は「芒果(マンゴー)」と言っていた。
 すごく好みの匂いである。
 「いくら?」と聞くと、800元(17,600円くらい)という。無理。
 「ちょっと考えます」というと、彼は「分かりました!
」と笑顔で送り出してくれた。
 高い。

 その後この建物内を歩き回ったのだが、MUJIを除いておそらく高級な店があつまっているということが分かり、彼女と私はそっとその建物を出た。

 金沙江路駅に戻り、月星环球港というこちらも駅併設のショッピングモールに入る。
 彼女が服がほしいというのでH&Mで彼女の買い物に付き合っていると、相互語学学習の相手から「これからお互いに日記を書いて送らない?」と連絡があった。
 「めっちゃいいやん」と返し、この日から毎日夜にお互いの言語で書いた日記を送りあっている。
 なので、私はこのnoteと合わせて二つ書いていることになるので、1日の多くの時間を日記を書くことに充てているわけである(笑)。
 日本では日記なんて日報くらいしか書いたことがなかったのに、よく続いている。

 あとは、翌日の朝御飯を求めて、一袋6個のロールパンが入ったパンが、买一送一(2個買うと片方無料)とのことで、彼女と二袋買って割り勘にした。买一送一のおかげで、それを160円で手に入れることが出来た。

 昼の焼肉で大分お腹がいっぱいだったので、ご飯はヨーグルトにフルーツが入ったものにした(メニューではなく、店頭の見本を指差しながら「これがほしい!」と言ったので大杯(大盛りのこと。普通盛りは标杯)で提供された。700円くらいしたうえに、お腹いっぱいで苦しかったので、今後は横着するのやめよう、と反省した。

 こうして土曜日はあっという間に終わって、この日1日だけで16,000歩くらい歩き回っていた。
 楽しかった。

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