あれははたして詐欺だったのか。おかしなビジネスに巻き込まれたおじさん達の話。
こんにちは。
山田です。
今回は「税理士事務所で働いていた時のお客様」のお話しです。
私がまだ税理士事務所で働いていた時の話です。起業家支援の部署にいた私は、営業から、一件受け持ってほしいと依頼をされました。
あまり顧問料は払えないかもしれないけど、良い人っぽいからとだけ言われ、引き継ぎのために会議室へ入りました。
そこにいらっしゃったのは、少し薄い頭にTシャツと短パンという服装。丸メガネをかけて、おでこに汗をかいている原田さんでした。
軽く挨拶をした後、さっそく事業内容や今後の売上見込みの話になりました。事業内容は経営コンサルタント。売り上げについては、今後増えていく見込みだと笑顔で話されていました。
経営コンサルタントで独立される方は、すでにクライアントをもっていることが多いのですが、原田さんはクライアントが一人もいません。どういうコンサルするのかいう説明もはっきりしませんでした。
違和感を感じながらも、資本金を確認すると500万円あります。創業で500万円用意できる人はなかなかいないので、お金持ちなのかなとおもむろに通帳を確認すると、残高が全く残っていませんでした。
原田さんに、500万円はどこにいってしまったのか聞くと、500万円は他のひとから出してもらったものだから返した。と明るく言われました。
どうやら原田さんの裏には、橘さんという事業家が存在しており、その人に創業用に500万円資本金として出してもらったとのこと。そんな怪しげな話があるのかと思い、関係性を聞いても、異業種交流会で知り合ったとだけ言われて会話が終了してしまいました。
経営コンサルタントとして仕事をするときも、橘さんからクライアントを紹介してもらう予定らしく、経験もなにもないけど、橘さんがバックについているから安心だと話していました。
理解が追い付かず、謎も多かったのですが、顧問料として月額3万円頂けるという話だったため、顧問契約を結びました。
顧問契約を結んだあと、一ヶ月ほどたっても、売り上げがたったという連絡がありません。そんな矢先に顧問料の引き落としが出来ないと経理から言われました。
事情を知りたかったため、こちらから連絡をとり、一度原田さんの事務所へ伺うことになりました。
到着したのは、駅から徒歩10分のビル。エレベーターに乗って3階へ行き、事務所のドアをノックして入ると、そこには原田さんのほかに、数人のおじさんがいました。
事情を聞いていくと、そこのおじさんたちも原田さんと同じく、橘さんに出資をうけて起業をした人たちでした。
おじさんたちのたまり場になっている場所には、仕事をしている形跡はありません。
私は情報把握のために数人のおじさんにヒアリングをしていきましたが、原田さんも含めて、橘さんと起業後に連絡が取れた人は一人もいませんでした。
事情が全く分からず混乱しましたが、顧問料の引き落としが出来なかったことを伝えると、引き落としできなかった分は支払う。ただ、売り上げが見込めないため、顧問料を毎月3万円から1万円にしてほしいと言われました。
1ヶ月ほどたった後、顧問料を支払いたいと言われ、会議室で待っていると、黒々と焼けた原田さんが現れました。生活費と顧問料を支払うために交通整理のバイトを始めたらしく、日給8千円で働いているとのこと。
財布から直接1万円をもらい、橘さんとは雑談して終わりました。
半年ほど同じ形で受け取り続けましたが、最終的には音信不通になってしまい、顧問契約は破棄しました。
最後まで、橘さんとはだれだったのか、何をしたかったのか、原田さんは騙されただけなのか、あの事務所にたくさんいたおじさんたちはどうなったのか謎が残ったままです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。