オレたちはただ、やりたいからやってる

小学一年生のころ、担任の先生が「龍の子太郎」を読み聞かせしてくれて、夢中で聞いていました。
読み終えると、先生は次に「ちいさいモモちゃん」を読んでくれて、私は、この二つの面白いお話はどちらも松谷みよ子さんという人が書いたのだと知りました。

時は流れて、物書きになった私は今、児童向けの物語を作る仕事に取り掛かっています。
この仕事に着手するにあたって、最初に頭に浮かんだのは、松谷みよ子さんのことで、ネットでいろいろ調べるうちに松谷さんの著書「民話の世界」の存在を知って、これは読まねば!と直感しました。
その直感は正しかったようで、今、この本からいろんなことを学びながら、原稿を書き進めています。

小学一年生だった私は、先生が読んでくれるお話が、ただただ面白かっただけで、読み聞かせをしてもらった経験や松谷みよ子さんを知っていることが、大人になってからこんな風に役立つだなんて思いもしませんでした。
そう考えると、今日一日に私が経験したいくつかのことも、この先いつ、どんな風に役立つかわかりません。

この何年か、私の頭の隅にはずっと「世の中、効率の良さばかりが重視しされ過ぎてない?」という疑問があります。「明確に何かに役立つこと」以外は、すぐに無駄と見なされてしまう感じというか……。
何年も前のことですが、テレビCMで、「学生時代に留学して英語なんて身につけても、いざ就職したら英語を使う人なんて一握り。それよりPCスクールでワード、エクセルを使えるようになっておくことの方がよっぽど大事!」という内容のものがあって、すごくモヤモヤしました。
「新卒で入った会社で英語を使わないから、留学は無駄だった」なんてことは、誰にも言い切れないんじゃないでしょうか。
その人の、そこから先の人生にどう生きる分からないし、留学経験で手に入れられるものは、語学力だけじゃないですよね。

以前、舞台作品で、演劇に打ち込む高校生たちの群像劇を書いたことがあります。その中で、主人公にこんなセリフを言わせました。
「お前、勝ち負けなんかのために演劇やってきたのか? オレらは違う。ただ、やりたいからやってる」

自分の中から自然と「これ、やってみたい!」という衝動が突き上げてきた時はきっと、その気持ちを大切にしたほうがいいと思う。
少なくとも、自分じゃない誰かに「無駄」と決めつけられて引っ込めるなんて、もったいないと思うな。

#日記 #エッセイ #コラム
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