珠洲焼をご存知ですか? その3
石川県の伝統工芸「珠洲(すず)焼」は、能登半島の先っぽ珠洲市の焼き物です。
釉(うわぐすり)を使わずに、土の姿のまま焼き上げられ、色は黒灰色。
そこに、燃料の薪の灰が降りかかって溶け、自然と模様が生まれることもあります。
写真はどれも、珠洲焼作家・篠原敬さんの作品です。
同じ石川県でも金沢生まれで、色鮮やかな九谷焼を見慣れている私は、珠洲焼を目にする度に、力強さと同時に柔らかさのようなものも感じてハッとします。
それと珠洲焼は、手にしたときの「自然のものに触れている」という感覚が心地良いんですよね。
平安から室町時代に盛んに作られた珠洲焼は、15世紀末になぜか忽然と姿を消し、「幻の陶器」とも呼ばれていたそうです。
その後、約500年の時を経て、昭和54(1979)年に復興。
今年(2019年)は、復興から40周年ということで、9月に渋谷ヒカリエでこちらの展示会が開かれていました。
私も最終日に伺い、20点の中世・珠洲焼を鑑賞してきました。
当日は、陶磁器研究家の森由美さん、珠洲焼作家の篠原敬さん、泉谷満寿裕珠洲市長のトークショーもあり、興味深いお話をたくさん聴くことができました。
森さんは、篠原さん作のビアグラスをお持ちだそうで、それで飲むとビールだけでなくお茶も、味がまろやかになって、おいしく感じるとか。
私も篠原さん作のぐい呑みは持っているのですが、次はビアグラスがほしいなぁ……。
篠原さんによると、珠洲焼のように、高温で釉を使わずに陶器を焼くことを「締焼き」と言うそうです。
そして締焼きの作家さんは「焼き物」のことを、よく「焼け物」と呼ぶとのこと。
締焼きの場合、仕上がりは、作家の意志ではコントロールしきれず、「自然とそうなった結果」が作品に影響する部分が多いため、「焼く」というより、「焼けた」という感覚があり、それが「焼け物」という呼び方に表れているとか。
また市長さんは、ユーモラスに珠洲の魅力を語ってくださって、会場内に何度も笑いが起きていました。
ヒカリエでの展示後は、11月10日まで珠洲市内の「珠洲焼資料館」で開館三十周年記念企画として、中世・珠洲焼の代表作70点が展示されているそうです。
ご興味のある方はぜひ!
東京から行かれる場合は、飛行機移動がお勧めです。
羽田から能登空港まで1時間弱のフライト、空港から珠洲市まではレンタカーか、予約制の乗り合いタクシーが便利だと思います。
珠洲焼に関しては、以下の投稿でもご紹介しているので、よろしければ。
珠洲市は、自作小説『すずシネマパラダイス』の舞台です。
全文無料公開中ですので、よろしければこちらもお楽しみください。
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