見附島正面

すずパラの旅 前編

7月20~22日の二泊三日で、noteで全文無料公開中の自作小説『すずシネマパラダイス』の舞台、石川県珠洲(すず)市に行ってきました!

多くの方にお会いし、見て、食べて、飲んで……と、盛りだくさんの旅を今回、次回の2投稿に分けて、ご報告したいと思います。
今回は「前編」です。

珠洲市は能登半島の先っぽ。「奥能登」と呼ばれる地域です。
私は石川県の金沢市出身なので、これまでは金沢を経由し、特急バスに乗って珠洲に行っていましたが、今回初めて羽田―のと里山空港間を飛行機で移動しました。
こちらの写真は、能登のシンボル「見附島」を空から撮ったものです。

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飛行はわずか1時間。
のと里山空港からは、ふるさとタクシーという予約・乗合制のタクシーに乗り、1時間ほどで珠洲市に到着しました。

珠洲では夏から秋にかけて、毎週のようにお祭りがあります。
7月20、21日は、お祭りシーズンの幕開けとなる『飯田町燈籠山(とろやま)祭り』が行われていました。
珠洲に到着後、飯田町のなかを移動していたら、山車の周りに集まっているみなさんを発見。
「写真撮ってもいいですか?」と尋ねたら、「いいよ~。どっから来たが?」と答えてくれた男性が、偶然にも私と同じ金沢出身の方でした。
「引いてもいいよ」と言っていただき、思いがけず地元のみなさんと一緒に山車(地元のみなさんは「やま」と呼んでいました)を引くことに!
こちらは引きながら撮った写真です。

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宿にチェックインし、夕方からは珠洲のギャラリー『舟あそび』へ。
珠洲焼の陶芸家の篠原敬さん、『船あそび』のオーナー舟見有加さんご夫妻から、バーベキューにお招きいただいたのです。
篠原さん、有加さんのご友人たちと一緒に、バーベキューとおいしいお酒を堪能!

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途中、花火を見に行き、あかりの灯った燈籠山も見て、その美しさと盛り上がりに感動!

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再びギャラリー『舟あそび』に戻って、宴会の続き(笑)。
「すずパラ」は映画化を目指しており、そのPR活動も今回の旅の目的のひとつなので、映画化に向けて方針なども話させていただきました。
みなさん、その場で「すずパラ」のマガジンをブックマークしてくださって、「応援するよ!」とあたたかい言葉もかけていただき、改めて「何としても映画化を!」という想いが強くなりました。

今回も含め、「すずパラを応援していただけたら嬉しいです」と、石川県のみなさんにお伝えすると、「どうして珠洲を舞台にしようと思ったの?」と質問されることが多いです。
もともとは人づてに、「珠洲には昔、スメル館っていう映画館があって、そこで映写技師をしていた人から当時の話を聞いたら、すごく面白かったよ!」と聞いたことがきっかけでした。
その「人づてに聞いた話」をもとに、
「映画監督になる夢を叶えられずに珠洲に帰った青年と、かつて珠洲の映画館で映写技師をしていたおじいさんが、町おこし映画を撮ろうと奮闘する」
というアウトラインをつくり、さらに取材を進めるべく、珠洲を訪ねて、元映写技師さんからも直接お話を伺ったのです。
(それ以降、現在までの経緯はこちらの投稿に書きました。)

そして今回、久しぶりに珠洲を訪ね、町の空気に触れ、多くの人にお会いし、帰路に着いたとき、帰りの飛行機内で「私が珠洲を舞台に作品を書いた理由」が自分の中で、より深く理解できた気がしました。

初めて取材に行ったとき、私は小さな「物語の種」だけを抱えた状態で珠洲を巡り、ストーリーを膨らませていきました。
その過程でどんどん珠洲が好きになり、その「好きな気持ち」を原動力に、「珠洲を舞台にしていなければ、決して書けなかった物語」を書き上げることができました。
だから、「珠洲を物語の舞台として選んだ」というよりも、「珠洲が、私に物語を書かせてくれた」という感覚なのです。
そうして書き上げた作品は、私自身が「大好き!」と胸を張って言える作品で、だからこそ、ひとりでも多くの方に読んでいただきたい、どうしても映画にしたいという想いが生まれ、こうしてPR活動を続けているのだと思います。

『舟あそび』でお会いした珠洲出身の男性からは、
「映画化が実現して、”聖地巡礼”的に珠洲を訪れる人が増えた場合、一過性のブームに終わって、町が消費されるだけなのではないか?」
ということを懸念されるご意見もいただきました。
正直なところ私は、何とかして企画を一歩ずつ前に進めていくことしか頭になく、映画化が叶った後に起きるかもしれない問題についてまでは、まったく考えが及んでいませんでした。
ですが、これまた帰りの飛行機のなかで、先々のことを心配なさっていた地元出身の方のお気持ちが、ふいに感じ取れたような気がしました。

こちらは、私が泊まった宿の裏で撮った海の写真です。

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本当に静かで美しく、撮影したときは見渡す限り人の姿はなく、水平線まで続く景色をひとり占めにしている気がして、感動で涙が出そうになりました。

また花火を見た後は、篠原さんのお友達と、
「こんなにゆっくり花火を見る機会なんて、東京や大阪ではないですよね!」
と感激してお話していました。
東京で花火大会といえば、ラッシュアワー並みの人ごみを覚悟しなくてはいけない場合もありますが、私たちが珠洲で花火を見た場所は、山車のお囃子が聞こえてにぎやかではありましたが、「人ごみ」とはほど遠い状況でした。

考えてみれば、私が美しい海をひとり占めしている感覚になって感動したのも、花火をゆったりと見られたのも、「人が少ないからから」なんですよね。
珠洲の魅力のなかには、「人が少なく、静かである」ということに支えられている部分がある。
仮にすずパラがヒットして、多くの人がこの地を訪れるようになったら、それらの魅力は、損なわれてしまうのかもしれません。
だから珠洲で生まれ育った方が、直感的に「町が消費されてしまうこと」を懸念されても不思議はないのだと、後になって気づきました。

とは言え、「町の活性化のため、未来のために、多くの人に訪ねてきてほしい」と願う方々もいらっしゃるはずです。
「映画を通して、珠洲をちょうどいい具合に盛り上げる」
というのは難易度が高く、今の私の頭では、どう考えればいいのか分かりません。
ですが、「珠洲を舞台にした映画が制作される」ということに対して不安を感じる方もいらっしゃること、そしてその感情はごく自然なものなのだと気づけたことは、私にとって大きなことですし、今後、企画を進めていくなかでじっくり考え続けていくべきことだとも思います。

……ということで、「すずパラの旅 前編」は以上です。
後編」に続く!

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中川千英子(脚本家)
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