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未来の自分を苦しめないで

くじけたくない。傷つきたくない。
そう思うから、作品を書いたり、どこかに応募したり、発表したりすることを先延ばしにしてしまう。

私にも経験があるので、その気持ちはよく分かります。
でも、一度この穴に落っこちると、かなり厄介なことになるんですよね。
先延ばしにしている時間が長くなるほど、どんどん書くのが怖くなっていく。
いざ「書くぞ!」と思っても、「こんなんじゃ駄目だ」「人に笑われる!」といった自分の心の声が邪魔をして、また先延ばししたくなる。

もっとも危険なのは、この「先延ばし期」に他人の作品について批評めいたことを言う癖がついてしまうこと。
かつて、私が小劇場系の舞台の脚本を書いていた頃、心無い言葉をいくつもぶつけられました。
「そんなのよくやるよね? 大したお金にもならないんでしょ?」
「ドラマや映画の脚本と違って、自主制作の舞台の脚本なんて、シナリオスクール通ってる人間なら誰でも書ける」
等々。
言われた私は「知らんがな~」と受け流してしまえば話が済みますが、「言ってしまった人」にとっては、未来の自分を苦しめる言葉になってしまう。

人のことを「必死だな」と冷笑しているうちはいいけれど、自分が本気で書くことに取り組み始めたときに、
「自主制作の舞台の脚本を書いてくれない?」
と持ちかけてくれる人がいても、躊躇する羽目になってしまう。
「人がやっていたときに冷笑していたことを自分がやり始めたら、馬鹿にされるに決まってる」
と、余計なことを考えて、機会を逃すことにもなりかねません。
実際は、世間はそれほど他人の行動を気にかけてなどいませんし、気に病むようなことじゃないはずなのに、自縄自縛に陥ってしまう。

三島由紀夫が生前、こんなことを言っていたらしいです。

「他人の粗探しをしている間は、自分の姿を見なくて済む」

「先延ばしにしている自分」から目を背けるために、他人の行動や作品についてあれこれ言う。
だれもが簡単に引っ掛かるような罠です。

「悪口はよくないと思いまーす」なんて、学級委員みたいなことを言うつもりはないんですが、未来の自分を苦しめないために、こういうことは止めておいた方が安全です。

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中川千英子(脚本家)
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