【我が心のぺぺラッツ】
ヘコヘコと空を飛んでくる、その奇妙な物体を観た瞬間、
自分の中の新たな扉が開いたのです。。。
マイオールタイムベストに入る旧ソビエトのSF映画
「kin-dza-dza!(邦題:不思議惑星キン・ザ・ザ)」
の監督ゲオルギー・ダネリヤ氏がお亡くなりになりました。
「キン・ザ・ザ」は、多感な時期に観て物凄い衝撃を受け、
その後の人生に多大な影響を受けた映画でした。
ダネリヤさんありがとうございました!
ご冥福をお祈りします。
今回は恩人とも言えるダネリヤ監督への追悼の意を込めて
キン・ザ・ザ観たこと無い人もちょっと観たくなるかもしれない
レビューのようなものを書いてみたいと思います。
【キン・ザ・ザ のあらすじ】
舞台はモスクワ。
仕事から帰ってきたら奥さんにマカロニ買って来いって頼まれたおじさん。
街角で、自称宇宙人(不審者)の男に助けを求められ困っていた
ヴァイオリン弾きの青年ゲデバンくんに声を掛けられます。
自称宇宙人は自分の星に帰りたいのでこの星の座標を教えてくれとかなんとか言ってますが、全然信用してないおじさんは、自称宇宙人の持つ空間移動装置にポチッとなと触っちゃいました。すると、おじさんとゲデバンくんは、未知の星に飛ばされてしまったのでした。。。
ゆるいBGMと共に映画が始まります。
舞台はモスクワ。
でもすぐにモスクワの街角から、キン・ザ・ザ星雲にある惑星プリュクへと移動します。
まだるっこしい前振りは無しです。
我々に残された時間は少ないのです。
主人公二人は瞬間移動~ワープで未知の惑星に飛ばされますが、最初の見せ場になるであろうここ。SF映画においては普通なら大仰な視覚効果なりなんなりで魅せてきそうなもんですが、いきなり場面が切り替わる事でさらっと処理されます。ボタン押したら一瞬です。潔いです。
飛ばされた先は見渡す限りの砂漠。
別の惑星に飛ばされたなんて全く信じないリアリストのおじさんは、ここはどっかの砂漠だなんだと言ってます。
そこにヘコヘコと飛んでくるドラム缶のような物体。
それがぺぺラッツと呼ばれる宇宙船です。
スタイリッシュとは程遠いデザインと錆びた金属の質感。
キコキコと軋んだ音を立てて飛んで来て着地する一連の動作。
全てがローテクなこのぺぺラッツの登場シーンは、その後、多くのクリエイターたちに大きな影響を与えたのです。ような気がします。
そして、わずか数分のこのぺぺラッツ登場シーンで、観てる人たちは、この作品のカラー、世界観、作品世界におけるテクノロジーや文明レベル、リアリティのバランスまでも瞬時に理解するのです。
センスオブワンダーとはまさにこのことです。
ぺぺラッツのハッチが開いて、中から出てきたのは、ズタ袋のような服に身を包んだ、林家こん平師匠似の小太りのおっさんと相棒のノッポのおっさんの凸凹コンビ。この辺、定石をきっちり押さえてて、とても良い絵面です。
そしてキン・ザ・ザといえばこれ!ここで「ク~!」の挨拶初披露です。
実生活でもごく稀に、キン・ザ・ザ好きな猛者に遭遇すると、どちらともなくこの挨拶をします。
ちなみに罵倒する時は「キュー」それ以外の表現は全て「クー」です。
キン・ザ・ザで自分が一番グッとくるのが、様々なガジェット類です。
ぺぺラッツを始めとする乗り物たちや、衣装、砂に埋まった建造物や、身分が低い者が鼻に着けられる鈴(ツァーク)など。。。
その中でも、主人公たちと未知の惑星の住人たちを繋ぐキーアイテムが、マッチ棒。
この星では、マッチ棒がとても貴重で、一本で宇宙船のエンジン買えちゃう程なのです。
このマッチ(カツェと呼ばれる)を巡って、様々な駆け引き(コント的な騙し合い)が繰り広げられます。
こん平たちは、おじさんが無造作にポッケに入れてるマッチ箱が欲しくてしょうがない。
プリュク人には超貴重なマッチですが、おじさんは煙草吸いたいから、御構い無しにマッチ擦っちゃうんですね。
その都度、ちょ!おまっ!ってなるお約束っぷりがナイスです。
物語は、その後も派手な戦闘場面などがあるわけでもなく、ユルい空気のまま進んでいきます。
途中、観覧車の廃墟で暮らす人々に、芸を披露してお金を貰おうと、ゲデバンくんのヴァイオリンを演奏しつつ、おじさんが歌を披露する場面があります。
マーマーマーマーどうしよう♩ マーマーマーマーどう暮らそう♩
あったかいコートがないよ あったかい肌着がないよ ♩
この歌。おじさんの音痴っぷりも相まって、脱力せずにはいられませんが、遠く離れてしまった故郷を想う郷愁のようなものも感じられてとても良いのです。
↑みんないっしょに歌ってます。楽しそう。
その後、色々あって、エツィロップと呼ばれるこの星の支配者層が出てきたり(この星ではステテコの色で階級が分けられています)、マッチ取られちゃったり、捕まったりしつつも、ラストは人情味を感じさせる展開を経てラストへ。
果たしておじさんとゲデバンくんは故郷の地球に帰れるのか!?
ロシアのSFといえば、巨匠アンドレイ・タルコフスキーの「惑星ソラリス」とか「ストーカー」の名があがると思いますが、このキンザザも負けるとも劣らない傑作だと思います。
(どっちも眠気を誘う)
ダネリヤ監督への追悼の気持ちを込めて作ったぺぺラッツもどきです。
通常はヤクルトの容器を使うところを、コーヒー牛乳飲みたかったので、コーヒー牛乳の容れ物を使いました。美味しかったです!
こんな事してる暇あったら、ちゃんと帰って寝ろよと自分でも思いました。はい。
このぺぺラッツが空をヘコヘコ飛ぶところを夢想しながら、今夜は眠りたいと思います。
「ク~!」
DVDもBlu-rayも出てますので是非観てみてください。
うちにはDVDプレイヤーもBlu-rayプレイヤーもありません。
マーマーマーマーどうしよう♩DVDプレイヤーがないよ♫
Blu-rayプレイヤーがないよ♫