「野坂惠璃二十五絃箏リサイタル ~繋~」
二十五絃箏を作られた野坂操寿さんの娘さんでいらっしゃる、惠璃さんのリサイタルです。
とても、とても、素敵でした。
「赤とんぼ」
右手の爪音からトンボが飛び回り、左手からは茜色から藍色に移り変わる空と秋の空気が立ち上ります。
「雪は降る」
音が鳴っているのに、雪に吸い込まれた無音の世界が広がります。
辺り一面、真っ白で、何も見えず、何も聞こえない世界。
音が鳴っているのに。
「胡哦」
美しい美しい音の連なりから西アジアの風が吹いてきます。
シルクロードを渡る人々の歩みや喧騒。月明かりや満天の星空。
繰り返されるメロディーが、高音の爪音から低音のピッチカートに受け渡されると、オアシスにたどり着いたかのようで、キャラバンの一員になった私も客席でほっと一息つきます。
「夢の鳥」
ポツポツと、不思議な旋律?が奏でられます。
つかみ所ない音に身をゆだねていると、二羽の鳥が踊っています。
丹頂のダンスのように、ゆっくり大きく羽を広げて、一歩ずつ、とても丁寧にステップを踏んでいます。
大切な物を、大切に。壊してしまわないように、大切に。
アンコールには、このお正月からの地震や事故で亡くなられた方への追悼の意を込めて、お父様が亡くなられたときに作られたという曲が披露されました。
「満天の星空」という英語のタイトルは聴き逃してしまいましたが、とても美しい曲で、心が洗われる思いでした。
惠璃さんの奏でるどの音も、どの曲も、
その一音一音、その一曲一曲に対する、慈しみに溢れていて、聴いていてとても温かい気持ちになりました。
そして、何気なく過ごしてしまう一瞬一瞬を、もっと丁寧に過ごしていこうと思いました。
この日、東京はとても寒い1日でした。
会場の外に出ると、来たときと同じように寒かったのですが、心の中がとても温かく、幸せな気持ちで家路につきました。
本当に素敵な演奏を、ありがとうございます。
*「さん」とお呼びするのは、大変失礼であると重々承知しておりますが、「客席からの眺め」では、「先生」方も、「さん」付けで表記させていただいております。何卒ご了承くださいませ。
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。
https://gainful-butter-9171.glideapp.io/
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会場 Hakuju Hall
日時 2024年1月25日(木) 19:00
二十五絃箏 野坂惠璃
山田耕作作曲 小宮瑞代編曲
独奏二十五絃箏の為の赤とんぼ
三好達治作詞 湯浅讓二作曲
箏歌・雪は降る ―二十五絃箏とうたのために
伊福部昭作曲
二十五絃箏曲 胡哦
委嘱作品・初演
杉山洋一作曲
夢の鳥 The Dream Bird