愛してる がわからない
たくさんの小説を読んで、たくさんの漫画を読んで、たくさんの歌を聞いて、たくさんの映画を観て、ドラマを観て、そしていくつかの恋愛をして。
「愛してる」が散りばめられている場面を見てきた。
どうやら素敵な気持ちになるらしい。
わたしにもいつかわかるのかと思って、ドキドキしていた頃があった。
けれど「愛してる」という感覚が、今もいまいちわからない。
乱暴かもしれないけれど、全ては「好き」で置き換わる気がする。
もしくは「すごく好き」(単純すぎる)。
「好き」という気持ちをどうにか伝えたくて、いろいろな言葉を選んで使ってきたけれど、「愛してる」はどんな言葉にしたらいいか今も全くわからない。
時は経ち、子どもが生まれた。
恋愛に対してだけでなく大きな意味合いがあるらしいこの言葉の感じが、もしかしたら少しはわかるかと思った。
ころころと転がっている子に、たどたどしく話しかけてくる子に、「愛してる」と言葉にして伝えてみたけれど、全然しっくりこなかった。
かわいい、大好き、堪らん~!
何よりも大切!
とはなるけれど、愛してるという感覚はしっくりこなかった。
愛しい、という気持ちならわかる。
けれど「愛してる」はわからない。
大切に想う
何よりも大事な存在
としてならわかる。
けれど「愛してる」がわからない。
「愛」という名詞ならわかるような気がするのに、「愛してる」になるとわからない。
途端に頼りなくふわふわしたものになってしまう。
きっと、わたしには「愛してる」はわからない。
だから「愛してる」も言えないままだろう。
けれどいくつもの表現で、それに似た気持ちを想いを伝えることだろう。
* * *
こちらは数年前にあった出版社の企画
『あなたの考えた“I Love You”の訳し方を募集します。』
なんて彩り豊かな感覚。
呻りながら、その応募作品を読んだ。
こうやってみると「愛してる」は、なんて多彩に表現できるのだろうと感動してしまう。
わたしもいくつもの言葉を吟味して、そしてそのときしっくりくる言葉を口にして、そして書いてみたい。