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優勝しなくてもCHAMPION
championは日本語の中で使われる「チャンピオン」よりも守備範囲の広い言葉です。
基本的には
語源は
『野原[戦場]で戦う人』(大修館書店ジーニアス英和大辞典)
なので、中世の「剣闘士」から来ている言葉です。
戦う人の中で勝ち残った人である「優勝者」「選手権保持者」の意味が「チャンピオン」のイメージですね。
「ディフェンディング・チャンピオン⇒選手権防衛者」という言い方をお聞きになったことがあると思いますが、これはちゃんとした英語であり「the defending champion」というつづりです。
ちょっと注意
チームスポーツならば少し注意が必要です。大会ごとの優勝チームは「1」チームですから、何となく「champion」と単数形で言いたくなりますが、チームという「器」は確かに1つであるものの、その中にいる複数の選手のことを念頭にして「champions」と表現します。
2年前に行われたサッカーの欧州選手権で「チャンピオン」になったのはイタリアでしたが、今年のワールド・カップに向けた予選では敗退してしまいました。(「欧州選手権」は「ワールド・カップ出場を争う欧州地区予選」とは別物です)
【Italy】 became the European champion【s】 two years ago, but this year 【they】 failed to qualify for the World Cup.
といった具合に書かれます。この時、Italyを指す代名詞がitではなくtheyであることにもご注目ください。ですから、be動詞が組み合わされるならば「Italy are」や「Italy were」となります。
複数形にするという話は、Jリーグでもちゃんと理解されています。試しに「Jリーグ 優勝」と画像検索していただくと表彰式の後の集合写真が出てきますが、看板には「CHAMPIONS」と複数形が使われているのが確認できるでしょう。
優勝していないが
サッカーの雑誌には選手のインタビュー記事もよく掲載されます。以下は、平成24年/西暦2012年に日本の雑誌『ワールドサッカーキング』に載った、イタリアの名選手Gianluigi Buffonジャンルイージ・ブッフォンの発言です。
「満足な補強ができたと思う。アサモアはカンピオーネであると同時に人間的にも本当にいいヤツだし、イスラはアサモア以上にスキルが高い。そしてジョヴィンコは正真正銘のカンピオーネだよ。」
https://www.soccer-king.jp/sk_column/article/73073.html
「カンピオーネ」とはchampionと語源を同じくするイタリア語campioneです。
アサモア、ジョヴィンコの2選手は、この時点ではトップ・リーグでの優勝経験は無かったので、ブッフォンが彼らのことを「カンピオーネ」と言ったのは「選手権優勝者」の意味ではなかったと思われます。
伊和辞典を引くと「一流選手」という訳が載っており、また、英和辞典でchampionを引いても同様に
「《口語》 他よりすぐれた人[動物]. a champion at singing 歌の上手な人.」(研究社英和中辞典)
という用法が見られます。
「優勝していないchampion」ですが、まあまあ、さほどの違和感はありません。
意外な用法
一方、日本語での使い方の「チャンピオン」にしっくりこないのが「champion of democracy」「champion of peace」などの表現です。それぞれ「民主主義の擁護者」「平和の擁護者」という意味であり、アメリカの政治家などがよく口にします。
もっとも、「戦う人」にさかのぼれば難しくなく、何かを求めて「戦う人」、主義などを「擁護・代弁する人」を意味することも納得がいくでしょう。
この意味では動詞の用法「擁護する」「支持する」もあります。
「〈主義・主張〉のために戦う (fight for); 〈運動など〉を擁護する (defend); (強く)支持する.」(研究社ルミナス英和辞典)
他動詞なので、以下のように受動態で登場することもあります。
「The amendments had been championed by pro-democracy activists.」(Collins COBUILD)
(「その修正案は、それを求めて民主化活動家達が戦ってきていた」という感じでしょうか)
先ほど登場したイタリア語campione以外にも、フランス語「championションピオン」、スペイン語「campeónカンペオン」という具合に語源を同じくする単語がありますが、それらの言語では動詞としては用いられないようで、英語のdefendに当たる動詞がそれぞれCollinsの「英⇒伊」「英⇒仏」「英⇒西」辞典には掲載されています。
お読みいただき、ありがとうございました。ではまた。