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あの有名な曲についてじっくりTHINKしてみる
Galileo Galileiガリレーオ・ガリレーイという名前を初めて知った時、変わった名前だと思いませんでしたか。
「トスカーナ地方では、長男の名前には「姓」を単数形にしてその名前とすることがある。ヴィンチェンツォ・ガリレイの第一子が「ガリレオ・ガリレイ」と名付けられたのも長男ゆえと考えられる。』
(ウィキペディア)
イタリア語では、oで終わる単語を複数形にするときはそのoをiに取り替えるという方式が多く、例えばspaghetto(元々は「細いヒモ」という成り立ちの言葉)の複数形はspaghettiスパゲッティとなるわけです。
ご存じのように、地動説を支持したために教会の異端審問に掛けられて難渋した彼ですが、その様子を見て、自分の意見を率直に公表するのはやめておこうと考えた学問の徒がいます。
フランスの数学者・哲学者René Descartesルネ・デキャルトです。
(我が国の時間軸で言えば、天下人が豊臣秀吉の頃に生まれ、徳川3代将軍家光の頃に死んだ人です)
「1633年にガリレイが地動説を唱えたのに対して、ローマの異端審問所が審問、そして地動説の破棄を求めた事件が起こる。これを知ったデカルトは、『世界論』の公刊を断念した。」
(ウィキペディア)
その後『Discours de la méthode方法序説』という書物を刊行しますが、やはりそれへの恐れから偽名を使っての出版としました。
この著作は有名な「我思う、故(ゆえ)に我あり」の出典とされるものです。
フランス語で「Je pense, donc je suis」、ラテン語訳では「Cogito, ergo sum」、『吾輩は猫である』の中では「余(よ)は思考す、故に余は存在す」となります。
英語では「I think, therefore I am.」とするのが一般的であるようです。
さて、今回の投稿はthinkを出発点とします。
think
「だろう」
thinkには、「▲▲だろう」という、確信を弱める働きを持つ用法もあります。
「It will rain tonight.」よりも「I think it will rain tonight.」の方が信じる度合いは下がり、後付けにして「It will rain tonight, I think.」とすれば一層下がります。
否定するとき、「I think it will not rain tonight.」とするよりも、thinkを否定する「I don't think it will rain tonight.」の方が、更に直接的な感じが弱まるので控えめな言い回しになり、一般的にはこちらが使われます。
SVOCでも使われる
thinkと言えば直接目的語となるthat節を従えるSVO構造がお馴染みですが、SVOCにもなります。
「They think themselves great heroes.
彼らは自分たちを偉大な英雄だと思っている」
(研究社新英和中辞典)
この例文ではthemselvesがO、great heroesがCであるわけです。
「I think it better not to try.
やってみないほうがよいと思う」(同)
こちらの例文では、Oの位置を一旦itで埋めておいてCのbetterを述べ、その後に本当のOであるnot to tryを配置することで、据(す)わりの良い文が出来ています。
be thought + α
主語になる人/もの/ことがどんなふうに他人から「考えられている」のかを述べることができ、あまり習わない割に実際の英文では目にする気が個人的にはします。
「The snake is thought to belong to a new species.
そのヘビは新種に属すると考えられている.
They were thought to have died.
彼らは死んだものと思われていた」(同)
「属する」と断言するのではなく、「属すると考えられている」と、一歩退く言い方を作ることができます。
ちなみに、believeでも同様のやり方が可能です。
「She is believed to be dying [to have died] of cancer.
彼女はがんで死にそうだ[死んだ]と思われている」(同)
さて、プラス・アルファになるものはto不定詞だけではありません。
次の例文は「think of ▲▲ as ◆◆ = ▲▲について◆◆だと思う」を受動態にしたタイプです。
「Socrates is thought of as one of the greatest philosophers.
ソクラテスは最も偉大な哲学者の一人だと見なされている」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)
(▲▲が主語として前に移動し、ofが取り残されています)
批判の文脈でよく聞く言い回し
①「世の中が自分を中心に回っていると思っているのか」という批判
その日本語のまんまの言い方が英語にありますが、元々英語の表現を日本語が取り入れたのか、それとも日本語と英語で偶然同じ発想をしているのか、その辺りの経緯は不明です。
「She seems to think that the world revolves around her.
(彼女は世界が自分の周りを回っていると思っているようだ)」
(ロングマン現代英英辞典)
②「何様のつもりだ」という批判
「Who do you think you are?
あなたは自分を誰だとお考えですか」
語順にご注意を。
この記事は令和6年5月4日に投稿していますが、つい先日、5月1日はAyrton Senna da Silvaアイルトン・セナ・ダ・シウヴァがこの世を去って30年の節目の日(the 30th anniversary)でした。
生前、彼がイギリスでスピード違反をして取り締まりを受けた時に、警官から「Nigel Mansellナイジュル・マンスルのつもりか」と言われたそうです。
「スピードを出して運転してもOKな人」としてイギリス人警官の頭の中に思い浮かぶのは自国のスターだったということだと思いますが、スピードを出して運転することにかけては人後に落ちないブラジルのスターが、強烈なライバル関係にあった選手の名前を引き合いに出されて「運転気をつけろよ」と説教された…というのがこの話のおもしろポイントです。
話を元に戻しますが、Nigel Mansellの名前を拝借して、語順について解説します。
一旦、平叙文を作ってみます。
「You think you are Nigel Mansell.」
これを疑問文に変形させると…
「Do you think you are Nigel Mansell?」
「Nigel Mansell」なんだか、誰なんだか、分からないのだとすると、図式的には以下のようになります。
「Do you think you are ❔誰❔?」
「あなたは自分を誰だとお考えですか」という質問は、Yes/Noで答えるものではなく、具体的に誰なのかで返さなければならないタイプの疑問文、すなわち疑問詞疑問文ですから、その疑問詞は文頭に出します。
「❔誰❔ do you think you are?」
これでめでたく「何様の~~」の文が出来上がります。
「Who do you think you are?」
③「そんな風に思っているなら大間違いだ」という批判
「If you think I'm going to help you again, you've got another think coming.
また助けてもらえるものと思ったらそれこそ考え違いというものだ」
(研究社新英和中辞典)
2つ目のthinkは動詞ではなく、「考えること、考え」という名詞です。
「have got(あるいはhaveのみ)+ another think + coming」は「それとは別の考えが(その人物に)到来しつつある状況になっている」⇒「やがて別の考えを採用することになる」ということですから、結局「今の考えは間違っている」と指摘していることになります。
another(⇐an other)なthinkだと言うからには、まず1つ目のthinkがあってそれと対比するという話の流れなので、「if you think ~~」など、お膳立てとなるものが先に来ます。
このthinkの名詞用法はイギリス的であり、アメリカではこの言葉を名詞として使うのはめったにないので、「have got/have+ another thing + coming」という、勘違いによって生まれた変種が存在します。
このthinGの方は有名な歌に使われています。
Judas Priestジューダス・プリーストというバンドの『You've Got Another Thing Comin'』(西暦1982年/昭和57年発表)です。
「If you think I'll let it go, you're mad.
You've got another thing comin'.」
thinKではなくthinGにしてしまうと、「それとは別のモノ/コトが到来しつつある状況になっている」になってしまい、意味することの幅が「考え」より広すぎて、「考え直せ=あなたは間違っている」とは理屈の上ではなりません。
しかしそれでもthinKの時のまま固定された意味合いで使われています。
「オレがそれを諦めると思っているなら、オマエはどうかしている。
やがて考えを改めることになる」
ところでジューダス・プリーストはイギリスのバンドです。
「イギリス人でもthinGを使うほど、変種の方が普及した」のか、「マーケティング的観点から、巨大市場であるアメリカで馴染みのある方を使った」のか、そのあたりの理由は不明です。
『Judas Priest - You've Got Another Thing Comin' (Live from the 'Fuel for Life' Tour)』
https://www.youtube.com/watch?v=JISQMhtXiSM
thank
thinkとつづりの似た単語thank。
ただ単に似ているだけではなく、語源的なつながりがあり、英和辞典にもそれを示唆する記述があります。
「古期英語「考え」→「思いやり」の意」
(研究社新英和中辞典)
「原義は「思慮深い」」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)
本心と皮肉
thankを動詞として使う場合、直接目的語になるのは感謝を受ける人であり、何のことで感謝するのかは前置詞forの句で表すというのはよくご存じのことだと思います。
「I thanked him for his help.
彼に助けてもらったお礼を言った」
(研究社新英和中辞典)
但し、額面通り受け取れない場合もあります。「まったく、有り難いこった!」的な気持ちです。
「You can thank Tom for this trouble.
こんなめんどうなことになったのはトムのおかげだ」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)
「I'll thank you for the return of my money.
そろそろ私のお金を返してもらうかね」
(研究社新英和中辞典)
2例目のようにwillを伴ってthank youと言われたらと、強く要求されているのだと思う必要があり、「感謝された」と喜んでいる場合ではありません。
forの句の他、to不定詞が続くパターンもあります。
「I’ll thank you to mind your own business.
自分のやるべき事だけを気にしてくれ(て、私の事に関わらないでくれ)ると有難いんだが」
thankの直接目的語が再帰代名詞だと、「自分に感謝するんだな!」、つまり「自分の責任だ!」ということになります。
「You may thank yourself for that.
そいつは君の自業自得さ」(同)
形容詞thankful
形容詞thankfulでは、感謝する相手は前置詞toの、何のことで感謝するのかは動詞用法と同じく前置詞forの句で記述します。
「I am extremely thankful to him for his help.
彼の援助に深く感謝している」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)
「何のことで…」をto不定詞やthat節が言うこともあります。
「I'm thankful to have missed the party.
あのパーティーに出席しなくてよかった
I'm thankful that I didn't miss the train.
列車に乗り遅れなくてよかった」
(研究社新英和中辞典)
thankfulはthe Beatlesの『Taxman』(西暦1960年/昭和41年)にも登場します。
まず前提となる歌詞をご覧ください。
「There's one for you, nineteen for me.
(君には1、私が税金として取っていくのは19)」
ということで納税者に残るのは(1+19=20)分の1、つまり5%という計算です。
そしてこの歌詞。
「Should five percent appear too small, be thankful, I don't take it all.
(もしも5%というのが少なすぎると思えても、感謝しな、全部は取っていかないよ)」
「労働党のウィルソン政権が、充実した社会保障の維持を目的に税率95パーセントという高い税金を富裕層に課していたことに対する抗議として書かれた楽曲で、本作はビートルズ初の政治的声明となった楽曲である。」
(ウィキペディア)
『Taxman - The Beatles (LYRICS/LETRA) [Original]』
https://www.youtube.com/watch?v=oO79rkfV0PI
think再び。しかし何かが違う
あるイギリスの雑誌の「読者のお便りコーナー」で初めて目にした単語でした。
投書の文章の中に「Methinks that ~~.」という文があったのでした。
meを主格で使う非標準とされる用法があるので、methinksのmeはそういうことかな、と最初は思いました。
「Me and my friends are an easygoing lot.
私と私の仲間はのんきな連中だ」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)
しかしそう考えてしまうと、thinkにsが付いている、いわゆる「3単現」になっていることの説明が付きません。
辞書にはこう載っています。
「《古語》〈…と〉(私には)思われる 〈that〉.
[me thinks (=it seems to me) から]」
(研究社新英和中辞典)
これで謎が解けた。「me thinks」のmeは目的語(与格)であり、現代の英語でitを立てることが必要な非人称動詞でも、昔の英語では不要なのでthinksに主語は付いていない。解決、解決。
解決していませんね。
「私には考える」だとすると、それがどうして「私には思われる」というseemの意味になるのか。そもそも「考える」の主体は誰なのか、一向に解決していません。
実はmethinksのthinkは「考える」でお馴染みのthinkとは別語なのでした。
古い時代の英語において、「考える」のthinkはþencan、methinksの方のthinkはþyncanという形でした。
(þはthornソーンという名称を持つ文字であり、馴染み深いpピーとは関係ありません。今の英語でthのつづりが用いられている音、すなわち「θ」あるいは「ð」で発します)
この2つの動詞は昔から繰り返し混同され、やがて時の流れの中でthinkというつづりに合流してしまったのでした。
「Methinks he is not mistaken.
(彼は間違っていないと私には思える)」
(ロングマン現代英英辞典)
元々me thinksというフレーズだったのが癒着して1つの単語になるという、普通の成り立ちの動詞ではないため、直説法現在3人称単数methinksと直説法過去3人称単数methoughtしかありません。
他の人称・数の形はないし、不定詞、分詞、命令法などの形も欠如しています。
古語とか、詩的な表現で使われるとか言われる言葉なのでご自身で使う機会はないと思いますが、遭遇した時にギョッとしないように憶えておかれると良いのではないかと思います。
(尚、同じ意味のmeseemsという動詞も辞書に載っていますが、私は実際の文章で遭遇したことはありません)
(ちょっと長めの)オマケ
think(こちらは「考える」の方)twiceという熟語があります。
「2回考える」とは「よくよく考える」「考え直す」ということです。
「I would think twice before accepting his offer.
私なら彼の申し出を受け入れる前によく考えてみるだろう
He thought twice about changing his job.
彼は転職について考え直した」
(研究社新英和中辞典)
Michael Jacksonマイクル・ジャクスンの『Billie Jean』(西暦1983年/昭和58年発表)の歌詞に出てきます。
「So take my strong advice.
Just remember to always think twice.
(そういうわけで、私の確固たる忠告を受け入れなさい。
常によくよく考えることを肝に命じなさい)」
この曲については色々と話題がありますが、その1つとして、「低音部で演奏されているリフのアイディアの源はどこだったか」というのがあります。
ジャクスンと共同でプロデュースを行ったQuincy Jonesクインシー・ジョウンズによると『State of Independence』という曲で使われているリフを変形させたものだそうです。
映画『Chariots of Fire(邦題:炎のランナー)』の主題曲『Chariots of Fire』で広く知られるギリシャの作曲家Vangelisヴァンゲリスと、イギリスのバンドYesイェスの歌手Jon Andersonジョン・アンダスンが共作した『State of Independence』。
これを、ジョウンズのプロデュースでアメリカの歌手Donna Summerドナ・サマーが録音したのですが、この時ジャクスンも参加して彼女の後ろで歌っていました。
原曲がこちら。
『Jon & Vangelis - State of Independence』
https://www.youtube.com/watch?v=NwGztZOBtVk
サマー版がこちら。
『State of Independence (2014 Remaster)』
https://www.youtube.com/watch?v=ccJebYTndRk
曲全体としては「Billie Jean」味は全くしないですね。
更なる証言が。
アメリカの2人組歌手Daryl Hall & John Oatesダラル・ホール&ジョン・オウツによると、彼らの曲『I Can't Go for That (No Can Do)』(西暦1981年/昭和56年)の持つウネリの感じ、いわゆる「グルーヴ」をジャクスンが参考にしたと、『We Are the World』の録音で会った時にジャクスン自身から言われたとのことです。
その件についてホールが語っている動画。
『The Song Michael Jackson 'Stole' From Hall & Oates』
https://www.youtube.com/watch?v=1EXjfSzkg4I
ではその2曲を並べてみましょう。
『Daryl Hall & John Oates - I Can't Go For That (No Can Do) (Official Video)』
https://www.youtube.com/watch?v=ccenFp_3kq8
『Michael Jackson - Billie Jean (Official Video)』
https://www.youtube.com/watch?v=Zi_XLOBDo_Y
前者に比べて後者は8分音符で均等に割り付けている感じですね。
この件は割と有名なので、2曲を合体させたものを聞かせる動画が投稿されています。
『Michael Jackson x Hall & Oates - Billie Jean (I Can't Go For That '81 Remix/Mashup)』
https://www.youtube.com/watch?v=r_mj4WpdH2Y
『Hall & Oates x Michael Jackson - I Can't Go For That (No Can Do) - Billie Jean Remix/Mashup』
https://www.youtube.com/watch?v=YczkQH8_fwo
1本目は『I Can't Go for That』を基盤にしてその上に『Billie Jean』の歌を乗っけており、2本目はその逆パターンです。
尚、関係があるかどうか分かりませんが、『I Can't Go for That』の2年前にイギリスのバンドElectric Light Orchestraイレクトリック・ライト・オーケストラが出した『Last Train to London』という曲のリフにもグルーヴは似ていると思います。
『Electric Light Orchestra - Last Train to London (Official Video)』
https://www.youtube.com/watch?v=Up4WjdabA2c
さて、リフ以上に語られるのが、歌詞に出てくる「言いがかり被害」です。
「彼女はそう主張するけど、その子供は僕の息子ではない」
ジャクスンのような有名人が、そういうことを言って近づいてくる人物に悩まされるというのはしばしば耳にすることであり、そういった意味も含めて「自分の行動には慎重になれ、think twiceだ」。
ブラジルの歌手Caetano Velosoカイターヌ・ヴェローズが西暦1986年/昭和61年に『Billie Jean』をカヴァーしたのですが、その際この曲を中核として前と後ろを別の曲で挟んだ、メドレー形式で行いました。
1つ目の曲『Nega Maluca』は彼自身の言語であるポルトガル語で作られたものであり、題名を英訳すると「Crazy Woman」です。
4小節しかない短い曲ですが、歌詞の内容は「女が子供を連れてやってきて、その子は俺の息子だと言いふらした」なので、『Billie Jean』の予告篇、搔(か)い摘(つま)んだ説明という意図で作られたのかもしれません。
その後『Billie Jean』が始まり(元々の英語歌詞のまま)、連続して3つ目の曲、the Beatlesザ・ビートルズの『Eleanor Rigby』が締め括(くく)りを担当します。
しかしこちらは全曲通して歌うのではなく、有名な「Ah, look at all the lonely people!」という歌詞だけであり、それで何かを示唆するようです。
『Nega Maluca / Billie Jean / Eleanor Rigby』
https://www.youtube.com/watch?v=zqvE5NnstFE
お読みいただき、ありがとうございました。ではまた。